神奈川県にある揚水式発電の城山発電所。下池から水をくみ上げて放流する際には、湖の水位が28mに変化する

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 太陽光や風力、地熱など自然エネルギーで発電された電気の買い取り制度を導入する「再生エネルギー特別措置法案」が、国会の焦点のひとつになっている。

 原発に替わるエネルギーとして期待される自然エネルギー。その実用性について、ISEP環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長はこう話す。

「自然エネルギーがまかなう国内電力の割合を、いまの原発と同じ30%まで高めるには、今後50兆円くらいが必要だと考えられます。50兆円は巨額ですが、今後の原子力発電の燃料再処理にかかる費用も50兆円から60兆円と見込まれていて、その金額はすでに電気料金に含まれて徴収されています。つまり、原発への投資をやめ、50兆円かけて自然エネルギーを開発しても、国民負担は増えないんです」

 そして飯田所長は、コストの内容や自然エネルギー活用の意義についても力説する。

「燃料の再処理は、コストをかけて燃料をつくるだけ。1Wも発電していない段階で、それだけのコストがかかるんです。対して自然エネルギーはかけたコストがそのまま電力として活用できます。また、自然エネルギーによる発電が普及すれば化石燃料の消費を抑えることも可能です。2008年現在、日本は 23兆円もの巨費を化石燃料の輸入に費やしています。対して、自然エネルギーは燃料を必要とせず、低廉なメンテナンスコストだけで発電が可能。削減効果はそれだけ大きくなります」

 では、自然エネルギーはどれほど実現に近づいていて、その将来像はどうなっているのか。小規模水力(小水力)、太陽光、風力について、それぞれ専門家に聞いた。

「これまで活用されていなかった小さな川や上下水道を使い発電する小水力発電は、既存ダムの強化なども併せて行なうことで、総電源に占める水力の割合をあと4割ほど高めることができるでしょう。そのためのコストは10兆円で十分可能。発電コストは、石炭火力より高いけど石油火力より安いというレベルになると思います」(全国小水力利用推進協議会・中島氏)

「太陽光発電は、政府目標でもある『10年後に2800万キロワット』を目指して進んでいます。天候により変わる発電量が、電力会社の送電線網に悪影響を与えないための技術開発、さらなるコストダウンなどの課題はありますが、これまでのように各種補助や電力会社による買取制度が継続すれば、発電量は順調に伸びていくはずです」(太陽光発電協会・亀田氏)

「風力は直接的に原発の代替とはなりえません。それは量ではなく質の問題です。風力は風が吹かないと発電できない。24時間電力を出し続ける原発とは性質が違うのです。そういう意味で、ほかの自然エネルギーに対してのハンデはあります。しかし、蓄電設備の設置やほかの電源との連携を行うことで、そうしたハードルはある程度克服できると思います」(日本風力発電協会・岩田氏)

 こうした自然エネルギーを実用化するには、「国策」とすることが重要と各専門家は声を揃える。今国会内に法案は成立するのか、注目が集まる。

(写真/村上庄吾)