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ビッグデータやAI、IoTが世界中で利用されるようになり、これらのスキルを備えたスタッフの雇入れに雇用者は目を光らせている。だが、Diceによる新たな雇用レポートによれば、求められているのはスペシャリストではなく、ジェネラリストであるという。

特段、”IoTに特化したエンジニアの需要がない”ということではない。VisionMobileが2年前に取り上げたことだが、将来をつくり上げるためのIoTエンジニアの需要は間違いなく無数にある。だが、実際に求人が始まった今、雇用者の66%は一般的な意味での「エンジニア」や「SE」を求めているという。この矛盾はなぜ生じているのだろうか。

参考記事:市場のすべては「エンジニア」にかかっている - 2020年までにIoTエンジニアは450万人へ

IoT専門家はIoTプロジェクトに必要か

まだ出てきて新しいものではあるが、IoTにつぎ込まれる金額は大きい。アナリスト企業のIDCは、企業が2016年にIoT技術に注ぎ込む資金は2320億ドルにのぼると予測している。また、Gartnerが企業のIoT普及率を調査したところ、50%の企業がIoTプロジェクトの本番稼働を2016年に予定しているという。トータルで64%の企業がそう遠くない将来、IoTに乗り出すことになる。

これはいい知らせだろう。

だが、同時に悪い知らせもある。その理由を理解する人は多くない。Gartnerのリサーチディレクター チェット・ゲーシックター氏によれば、実際に取り組み始めている企業ですら、IoTに関しては手詰まり状態になっているという。その主な理由は2つだ。

「1つは、ビジネス上の問題だ。多くの企業は、IoTによってどのような利益が生まれるのかについての明確なビジョンを持っていないか、それをどう活かすかの検討に十分な時間を使っていません。もう1つは、企業自身の問題です。アンケートに回答してくれた企業の多くには、IoT専門家などがおらず、推進するためのリーダーシップが欠如している。」

言い換えれば、IoTがますます大きくなることを企業は分かっているものの、それについて何をすればいいのかは分かっておらず、それを形にする才能を社内で抱えてもいないということだ。ノースイースタン大とシリコンバレーがSensor Worldイベントで200のIoTの専門家を対象に行ったアンケートでも同様のことが明らかになった。約半数は、「総合的なIoT戦略はIoTの取り組みの上で最大の課題だ」と答えている。

かつてビッグデータが取り沙汰され始めた頃も似たような状況だった、と不気味に感じる次第である。

エンジニアを連れて来い

以上のことを考えると、企業が専門家であるIoTエンジニアの雇用に積極的でないのは興味深いことだ。

Diceのレポートによると、雇用に携わるマネージャの半数以上(51%)は一般的なエンジニアの調達を最優先に考えており、15%はSEの調達を優先しているなど、エンジニアの需要は見るからに大きい。

データの専門家(アナリティクスなど)を最優先に上げる企業の割合は3%にすぎない。IoTの専門家となると、これはもう誤差みたいな数字だ。

このことは何もIoTに対する興味の少なさを表すものではない。むしろ、その興味関心の度合いは高いだろう。もしこの状況に理由があるとすれば、「出来のいいエンジニアなら複数の分野でその力を発揮できるだろう」という認識にある。特に専門性があるわけではないが、企業のためにIoTを学んでくれるエンジニアを探し出すことが鍵となっているようだ。

つまり、企業の望むエンジニアの姿は、スペシャリストほどの専門性はないが、その専門知識をあらゆるモノに適用することのできる「優秀なジェネラリスト」である。もっと言ってしまえば、両者とも手に入れられたら最高だろう。このようにエンジニアに求められるものが年々増えてきているのは紛うことなき事実だ。

スペシャリストか? ジェネラリストか?

この問いは、企業にとってもエンジニアにとっても今後の行く末に関わる大きな選択となるだろう。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文]