内田篤人の復帰はいつか。SBにコケ獲得でシャルケの変革進む
シャルケが変革の時期を迎えている。2010〜11シーズンにクラブに入り、その後スポーツディレクター(SD)を務めていたホルスト・ヘルトが退団。代わりにマインツでSDを務めていたクリスティアン・ハイデルがクラブに加わった。
ここ5年ほど、成績が落ちるばかりのシャルケでは、ヘルトへの不満が聞こえてくることがたびたびあった。たとえば2014年のチャンピオンズリーグ(CL)でチェルシーに敗れた時のことだ。すでに退団してアメリカのニューイングランド・レボリューションでプレーしていたジャーメイン・ジョーンズはヘルトに対し「次は誰に責任を押し付ける?」と非難するツイートをして話題になった。ツイート自体は早々に消去されたが、難しいチームの内部事情がうかがえた。
SDの交代は昨シーズン中に発表されたが、ハイデルが抱負を語ると、ヘルトが「まだ来てもいないのに、シャルケについて語るな」と噛み付くなど、大人げない舌戦も繰り広げられた。
SDが代わると同時に、監督も交代した。パーダーボルンを2部2位に押し上げた手腕を買われシャルケに引き抜かれたアンドレ・ブライテンライターは、1年限りでの退団となった。今年から指揮をとるのは、昨季までアウクスブルクの監督だったマルクス・ヴァインツィールだ。
2010〜11シーズンにクラブ史上初めて1部昇格を果たしたアウクスブルク。12〜13シーズンに監督の座をヨス・ルフカイから引き継いだヴァインツィールは4シーズンにわたって指揮。クラブを1部に定着させ、ヨーロッパリーグ出場を成し遂げるなどの実績はもちろん、低予算チームを残留争いレベルから中堅レベルまで押し上げた手腕が買われた。
またヴァインツィールは、ジョゼップ・グアルディオラがバイエルンを率いたこの3シーズン、ほとんどのチームが成すすべもなく粉砕された中で、唯一2勝を挙げている監督でもある。一時はグアルディオラの後釜としてバイエルンの監督に就任するのではないかという噂が流れたほど、ドイツ国内では注目されている。
ハイデルSDも「新たな戦術をもたらしてくれる監督」と期待を寄せる。最近はコロコロと監督の代わるシャルケだが、安定した体制のもと、新指揮官とじっくり腰をすえて戦うことが求められる。今季の目標は、最低限、昨季から順位を一つ上げてCL出場権を獲得することだ。
一方、これまでのところ選手の出入りは他のクラブに比べてそう激しいものではない。主力CBのジョエル・マティプがよりによってユルゲン・クロップの率いるリバプールに引き抜かれ、守備的MFロマン・ノイシュテッターはトルコの強豪フェネルバフチェへ。同じくマルコ・ヘーガーはケルンへと移ることになった。
マティプの穴を埋めるのはヴォルフスブルクから加入したナウド。大きな話題になったのはバーゼルから獲得したカメルーン生まれのスイス代表、ブレール・エンボロだ。FWか2列目でプレーするこの19歳に、シャルケはクラブ史上最高額となる2000万ユーロ(約23億円)をつぎ込んだとドイツメディアは報じている。フンテラールの移籍金を上回るこの金額に見合う活躍を見せることができるかが注目される。
そして右サイドには、セビージャで5シーズンにわたり活躍し、主将も務めたコケが加入した。SBあるいは1列前のMFでもプレーするビッグネーム。内田篤人のライバルとなりうる選手が、内田が入団して以来、実質的には初めて獲得されたことになる。
気になるのはその内田の復帰時期だ。2015年3月にケガのため戦線を離脱してからすでに1年あまり。今季も開幕先発というわけにはいかないようで、まずはゆるやかに全体練習に合流してから、ということになりそうだ。
この2年間、シャルケの右SBはメンバーも定まらず常に不安定だった。それだけに内田の必要性が強く感じられたものだが、今季はコケの加入で状況は変わりつつある。だが、内田には焦らずに着実に復帰を果たしてもらいたいものだ。
かつてのようにバイエルン、ドルトムントを脅かす存在に戻りたいシャルケ。変革は吉と出るだろうか。
了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko