アメリカvs日本
勝俣 翔貴（東海大菅生）
1次ラウンド、スーパーラウンドと優勝決定戦では、雰囲気が全く異なる。こうした雰囲気の中で今までとは違う力を発揮するのが、アメリカである。
試合開始前、激しい雨が降り、30分以上遅れてプレーボール。日本の先発は1次ラウンドでアメリカを完封した佐藤 世那。アメリカの先発は、内野手登録の左腕・プラットである。日本打線は、プラットのチェンジアップ気味のフォークという独特の変化球に苦しみ、3回まで1人の走者も出せない。
先制したのはアメリカ。3回表この回先頭のラサーフォードが中前安打で出塁すると、1番マッカローが送る。続く2番モニアクは投ゴロ。しかしこれを佐藤は三塁に送球するもワンバウンドの悪送球。ラサーフォードが生還しアメリカが先制した。
さらに4番アムダイティスがライトへの低い打球。右翼手・勝俣 翔貴は届かず、二塁打となり、アメリカはもう1点を追加した。
日本の初安打を打ったのはこの大会首位打者の勝俣。引っ張った打球が一塁ベースに当たり、二塁打となったが、得点には結びつかなかった。
5回裏は一死後、オコエ 瑠偉が中前安打で出塁したが、牽制に刺された。「盗塁しようという気持ちはありませんでした。日本だと完璧にボークだと思います。でも国際試合ですからね」とオコエは語る。
日本にとっての最大のヤマは6回裏の攻撃。この回先頭の9番篠原 涼が四球で出塁。1番杉崎 成輝がライト線近くに落ちる二塁打を打ち、一死二、三塁。しかし続く津田 翔希への2球目が暴投になり、三塁走者篠原は本塁を突くも間一髪アウト。「いけると思いましたが、（暴投が）思ったより転がりませんでした」という篠原だが、「攻めの野球ができたので、焦りはありませんでした」と語るように、反撃は続く。
組み合わせと応援メッセージは下記リンクから！
・2015年 第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
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上野 翔太郎（中京大中京）
津田 翔希はしぶとく右前安打を放ち、杉崎 成輝が生還し1点差に迫る。さらに勝俣 翔貴の中前安打、清宮 幸太郎の内野安打で二死満塁のチャンス。けれども続く平沢 大河の一ゴロは微妙な判定になったがアウト。絶好のチャンスを生かすことができなかった。
日本は5回から先発の佐藤 世那に代わり、今大会好調の上野 翔太郎が登板。上野は緩急をつけた投球に、抜群の制球力でアメリカ打線を封じる。「これ以上、点を取られたらいけないという気持ちで投げました」という上野は、「少しでも甘いといい当たりをされます。際どいところに投げることができました」と語る。
上野が5回を無失点に抑える好投をする中、攻撃面でも反撃を目指す。しかしアメリカは、7回途中から左腕のギャレット、8回途中からは150キロ台の速球を投げるジェファーソンローソンをマウンドに送り、日本に付け入るスキを与えない。結局2対1でアメリカが勝ち、3連覇を果たし、日本は前回に続き準優勝に終わった。
日本代表の西谷 浩一監督は、「非常に短い期間でしたが、子供たちは頑張りました。勝てなかったのは何かが足りない。（それが何かは）でも今は分かりません」と語る。
日本は準優勝に終わったが、9つの個人タイトルのうち6個、オールスターチーム（ベストメンバー）11人のうち、5人を日本が占めていることからも分かるように、大会を通しての実力は日本が他を圧倒していた。それでもスーパーラウンドでアメリカが3試合とも逆転勝ちしているように、アメリカの勝負強さも際立っていた。
それに打ち勝つために何をすべきかの答えは、そう簡単には出ないだろう。それでも、日々の積み重ねの中で、自分をいかに厳しく追い込めるかが、重要になってくる。
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とはいえ、日本の国際大会への対応は、目覚ましく進化している。3年前のこの大会では、木製バットの対応に戸惑い、甲子園大会で長打を連発した打者が、国際大会ではすっかりなりを潜めるということも多かった。今大会では、序盤から違和感のないスイングをしている。さらに今までは1、2人のエースに依存する傾向が強かったが、今大会では、佐藤 世那と上野 翔太郎の好投が目立ったものの、誰がエースか分からないほど、投手陣全体が安定していた。
野手では豊田 寛の負傷欠場は大きかったが、内野手の杉崎 成輝が外野手をこなしたほか、投手登録の勝俣 翔貴が、一塁手と右翼手を兼ね、津田 翔希が内野のどのポジションもこなすなど、国際大会に合う選手を選抜にしたことが功を奏した。
今までは、国際試合の経験があまり生かされなかったが、前回に続き西谷監督が務めるなど、経験の継承が行われたことは大きい。ここ3回は甲子園大会が終わってから開催されたが、次回開催のカナダのサンダベイをはじめ、北米、中南米の開催となると、甲子園大会の期間は考慮されない可能性は大きい。それでも、できる限りの手段を使って、大会は出るべきである。日本には、勝負に勝つということと同時に、野球の普及の役割も期待されているからだ。
U-18ベースボールワールドカップにも、課題は多い。一つは審判の問題である。ストライクゾーンの問題や、牽制とボークなども、審判によって判断がバラバラだったように思う。U-18の大会は、真剣勝負の国際大会であると同時に、野球の普及、育成という面も担っているはずである。国際大会といえども、ユースレベルの大会では、ボークなどでは、その理由を投手に明示べきではないか。
他の競技でもそうだが、国際大会で採用されているルールが国際ルールであり、それは、国内の大会でも、できる限り準拠されるものである。その根本が定まらないと、野球の国際化は厳しい。
今大会は雨の日が多く、試合が夜の10時を越すこともあったが、日程的には予定通りに終了した。最終日には参加12チームが甲子園球場に集まることができた。
甲子園球場の大きさは、参加チームにとっては驚きであったようだ。日本の高校野球文化の一端に世界の若者が触れることができたことは意味のあることだ。少なくとも、基本に忠実な野球や、キビキビとした動きなどのマナーの良さは、世界でも評価されている。その良さを少しでも世界に広めることができるように、今後も若い世代が世界の舞台に出て、結果を残していくことが重要である。
（文＝大島 裕史）
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