2月3日に沖縄で読売新聞のイベントがあり、そこで講演をしたのだが、私の前に講演をしたのが、ジャイアンツやライオンズで中継ぎやリリーフとして活躍した鹿取義隆投手(現野球解説者、野球指導者)だった。イベント終了後、スタッフと共に鹿取さんと一緒に食事をしたのだが、野球談義に花が咲いて大いに盛り上がった。そこで鹿取さんに、今年のベイスターズの行方を聞いてみたのだが、意外な答えが返ってきた。ベイスターズが最下位を脱出する可能性は十分あるというのだ。

 壊滅だった投手陣に、ソトとソーサが加わり、厚みが増したうえに、加賀美や高崎もなかなかいいからだという。そう言われると、先発ローテーションも作れそうな気がしてくる。ソーサは抑えに回るかもしれないが、三浦はそこそこの勝利が見込めるし、国吉と藤井が頑張れば、ゲームを作って行けそうだ。

 打撃陣もラミレスに加えて、ブランコとモーガンが加わったので、かなり強力になるのは、間違いない。昨年とは、戦力レベルが一段階上がったのは、確かだ。

 もちろん最下位脱出は、ファンの念願なので、もし実現すれば本当にうれしいが、ただ何となく素直には喜べない。主力選手が、「中途採用」の外国人選手ばかりだからだ。もちろん、中畑監督は成績に責任を負っているから、すぐにでも勝てる体制を作らないといけないのだが、やはり生え抜きからスターになっていく選手が何人もでてこないと、心から喜べない。

 球団は、短期的な戦力補強とは別に、ベイスターズで育った選手が、他のチームに出ていかないような中長期的な戦略を考えていく必要があるのではないだろうか。年俸の問題もそうだが、もっと選手が球団に愛情を持つような仕掛け作りが必要だ。

 例えば、鹿取投手は私と同い年だ。それでも鹿取投手は、いまだに読売系の仕事がきちんとあって活躍を続けている。もちろん、それはジャイアンツで投手コーチを務め、WBCでもコーチを務めるなど、野球の指導者・解説者の能力があってこそだが、それでもベイスターズのOBと比べれば、圧倒的に恵まれた引退後の環境があるのは、事実だろう。ジャイアンツで活躍すれば、一生メシを食っていけるというのが、ジャイアンツ愛の大きな要因の一つになっているのだ。

 ベイスターズもそんな環境を作って欲しい。もしそれができていれば、村田はジャイアンツに行かなかったのではないか。

森永卓郎「ハマスタから遠吠え」バックナンバー

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
森永卓郎オフィシャルWEBサイト
1957年7月12日生、東京都出身