『はじめての福島学』(開沼博著/イースト・プレス刊)。福島の現状を客観的なデータを用いながら解説した一冊。冒頭にクイズ形式で記されている「福島を知るための25の数字」に加え、開沼さんが歯に衣着せずに書く「福島へのありがた迷惑12箇条」などデータ本にとどまらない読み物としての面白さも秀逸。

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3.11からはや4年以上が過ぎ、徐々に「震災」や「復興」という言葉がメディアに登場する回数が減ってきています。その中、「震災の記憶を風化させてはいけません!」と前のめり気味のアナタ、かえって被災地の人にとってありがた迷惑になっていませんか?新刊『はじめての福島学』、福島の現状をわかりやすく丁寧に解説している社会学者の開沼博さんは、同書の中でこう書いています。

「福島を応援したい」「福島の農業の今後が心配だ」「福島をどうしたらいいんですか」こういう問いに対して、一つ、明確に簡明に網羅的に出せる答えがあります。それは、「迷惑をかけない」ということです。迷惑は知らぬ間にかけているものです。(中略)むしろよかれと思って、悪気なくやっていることも多い。だからこそ、こじれる。「善意」でやっていることを「迷惑かけているのでは」と指摘されると、「私は迷惑をかけていない」と反発することになる。(『はじめての福島学』より)

アナタの「善意」、大丈夫ですか?同書の終わりに「福島へのありがためいわく12箇条」として、県外の人が犯しがちな「滑った善意」が挙げられています。これが中々ドキッとさせられる内容です。

「勝手に福島を犠牲者として憐憫の情を向けて、悦に入る」
「『福島に住み続けざるを得ない人々』とか『なぜあなたは福島に住み続けるのか』とか言っちゃう」
「『福島の人は立ち上がるべきだ』とウエメセ意識高い系説教」
どうです?この他にも鋭い指摘が9つ載っているので、是非本を手に取ってもらいたいのですが、こうした傾向の裏にはメディアの報道の問題もあると開沼さんは言います。

「福島関連の本は論点が出尽くした感もあり、どんどん売れなくなってきています。 新しい論点を求めた結果『美味しんぼ』の雁屋さん(の「鼻血問題」)に代表されるような過激で極端な話しか取り上げられなくなってきています」(開沼さん)極端な情報を元に生まれた「滑った善意」が横行してしまうと、良識のある「的を射た善意」を持った人が気を使って語るのをやめてしまうという状況が生まれる、迷惑が放置されるというのです。

では、迷惑を掛けずに福島のために何かするにはどうすればいいのでしょう?煎じ詰めれば「(福島のものを)買う」「(福島に)行く」「(福島のために)働く」の3つの行動に集約されると開沼さんは指摘します。そうした「共感を伴う行動」こそが「福島の問題」の解決につながるというのです。

とはいえ福島やその産物がどこまで安心なのかわからず、二の足を踏む人もいるかもしれません。そういう人はまず『はじめての福島学』を読んで、正確な基礎知識をつけるところから始めてみましょう。
(鶴賀太郎)