予選突破に向けた大一番、2月のオーストラリア戦で「あと一歩が遠い」と話した中村<br>(Photo by Hiroyuki Nakamura/PHOTO KISHIOMOTO)

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12月9日と10日に東京都内で行なわれたショートキャンプで、09年の日本代表の活動が終了した。南アフリカW杯の組み合わせも決定し、スタッフによる対戦相手のスカウティングが始まっていく。ベスト4進出へ向けた強化の最終段階へ突入する。

1月のアジアカップ予選で幕を開けた09年は、アジア最終予選突破と、その後の世界との遭遇の二つのパートに分けることができる。南アフリカW杯を念頭に置きながら1年間のチームの歩みを振り返り、成果と課題をシリーズで検証してみたい。



08年に続いて1月の指宿合宿で始動したチームは、20日に慌ただしくアジアカップ予選を迎える。国際Aマッチ出場が2ケタに満たない選手が7人という若い構成で挑んだイエメン戦は、2−1の辛勝だった。

一週間後のバーレーン戦では国内組に稲本と本田圭を加えるが、敵地で0−1の敗戦を喫してしまう。「バーレーンは一番嫌なチーム。自分たちがやることをやらないで、相手が嫌なことをするから」と岡田監督は戦前に話していたが、試合後には「とにかく中盤でミスパスが多かった。スピード感の慣れの問題があった」と、チームが仕上がっていないことを敗因にあげた。「このサッカーをやろうとすると、ミスが多くなるとキツくなる。カウンターを受けるミスがあれだけ多いと、最後(フィニッシュ)までいかない」

帰国後にフィンランドを5−1で退け、2月11日にオーストラリアとのホームゲームを迎える。最終予選の大一番だ。「こういう相手を想定してきたので、ものすごくやり甲斐がある」と指揮官が話す一戦は、チームの成熟度をはかるバロメーターとなる。

バーレーン戦に比べれば、中盤でのミスは減っていた。前年10月のウズベキスタン戦で散見された、相手の圧力に怯んでつなぎを避けるところもなかった。走ってスペースを作り、新たにできたスペースにまた違う選手が飛び出していく。ボールが動き、選手が連動する。トレーニングで確認してきたニアゾーンを使っての崩しもあった。チームが目ざすものは、ほぼ出し切ったと言うことができただろう。

だが、得点は奪えなかった。シュート数では11対3と圧倒したものの、オーストラリアを慌てさせたシーンは少なかった。攻守に奮闘した中村俊のコメントが、この試合が明らかにした現実を言い当てている。

「あと一歩というところだけど、その一歩がとても大きい」

続く3月のバーレーン戦は、その中村俊の直接FKで1−0の勝利をつかんだ。前線からの連動したディフェンスでボールを奪い、ショートカウンターのような形で相手ゴールへ迫っていく。「この前(1月)の試合に比べたら気負いもなく、自分たちで主導権を握れた」と玉田は振り返った。

とはいえ、バーレーンを相手にホームで1−0である。「W杯予選に簡単な試合はない」と言われるが、W杯でベスト4という目標に照らし合わせると、心もとない印象は拭えなかった。流れのなかから崩せなかった意味では、「あと一歩」が遠かったのはこの日も変わらなかったからだ。

それでも、岡田監督は努めて前向きだった。「いまの状況、相手の戦い方、自分たちの強みを考えて戦ってくれた。素晴らしい試合だった」と振り返り、「集まるたびに少しずつチームになっている実感がある」と手応えを口にした。もっとも、「まだ我々は何も得てない。さらに質を高め、より強くなっていかなればいけない」と、チームを引き締めることも忘れなかったが。 (以下次回へ

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖