ついつい、人の目線や評価が気になり動けなくなっていませんか?

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誰かに言われたことや、他人からの評価が気になる。普段の生活の中で、誰かと接することはとても多く、ついつい相手から見られる自分が気になり、思うように動けなくなってしまうと感じることがある。

何かを気にしはじめると、どうしてもマイナスな方向にばかり気を取られてしまう。
「もしかしたら、あの人は自分のことをこう思っているんじゃないだろうか……」
「こんなこと言ったら、あの人に嫌われてしまうかもしれない……」

というように、いったん気にしはじめるとキリが無いのである。しかし、今日もまたうまく立ち回れなかった……という自分にアドバイスをくれる本に出会った。『気にしない練習』である。

本書は大きく6章に分かれており、それぞれの章で「気にしない人」になるための手がかりが紹介されている。

1章 もっと「鈍感力」を磨く
2章 それは、あなたの「考えすぎ」
3章 うつうつした時は、こう考える
4章 比べない、責めない、引きずらない
5章 人生をシンプルに変えるヒント
6章 「今」「ここ」を大事に生きる

本書の担当編集者である荻田さんにお伺いしたところ、『「考えすぎない」とか「怒らない」といった、感情コントロールをテーマにしたベストセラーが、近年はたくさんあります。それだけ感情がザワついている人が世の中には多いのだと考え、仏教的なアプローチから解決できる本を作ろうと考えました』とのこと。

著者は密蔵院で住職を務められている名取芳彦(なとりほうげん)先生で、今までにも数々の著書を出版されている。
『名取先生は、弊社が以前から大変お世話になっている著者です。ご自身からブログを発信したり、日頃から檀家の方々と実際に接したりしておられるので、いわゆる「お勉強」というよりは、普通の人たちが知りたいような、地に足のついたアドバイスをご教示下さる方なので、本書の執筆をお願いしました』

また、荻田さん自身がとても「気にする」タイプとのことで、自身で質問項目案を作り、それに応える形で本書を書いていただいたとのこと。
『ですから、本書に書かれていることは、私が悩んでいることでもあります。「気にしすぎる」「考えすぎて身動きが取れなくなる」というタイプの人の悩みに応えられる本になったと思います』

2章の中にある“それは、あなたの「考えすぎ」”については、私自身も友人から言われたことがある。そこでこの章を見てみると、『世間の人のほとんどは味方でもないし、敵でもない』という見出しがある。

「自分に反論する人、あるいは自分を無視し、邪魔する人を警戒し、敵意をむき出しにする人はいるものです。そういう人は他人を味方以外はすべて敵と思いたくなるほど、つらい少年期を過ごしてきたのだろうと思います。(中略)しかし、世間の人のほとんどは、味方ではないかもしれませんが、敵でもありません(本文より抜粋)」

今まで、自分は誰かから反論されたり無視をされたときは、「少なからず自分には味方がいるから大丈夫だ」と思うようにしてきたが、それはやはり、相手のことを気にしているからだ。しかし、自分にとってそういう人は一部しかいなくて、ほかの人はほとんど敵でもないのだと思えば、なんと気が楽になるのだろう。

なお、読者の方の感想をお伺いしたところ、「人間関係で疲れたとき」「やることが増えて余裕がなくなったとき」に本書を手にされた方が多かったとのこと。感想の一部を教えていただいた。

・「無関心ではなく、スルーするテクニック」が書かれていて参考になった。
・一度に読まず、少しずつ取り込んでいきたい。
・名取先生自身の迷いも交えながら書かれた、人間味あふれる中身に癒やされました。
・「気にしない練習」というタイトル自体が心に響いた。たまに誰かに対して怒りを覚えても、「これは気にしない練習」と思ってグッとこらえられるようになりました。

感想を拝見していると、「上から目線」ではない仏教の教えから抽出した、「具体的な考え方のコツ」が支持されているようです、とのこと。
『少し生活に行き詰まっている、上手くいかない、そんなことを感じている方に読んでもらいたいなと思っています。
ずっと安泰な人生はありませんが、考え方次第で心を平穏に保つことはできます。そして、「何かを変えたい」と思ったときは、背中を押してくれる存在が必要です。そんな存在が欲しいと思ったとき、本書を開いてみてほしいです。対策が打てないことはないと思います』

なお、本書では「気にしたほうがいいこと」と「気にしないほうがいいこと」をどう判断すればよいのかが紹介されている。

「気にしたほうがいいことは、自分を高め、他人を安心させること。「こうしたほうが自分はよい方向に向かうだろう」「こうすればあの人は楽になるだろう」などです。現状より向上する可能性があるのなら、気にしたほうがいいのです。気にしないほうがいいことは、気にしても自分が向上できそうもないこと、あるいは自分をみじめにするようなことでしょう(本文より抜粋)」

何も、今すぐ考え方を100%切り替える必要はない。

「やっぱり気にしないことなんてできない……」と気にしてしまうより、まずは本書のタイトルにもあるように、「気にしない練習」から始めればよいのだと思う。
(平野芙美/boox)