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世界の面積のうち都市部が占めているのはたった2%であるにも関わらず、世界の資源の約80%をも消費しているという。なんと恐ろしい話だろうか。

スマートシティは、長期的な経済発展および人々の暮らしや気候の維持のために必要不可欠なツールである。都市がスマート化することで得られる便益と機会は数多く、サンフランシスコやポートランド、アムステルダム、ロンドンといった都市では、すでにスマート化に向けた本格的な取り組みが始まっている。

これはもはや、国や企業の各プロジェクトごとによる単独的な取り組みで終わっていいものではない。世界中の政府をも巻き込んで、世界の人口に変化をもたらす必要のあるものだ。アルメン・オルジアンは次のように言っている。「スマートシティやスマートソサエティが氷山のようなものだとしたら、我々が目にしているのはその一角に過ぎない。」

さて、これを念頭に置いたうえでIoTが企業や政府と共になし得る未踏のテリトリーを覗いてみよう。

 

アメリカは最大のIoTプレイヤーだ

米国はAppleやIntel、FordやCisco、IBM、GEの他にさまざまなスタートアップ企業も抱えており、IoT革命の最前線をいっていることは疑いようのないことだ。Business Insiderによると、米連邦政府は2011-2015年の間、IoTソリューションのために350億ドル近い投資をおこなっている。このゲームの唯一にして最大のプレイヤーだ。

7/9にGartnerが発表した報告では、米国中央/連邦政府および自治体がテクノロジー製品およびサービスに投じる費用は、2016年の4300億ドルから2020年には4760億ドルに達すると見られている。これだけ多額の資金が動くなか、「これで誰が利益を得るのか?」と疑問に思うのは自然なことだ。軍隊? 一般人? 発展途上国? それともウォール街の連中だろうか?

その答えは思っているほど簡単なものではない。

IoTは、我々に低コストかつこれまでに類を見ないレベルの効率性をもたらすものだ。そして、その便益をもっとも手に入れるのは企業である。新しい製品やサービスの開発もIoTのもたらすものによって手軽になり、新しい市場への参入コストも低減する。彼らはIoTによる新たな革命をもっとも速く、そして間近に見ることになるだろう。

政府に目を向けてみると、交通監視システムや最先端アルゴリズムによるID管理・照合のためのシステムによって、セキュリティ上のリスク予想や軍事バイオテクノロジーにIoTが活用できるという意味で利点はある。

一般消費者の場合、一般的に思われているのとは逆に彼らはIoTの影響をもっとも受けないグループになるだろう。先述の例とは背景が異なるのだ。やがて来る年が、私やあなたたちにとって大きな変革の年にならないということを言いたいのではない。実際、バイオメディカル分野などでは、すでに行われている研究開発により、医者に消化器官の状況をレポートする(もちろんセキュアな環境だ)飲み薬のようなものが登場するのもそう遠くない。

 

不確定要素の多いプレイヤー : 韓国とオランダ

韓国とオランダは今年の7月に独自のIoTネットワークを展開し、スマートシティが本当に世界的な潮流であることを証明した。韓国では同国最大手キャリアのSK Telecomがこの構想をリードし、人口の99%に提供されるとされるテクノロジーを導入した。

今回、韓国とオランダはIoTの軍事競争のような状況にあった。どちらも一番に発表することを目標にしており、プロジェクトの進捗を競い合っていた。結局のところ、どちらも同じような時期に発表したためよくわからないのだが、どうも数日の差でオランダの勝ちのようだ。オランダの通信企業 KPNは、世界初のIoTネットワーク、全国規模の長距離通信網『LoRa』を6/30にEU中で利用できるようにした。

老人だらけの国? : シンガポール

人口統計学者によると、国が成り立っていくためには母親1人あたり2.2人の子供が産まれる必要があるという。シンガポールはこの比率が0.81%と、世界最低である。

そこで、シンガポールはこの流れをどうにか打ち切るために大胆な統制を行っている。2012年のナショナルナイトもその1つだ。これは若いカップルが愛国心を養うよう呼びかけられるものだが、老人の面倒をみる若い労力の代わりとして政府はIoTに目を向けた。

WSJによると、政府に選ばれた民間企業が家電やトイレなど、人々の生活空間の中にあるモノにセンサーを導入するという。あらゆるところに備えられたセンサーは、活動パターンやトイレのフラッシュの回数などのリアルタイムデータを収集し、その人の家族に逐一メッセージで送られるようになる。

他、シンガポールは無数のセンサーやカメラを島中に張り巡らし、公共の場の清潔さから人口密度、登録車両の動きまでを政府が把握できるようにしているところだ。

 

ドイツのこれまでの実績

ドイツのIoTに関する取り組みは、メルセデスやBMWの自動運転車などの取り組みよりさらに先を行くものだ。

ドイツのConductix-Wampfler社は、英国やイタリアといった国々にバスをワイヤレス充電する技術を提供している。どういう仕組みかというと、路上とバスに電磁誘導充電機を設置することでワイヤレス充電を可能にする。大規模に取り組むことにより、渋滞がひどいところでの空気の質を大きく改善することができる。

メトログループの食品売場には、2008年からスマート冷蔵庫が登場している。スチロールの食品トレイに取り付けられたRFIDタグには、賞味期限などの商品についての情報にひもづくユニークに番号がふられている。たとえば、あなたが商品を棚から取り出すと、組み込まれたRFIDリーダーがそのタグを自動的に読み込み、オーナーにとっては完璧な仕入れ計画が可能になる他、あなたにとっても質のいい商品が手に入ることになる。互いに小気味のいい話ではないか。

そして、ドイツ最大のファッションリテイルの1つである Adler Modemärkte AGもRFIDタグを170ある同社のアウトレット店舗に導入している。RFIDリーダーがレジや入り口、倉庫への通路などに設置されており、常に倉庫および売り場の在庫をモニターしている。これにより商品の紛失が減り、カスタマーエクスペリエンスの向上と品切れ状態を回避することができている。

この技術は食品展やファッションリテイルだけにとって役立つものというわけではないが、これらの例はRFID技術をわかりやすい形で紹介できるものである。

スマートシティがその大小を問わず我々の生活を変えているのは、これまで見てきたとおりだ。先にある限りない可能性により、我々の未来はより良くなるに違いない。あなたが気に入るかいらないかはともかくとして、IoTは最重要トピックスだ。

 

著者は技術に熱狂的なスタートアップ企業中毒で、情熱的な楽天家でもある。EverOpen.coのCEOであり、かつてはUnbitsのCOOでもあった。

ReadWrite[日本版] 編集部
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