田原総一朗「クレイジーなマルコヴィッチはこの映画の象徴」〜映画『RED/レッド』
 静かな引退生活を送る元CIAのスパイが何者かに襲われた。自分を襲ったのがかつて身を捧げたCIAだと知った彼は、昔の仲間たちとチームを再結成する。彼らのコードネームはRED(引退した超危険人物)――。ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチという超大物の“オヤジ”達が活躍する『RED/レッド』を、76歳にしてなおも現役ジャーナリストの田原総一朗が斬る!

――この『RED/レッド』を観て最初に思ったことは何ですか?

田原総一朗(以下、田原):まず、アメリカって言うのは怖い国だけど、面白い国だなあと思った。もっと言うと羨ましいなあと思った。こういう作品は日本で絶対作れない。それは製作費の問題じゃない。CIAの元スパイ達が、現在のCIAから命を狙われるなんて日本じゃあり得ない。公安のOB達が、今の警察から命を狙われるなんて設定にしたってリアリティがない。しかも命を狙っている黒幕が副大統領だったなんてね。菅さんが大きな組織を使って誰かの命を狙うなんてあり得ない(笑)。

――作品の内容についてはいかがでしょうか?

田原:アメリカの一番得意な作品だね。スリルとサスペンス、アクションに次ぐアクション。とにかく撃ち合いが派手だよね。イギリスのスパイだった女の役を演じたヘレン・ミレンが、派手に撃っているのね。こんなに派手に撃つ作品は観たことがない。これだけ派手に撃つとリアリティがないんだけど、この作品はリアリティがあるんだよね。パワーに圧倒される。半端じゃない。最初からこの作品はアクションが凄いと思っていたけど、それを遥かに上回るね。想像を絶する作りで、ストーリーもなかなか面白い。後から考えると随分漫画チックなストーリーでもあるけど。

――確かに漫画的な設定とかありますね。

田原:例えば、ブルース・ウィリスが、年金係の女性と恋をするなんて随分いい加減だよね(笑)。本当に行きずりの恋って感じでね。しかも真剣にどんどん惚れていく。それに守るために縛ったり猿ぐつわを噛ませたりしてさらうとかね。まさに漫画的なストーリーです。でも、それを遥かに上回る緊迫感。圧倒する力。こういう作品って、だいたい途中で飽きるんですよ。パターンがマンネリ化するんですよ。でもこれは全くそういうマンネリ感を覚えない。僕らが想定しているものを遥かに上回る設定が、次々と緻密に行われて全く予想できない。そこは大したストーリーだと思うね。