テストにはちょうどいい相手だったと言ったら、英国4協会のひとつである伝統国に失礼だろうか。10月10日に行われたスコットランド戦である。

香港戦に続いてドイツの『kicker』式に採点をすると、僕の評価は「3」だ。格下相手の6−0と、FIFAランキング30位のスコットランド相手の2−0という結果は、ほぼ同じ価値というのが個人的な判断である。

ただし、香港戦は「3」か「3・5」で悩んだのに対して、スコットランド戦は「2・5」か「3」で悩んだことは付け足しておきたい。戦術的な物足りなさがあったとしても、相手ゴールへ仕掛けていく姿勢が強く感じられた内容は、「新戦力や控え選手のテスト」という試合の意義に沿ったものだった。相手ゴールへ向かっていくプレーが多ければ、観戦している僕らの身体は前のめりになる。気持ちが試合に入り込んでいくものだ。

注目された森本は、無難なデビューを飾ったという印象だ。どちらのゴールシーンでも流れに絡んでおり、2点目につながるシュートは非凡さを感じさせた。

ゴール前での働きだけではない。ポストプレーでもリズムを作り出していた。たとえば、61分のシーンである。

バックパスを蹴り出した相手GKのロングフィードを岩政が胸で落とし、稲本が浮き球を軽くさばいたボールが、最前線の森本にわたる。胸トラップでボールを落ち着かせた森本は、ボールが地面に落ちるタイミングで前を向き、セルティック所属のマクマナスを振り切る。カバーに入った左サイドバックのベラがスライディングを仕掛けたところで、主審のホイッスルがピッチ上に鳴り響いた。日本に直接FKが与えられた。

この試合なら本田と中村憲、いつものメンバーなら中村俊と遠藤といったぐあいに、日本には優れたキッカーが揃っている。彼らにできるだけ多くのFKを蹴らせることで、得点の可能性はアップしていく。

そのためには、相手が反則を冒してしまうプレーをしなければならない。ゴールへ向かっていかなければならない。この日の森本のように、である。

プレー時間は35分ほどだった。合格点をつけるには、まだ少し早い。「無難なデビュー」と表現したのもそのためである。

それでも、独特の雰囲気を感じさせたのは確かだ。「香港戦とスコットランド戦を含め、現時点でベストの布陣で臨みたい」と岡田監督が話す14日のトーゴ戦に、出場する資格を得たのは間違いない。中村俊や遠藤、岡崎や長谷部らとどのような関係性を築くのかで、森本の評価は固まっていくだろう。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖