【プレイバックNASA 2015・後編】国際宇宙ステーションの活躍、地球環境とNASA
※ 前編はこちら
【プレイバックNASA 2015・前編】火星や冥王星がより身近に?
http://nge.jp/2016/01/07/post-128557
(c)NASA/Bill Ingalls
2015年のNASAといえば、冥王星探査や火星探査が話題になったが、継続して地道に活動を行っているのが、『ISS(国際宇宙ステーション)』だ。
また、地球環境の観測においても、NASAは重要な役割を果たしている。今回はそのあたりを中心に、2015年のNASAの活動を振り返ってみる。
「ISS」の成果
まずは、『ISS』での活動から。2015年は、『国際宇宙ステーション(ISS)』に、人が継続して滞在するようになって15年目だという。
これまで、17ヵ国から来た220人以上が『ISS』を訪れた。また、この『ISS』は火星探査においても重要な役割を果たす。
(c)NASA
3月には、宇宙飛行士スコット・ケリー氏が、1年間にわたる滞在ミッションを開始した。8月に、彼はNASAの宇宙飛行士として宇宙滞在時間の記録を更新した。
彼には双子の兄弟マーク・ケリー氏がいる。マークは地球に滞在しているが、スコットが2016年に地球に帰還し、ともに検査を受けることで、宇宙飛行士が長期間宇宙に滞在することによる貴重な医学的、心理学的、生物医学的データが得られる予定だ。
2015年には、トータル16名が『ISS』に滞在したが、そのなかには、宇宙で初めて野菜の栽培を試みた者もいる。そのほかにもさまざまな地球外における地球のための科学的調査を行った。また、この年、7回の補給が行われたが、4種類の異なった宇宙船が約30トンもの物資等を『ISS』に運んだ。
NASAの商業的パートナー企業が、そのうち3つのミッションを担当した。『ドラゴン宇宙船』で2回のミッションを成功させた『スペースX』と、12月に『シグナス宇宙船』で補給を行った『オービタルATK』は、失敗を乗り越えてアメリカの宇宙船による補給ミッションを再開させた。
スペースシャトルの退役後、人を『ISS』に運ぶのは他国の宇宙船に任せているが、アメリカは2017年からふたたび、宇宙飛行士を『ISS』に運べるようにするためのシステムを開発中だ。
5月には『スペースX』が、発射台あるいは上昇中のロケットから、いかに乗組員を素早く安全に脱出させるかを実演することに成功した。
また、2016年に打ち上げ予定の『Bigelow Expandable Activity Module(BEAM)』がケネティ宇宙センターに到着した。
これは、膨張式の寝台モジュールで、長期間の宇宙旅行を可能にする技術のテストに役立つ予定だ。
より詳しく地球環境を知る
次は、地球環境の観測だ。NASAは地球環境がどのように変化しているのかを知るために、2015年に、世界中の研究機関と情報や知識を共有することで、地球の自然環境の観察、研究を行う新しい方法を開発した。
NASAは10月に、日が当たっている側の、地球の画像を毎日更新して見せるサイトをオープンした。
これは、高度100万マイルに浮かぶNASAの『Deep Space Climate Observatory』のカメラで撮影したものだ。
(c)NASA/Goddard
海洋と気候の関係は、2015年に非常に詳細に研究され、NASAは夏に、海洋の温度測定のデータを発表した。それによれば、近年、温室効果ガスによる熱が、太平洋とインド洋に特に蓄えられていることがわかった。
また、NASAとその協力機関によって、1992年以来、海面は平均で約3インチ上昇したことがわかった。場所によっては9インチ以上も上昇している。
研究によれば、将来的には数フィートの上昇も避けられないと指摘された。NASAは11月に、地球全体の気候に大きな影響を持つ、海洋プランクトンの5年にわたる詳細な研究をスタートさせた。
2015年には、翌年に打ち上げ予定の、『Stratospheric Aerosol and Gas Experiment III(SAGE III)』がケネディ宇宙センターに運ばれた。
これは、オゾン層の観察を行い、その回復を調査するものだ。
先進技術の開発
NASAは、さまざまな技術開発も行っている。1月には、宇宙機のために軽量で強い構造体や材料を開発するためのロボットアームをラングレー研究センターで発表。
6月には、火星着陸に使う予定の技術、『Low Density Supersonic Decelerator(低密度超音速減速機)』の、2回目の実物大モデルのテストに成功した。
(c)NASA/Bill Ingalls
『キューブ型衛星打ち上げ新政策』も実施中。これは、ロケットの荷物室の空いているスペースに載せることができる小型の衛星を募集し、宇宙に運んで上げるというものだ。
安全で低コストな宇宙飛行を可能にする、ふたつの技術も開発中だ。ひとつはイオンエンジン。もうひとつは携帯型の生命維持装置だ。
また、将来的に山火事などにおいて消防士を守ることができる、パーソナル火災用シェルターの開発に役立てられるような、新素材の開発も行っている。
航空技術の進歩
NASAといえば、宇宙部門の話題が多いが、航空部門の研究も行っている。
2015年は、NASAの前身であるNACA(アメリカ航空諮問委員会)の誕生から100周年となる。
NASAは、そこから航空ジャンルにおける研究をずっと引き継いできて、2015年も、特に環境への影響や安全性の面を改善する、いくつもの技術開発を行った。
(c)Boeing/John D. Parker
航空機の空気抵抗の低減、新素材による重量の低減、燃料消費、排出ガス、騒音を減らすことができる先進的なエンジンや、機体の開発を実現する8つの技術開発を発表するなど、NASAは航空業界の技術革新にも貢献しつづけている。
活発な広報活動
そして、広報活動もNASAの重要なアクティビティだ。
NASAは積極的に一般のひととの交流を行い、さまざまなイベントにスタッフを派遣したほか、4億人ものひとがSNSを通じて接触をしたという。
NASAのウェブサイトは、4月に大幅なデザイン変更を受けた。ミッションの新情報や画像、動画に重きを置き、ユーザーが新しいコンテンツを容易に見つけることができるようにしたものだ。
もちろんNASAは、TwitterやFacebook、Google+、Instagramなどを通じて、さまざまな告知、発表をおこなっている。
インターネット、SNSが普及した現在、こういった最新の科学技術、学術研究に容易に触れられるのは非常に興味深い。
今後も宇宙好き、航空好きのファンに夢を与えてほしい。
【参考・画像】
※ NASA
【動画】
※ NASA Reaches New Heights in 2015 - YouTube
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