本田圭佑にハリルホジッチ監督が期待する新しい役割

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練習場にハリルホジッチ監督の声が響き渡る。「ホンダ!」。時にはストップして本田圭佑のところに寄っていき、話をしている。本田は監督の指示に頷いていた。

ハリルホジッチ監督の練習で繰り返されているのは、DFが縦パスを入れ、受けた選手はボランチにダイレクトで落とし、そこから展開するパターンだ。本田は縦パスを受ける役。

つまり、本田はボールが来たらすぐに柴崎岳に落とすだけだ。本田がこれまでのチームで果たしていたボールキープ力などは要求されていない。また、ハリルホジッチ監督が本田に細かく指示を出すことを考えると、本田のプレーを単純化し、スピードアップすることが重要だと思っているようなのだ。

この監督の指示の中で本田はどう自分のよさを出そうとしているのか。その質問を投げかけると、本田は8秒ほどじっくり考え、ゆっくりと答えた。

「まず、自分が認識している自分のよさの枠を、今超えようとしている作業の段階で、自分が認識している自分のよさだけに捕らわれようとはしていなくて。確かにそれは怖いことでもあるのですが、新しいことに対して何でもやっていくということです。普通ならそうじゃないのでしょう。いかに自分の持っているものを生かすかということになるのでしょうが、新しいよさができればと思っています」

新しいよさとは具体的に何か。

「監督がそれを考えているのでしょうが、その意味としては、もう少し裏に飛び出すとか、新たな動きとか、ダイナミックな動き出しなんでしょう」

本田がイラク戦の最初のゴールを裏に飛び出して決めたのは、監督の要求をこなした結果なのだろう。もっとも、そのためにタメを作る本田の動きは制限され、窮屈そうにプレーしているのは否めない。これまでずっと「王様」としてプレーしていた本田がどんな進化を遂げるか、新たなステージと言えそうだ。

【日本蹴球合同会社/森雅史】