【甲子園✕応援歌】 高校野球100年、吹奏楽の応援にもリバイバルの波が！？
2015年は高校野球100年ということで、それにちなんだ様々な企画がされたり出場校にも歴史を感じたりと、新しい歴史、新しいスターを求めながらも過去を振り返る大会となっている。吹奏楽部などの応援という視点から見ても、かなりリバイバル色が強い。原点回帰と言っても良いかもしれない。パラダイス銀河、コンバットマーチ、タイガーラグ、さくらんぼ、アフリカンシンフォニー、エルクンバンチェロ、暴れん坊将軍、ルパン三世、ドラクエ3、アッコちゃん、バンビーナ…。例を挙げればキリがないが、どれもお馴染みの曲ばかりだ。新たな流行というよりは、以前からあるものや定番曲をしっかりと丁寧にやり切る学校が多い。各校毎にコレ！という曲があるのも特徴的だ。
その定番曲の中に、いまや秋田のご当地応援歌として有名なタイガーラグがある。秋田県の高校野球応援と言えばこれ！という一曲で、各校がそれぞれ誇るバージョンを持っているが、この元祖が秋田商だ。
秋田商のタイガーラグは、他校と比べやや緩やかなテンポで綺麗に粒のそろった演奏と一体感のあるダンスで球場を盛り上げる。ジャズのスタンダードナンバーである原曲の雰囲気により近く、まるで遊園地にいるような楽しい気持ちにさせてくれる。これをチャンスでは延々と吹き鳴らすというのが伝統だが、相手のタイムでは速やかに演奏を中断させるマナーの良さは、さすが伝統校。歴史を受け継ぐ者の自覚と誇りがうかがえる。
そんなタイガーラグは勝ち進むチームと共に今大会を席巻した。仙台育英との準々決勝では最後まで相手に食らい付く秋田商ナインの姿と相まって、最終回には球場全体を巻き込んでの手拍子が沸き起こった。名勝負をさらに盛り上げたのは言うまでもない。
必聴！仙台育英の必殺仕事人！青木玲磨選手の打順では耳を澄ませてみよう！
仙台育英の青木 玲磨が打席に立つ時、球場には必殺仕事人のテーマ高らかに鳴り響く。8月9日の明豊との一戦から耳に残っている方も多いのではないだろうか。この仙台育英の必殺仕事人は今大会イチとの呼び声が高い。昔からある誰もが知っているメロディで、奏者にとってはいわゆる「おいしい」場面ではあるが、失敗した時のダメージも大きい。各校奏者がややトーンとテンポを落とし、音数も少なくしたりと安全策を取る中、仙台育英は澄み切ったハイトーンで一気に吹き切る。その勇気と、それを支える練習量はかなりのもの。まさに仕事人。吹いている奏者も、気持ち良いはずである。試合でヒットを放つのと同じくらい…いや、もしかしたらそれ以上に気持ち良いかもしれない。
しかも、特にバシッと決まった8月16日、6回表。それは、花巻東との東北の盟主を決める大事な一戦だった。二死二塁の場面、トランペットの仕事人が高らかに歌い上げた直後に青木選手は初球を叩き、タイムリーツーベースを放つ見事な仕事っぷりを見せた。応援と選手の合わせ技一本状態。これは奏者冥利に尽きるだろう。準決勝でも是非注目してみてほしい。
注目記事・【8月特集】打撃力アップ・第97回全国高等学校野球選手権大会の情報はこちらから・2015年秋季大会特設サイトはこちらから
[page_break:大人気のSEE OFF！サッカーバージョンも甲子園に登場！/沖縄代表が埼玉の強豪に！？]大人気のSEE OFF！サッカーバージョンも甲子園に登場！全国各地で大人気となっているBRAHMANの「SEE OFF」。茨城県の日立一が発祥とされているが、その歌詞は様々。男っぽいもの、という共通点はあるものの特に決まりは無く、言葉をのせやすいメロディなので様々なバージョンがある。
そしてこの「SEE OFF」だが、サッカーJリーグでも使われている。使っているのは長野県のチーム、松本山雅FCだ。松本山雅FCの応援歌、いわゆるチャントはその質の高さと熱さでサッカー界では有名。同じ長野県の代表校、上田西の「SEE OFF」は、この松本山雅FCバージョンと歌詞がそっくりと話題となった。野球からサッカー、そしてまた野球にと逆輸入を果たした格好だ。この他にも松本山雅FCの応援歌と同じ曲をいくつか使っており、地元愛を感じることが出来る。
沖縄代表が埼玉の強豪に！？ユニフォームも少し似ている…？浦和学院の赤い応援団！
そして地元愛といえば沖縄代表が思い浮かぶが、応援で少し異変が起きている。今年の興南の試合で「ハイサイおじさん」などのいかにも沖縄！という曲が流れるケースが少ないのだ。柴引 良介選手のテーマ曲として欠かさず演奏している健大高崎の試合での方がよく聞く程。代わりによく耳にするのが、浦和学院のオリジナル曲、浦学サンバだ。関東一との準々決勝でも最終回、延々と流れていたので印象に残っている人も多いだろう。
沖縄の高校は浦和学院を招いての春の招待試合で対戦することが多く、吹奏楽部は帯同していないものの交流した際に選手の間などで影響を受け、自分たちの応援として取り入れはじめたよう。（浦添商からはじまったという説も…。）沖縄県はその歴史上、吹奏楽以上にマーチングの文化が根強く「音楽＝SHOWである」「観客を楽しませたい」という意識が高い。軽快なリズムに合わせ球場全体が歌い踊れる、いわゆるノれる曲であるサンバは、よりお祭り色が強く、地域関係なくみんなが楽しめる曲として全体に発信するには最適かもしれない。サービス精神満点の沖縄代表アルプスである。
以上、今大会特に目立ったチームの定番曲をご紹介したが、高校野球応援の最近の傾向として、地域色が強く濃く、そして豊かになっている感がある。浦学サンバが沖縄に入っているのは逆だろ、むしろボーダレスだろという見方もあるかもしれないが、それももはや伝統となりつつあると言っていい。（実は元祖は浦和学院なんだよ、という時代ももうすぐ来てもおかしくは無い。）目新しい曲をとっかえひっかえするのではなく、思い入れのある一曲をじっくりと育てていっている。そうして定番曲や伝統の一曲が復活しているのは、この学校に入って、この曲をやりたい、この曲で打ちたい！という憧れを持って吹奏楽部や野球部、チアリーディング部に入るケースが増えているのが一因ではないだろうか。もはや言うまでもないが、高校野球応援は、一大文化として根付いているのだ。
（文・編集部）
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