【プレイバックNASA 2015・前編】火星や冥王星がより身近に?

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(c)NASA/JHUAPL/SWRI

2015年は“宇宙”の図鑑が大きく変わるきっかけの年になったはずだ。それまで、たいして情報も画像もなかった冥王星に関して、さまざまな撮影や調査が行われたからだ。

昨年は、NASA(アメリカ航空宇宙局)にとっても、大きな成果のある1年だったようだ。

NASAのウェブサイトで、2015年の成果がまとめられている。この記事ではその前半を紹介したい。

ハッブル宇宙望遠鏡も25周年

2015年のNASAのプロジェクトといえば、各種の太陽系内外での探査の成功、そして2030年代に計画している有人火星探査の準備が注目された。

まず、太陽系内外での探査についてだが、なんといっても大きなニュースとなったのは、冒頭でもふれた、7月の探査機『ニューホライズンズ』の冥王星への歴史的接近だろう。いままで見たこともなかったような冥王星の鮮明な画像、そして各種の貴重なデータをわれわれにもたらした。

また、それに先だって3月には探査機『ドーン』が、準惑星ケレスの軌道上から画期的な探査を行った。8月には探査機『カッシーニ』が土星の衛星エンケラドスに接近し、さまざまなデータを取得している。『ケプラー宇宙望遠鏡』は、1,400光年離れた太陽系に似た星系に地球サイズの惑星を発見した。

4月には、我々に見たこともなかったような、宇宙の画像を届けてくれたハッブル宇宙望遠鏡が運用25年を迎え、『Solar & Heliospheric Observatory(太陽・太陽圏観測衛星)』も運用20周年となった。これは太陽観測機としては最長記録で、これまでに3,000もの彗星も発見しているという。

(c)NASA/ESA

また、3月には、太陽と地球の磁場の相互作用を調査する『Magnetospheric Multiscale spacecraft』が打ち上げられたほか、2018年に打ち上げ予定の『ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』に最初のミラーがとりつけられたのも昨年だ。これらは今後の活躍が期待される。

この1年で宇宙が身近に?

次は、火星探査のニュースだ。火星はすでに無人機がさまざまな発見をしているいっぽうで、NASAは2030年代には有人火星探査を目指している。

まず、当サイトでも紹介したが、マーズ・リコネッサンス・オービターが、断続的にではあるものの、現在においても火星表面には液体の水の流れがあるというかなり有力な証拠を発見した。

(c)NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona

『MAVEN(Mars Atmosphere and Volatile Evolution)ミッション』は、火星が、生命を支えることもできたと思われる、大昔の温暖で湿潤な環境から、現在の寒く乾燥した惑星にどのようにして変わっていったかのキーとなるプロセスを特定した。

探査車『オポチュニティ』と『キュリオシティ』は火星の表面探査を続けているが、ある種類の窒素化合物を発見した。これはかつての火星が、生命が存在し得る環境だったという説を強化するものだという。

そして、有人火星探査に向けての作業も着々と進んでいる。10月にはNASAは火星に宇宙飛行士を送り込む際の、最適な着陸地を検討するワークショップを開催した。

有人火星探査において重要な役割を果たすのは、現在開発中の『オリオン宇宙船』と最強のロケット『SLS(スペース・ローンチ・システム)』だ。これらの開発も進んでいる。

3月には、『オリオン宇宙船』の打ち上げ時脱出システムのテストが行われた。また、2015年には乗員用モジュールの最初の構造体の溶接作業も始まった。3月には『SLS』のロケットブースターの噴射テストが地上で行われた。2016年には2回目のテストが行われる予定だ。

(c)NASA

『SLS』と『オリオン宇宙船』をサポートするための設備もできてきている。

5月には高さ65mを越える『SLS』のテスト用スタンドの建築が始まり、8月には、スペースシャトルの部材運搬用に使われていたはしけの改修工事も終了した。ケネディ宇宙センターも、アメリカ政府の用途あるいは商業的用途に対応できる21世紀の宇宙港になるべく改修を受けている最中だ。

(c)Orbital ATK

ユニークなプロジェクトも計画されている。

『Asteroid Redirect Mission(ARM)』というものだ。これはいってみれば『小惑星方向変換作戦』といったもので、2020年代に、無人機を使って小惑星の岩石を月の軌道に投入するというものだ。

そうしておけば、あとから宇宙飛行士が行って調査をしたり、地球にサンプルを持ち帰ることも容易になる。そして、この技術が後の有人火星探査のためにも欠かせない実験になるという。

ちょっと身近なとことろでは、10月には、ハリウッドとNASAがコラボした映画『オデッセイ(原題:The Martian)』が公開された(日本では2016年2月公開)。

有人火星探査を題材にした映画で、プロダクションデザインや技術コンサルタントとしてNASAが協力したという。

火星に想いを馳せる

人類は月に行ったことがある。現在でも国際宇宙ステーション(ISS)には、何人もがつねに滞在しているが、月の距離は国際宇宙ステーションの比ではない。

それを1960年代に実行したのは、大変なプロジェクトだったのだ。

そして、火星までの距離もまた月への距離とは比べものにならないほど遠い。もちろんプロジェクトには予算がかかる。でも、こういった計画に情熱を傾けるのは、夢があっていいではないか。

『プレイバックNASA 2015・後編』は、また近日中にアップしたい。

【参考・画像】

※ NASA

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