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●見落とされがちなポイントその16月下旬からNTTドコモが提供開始する新通話サービス「VoLTE(Voice over LTE、ボルテ)」。同社のLTEネットワーク(Xi)を利用することで、従来の回線交換網に依存しない高品質な音声通話を可能にする。しかし、新技術を用いるサービスなだけに、あまり知られていないこともいくつか存在する。ここでは、VoLTEに関する注意点・見落とされがちな点をいくつかピックアップしてみよう。

・高音質通話はVoLTE対応端末間のみ

VoLTEでは、従来(3G)の回線交換通話サービスにも利用されている「AMR-NB(Adaptive Multi-Rate Narrow Band)」を必須の音声コーデックとしているが、より高音質な「AMR-WB(AMR Wide Band)」も規定している。コーデックの処理は内蔵のチップに依存するため、VoLTE対応端末でなければ後者のコーデックはサポートされず、結果としてVoLTEならではの高音質通話はVoLTE対応端末間のみということになる。

なお、VoLTEでの音声通話開始時には、端末間でネゴシエーションを行い、利用される音声コーデックが決定される。だからAMR-WBを利用できる端末間であれば高音質なAMR-WBで、そうでなければ必須コーデックのAMR-NBが適用されるはずだ。

・当面は同じキャリア間のみ

6月下旬にVoLTEサービスを開始するNTTドコモ以外の携帯キャリアは、au/KDDIが「年内」、ソフトバンクが未定という状況だ。そのため、VoLTEを利用した音声通話は、必然的にNTTドコモのVoLTE対応端末間のみということになる。VoLTEのローミングサービスは提供されないため、海外との通話にも利用できない。

他のキャリアがサービスインしたときのVoLTE通話だが、現在のところキャリア間接続の具体的なスケジュールは決まっていない。相互接続点(Point Of Interface、POI)をIPベースのものに変更するなど、設備更新の必要もある。VoLTE通話は同じNTTドコモのユーザのみ、という状況がしばらく続く可能性すらありそうだ。

●見落とされがちなポイントその2・通話中に3Gエリアへ移動すると……

NTTドコモのVoLTEサービスは、同社のVoLTE対応端末同士がLTE圏内(Xiエリア内)に位置することが通話の条件となる。だから通話中に一方がXiエリア外へ移動すると、VoLTEでの通話から3Gの回線交換通話へと自動的に切り替わる。そのとき通話状態は維持されるが、一瞬音声が聞こえなくなる可能性はある。なお、3Gエリアから再びXiエリアへ戻ってもVoLTEに復帰することはなく、3Gの回線交換通話がそのまま継続される。

・発着信は確実に高速化される

VoLTE対応端末は、電源オンのあと間もなくVoLTE用のAPN(Access Point Name)へ接続を開始する。3Gネットワークへ切替える必要がないため、従来より短時間での発着信が可能になる。従来の3G回線交換通話での発着信には6〜8秒ほどかかっていたが、VoLTEでは2〜3秒という速さだ。

ただし、2〜3秒という速さはVoLTE対応端末間での話。VoLTE対応端末から従来の3Gの回線交換型端末へ発信した場合は、着信側が呼び出しを受けるまでのスピードはこれまでと変わらない(発信側の呼び出し開始までの時間は短縮される)。

・VoLTE対応端末を買えばすぐ使える?

NTTドコモのVoLTEサービスは、6月下旬のサービス開始当初は6機種(2014夏モデルのスマートフォン4機種、タブレット2機種)で展開される。そのうち一部の端末はすでに発売開始されているが、購入後ただちにVoLTEサービスを利用できるわけではなく、6月下旬以降(タブレットは7月以降)順次実施されるソフトウェアアップデートにより対応される予定だ。

・電話番号は? 緊急通報も利用できる?

VoLTEは従来の音声通話を置きかえうる技術体系であり、これまでの電話番号(090/080/070)を引き継ぐことができる。緊急通報(110/118/119番)にも対応するため、非常時でも利用可能だ。なお、固定電話や携帯電話との通話はもちろん、番号の通知/非通知といった機能も利用できる。

(海上忍)