表紙の右下に小さく「歴史群像コミック」と書いてあるところに編集サイドの苦悩を感じてみたり。こういう本は売る時にも色々気を使うんでしょうね。

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コンビニで見かける企画物の漫画にも色々ありますが、先日ミステリー雑誌の大御所「ムー」から、スピンオフ的な気になる本が出ていたので買ってみました。純粋に漫画として読むとちょっと微妙でしたが、ネタは興味深いものがあったので読み応えはありました。今回は、そんなムー民(※1)な漫画の内容を一部ご紹介してみます。
(※1)ムー民:雑誌「ムー」の愛読者のこと。発音は「ムーミン」。

■『2012年地球滅亡の危機!!』
発行:Gakken
サービス定価:450円(税込)

●第1章 2012年 人類は終わる!!(ヨハネの黙示録)
物語は「コミックWU編集部」での編集長のつぶやきから始まります。「『2012年にこの世界は滅亡する』…。マヤ民族に伝わるこの予言が最近世界中を騒がせている。検証を急ぎ、読者の前に最新のレポートを届けなければ…」と、眉間にシワを寄せながら使命感に燃えてます。予言が世界中を騒がせているというのは、なんだか言い過ぎのような気がしますが、まあそこは突っ込まないでおきましょう。

大ネタの「マヤの予言」の前フリとして、まずは終末予言の超定番「ヨハネの黙示録(新約聖書)」が解読されていきます。2000年前に書かれた聖書に、チェルノブイリの原発事故が予言されていたという有名なネタを初め、地球滅亡の引き金になる獣=アメリカのブッシュ大統領と解釈してみせるなど、現代的なネタも織り交ぜていきます。
表紙の右下に小さく「歴史群像コミック」と書いてあるところに編集サイドの苦悩を感じてみたり。こういう本は売る時にも色々気を使うんでしょうね。


獣の数字「666」が世界にばらまかれると終末が来るというネタは、インターネットの「http://www」が「www」=「666」という仮説を立てます。なんでも「W」は旧約聖書の原語であるヘブライ語では「6」を表すんだとか。この「666」ネタは、昔はバーコードの長い線が「6」を表していて、それが左右と真ん中に計3本あるので「666」というのが定番だった記憶があるのですが、時代によってネタは変わるものなんですね。

さらに2000年に公開された「ファティマ第三の予言」は意図的に嘘が発表されたのではないかとか、「聖マラキの予言」でローマ法王は112人目で終わり(キリスト教の終了)といった予言が解説されます。ちなみに現在のローマ法王・ベネディクト16世は111人目らしいです。全世界のミステリー研究者は、次の法王に就く人物が誰になるのか今から注目していることでしょう。

とまあ、ネタだけ抽出するとそこそこ見るべきところはあるのですが、突然の地震に驚いた女性編集部員が「もう本当にヤダ!! まだ海外旅行にも行ったことないし、ダイエットにも成功してないんだもん!」と脳天気なゆとり思考を発揮して、緊迫感が一気に薄まるところなどは評価が分かれる気がします。自分はそういうユルさは大好物ですけど……。

●第2章 古代からの警告(マヤの予言)
タイトルに書かれた「マヤの予言」の章です。舞台はメキシコに移ります。ここでは白髪の老人・ロドリゲスが、自分の孫にマヤ文明の叡智と予言を語る形式で進みます。マヤの暦によると2012年に人類は終末を迎え、翌2013年には物質主義的な文明形態が完全に終了するみたいです。さらにロドリゲスは「地球上の物事には全て周期的な時間がある。人類文明5000年も機械テクノロジーも限界を迎えているのだ」と語ります。

個人的にはテレビがアナログからデジタルに切り替わる程度の文明が「テクノロジーの限界」というのはなんだか寂しい気がするんですが、とりあえずスルーしておきます。

マヤ文明といえば外せないのがオーパーツ。現代の技術でも制作不可能な「水晶ドクロ」、航空力学的に矛盾のない「黄金ジェット」もしっかり登場します。この章は天文学や時間、単位といった扱いが難しいテーマが主となってるのですが、漫画としてなかなか上手く構成されているように思えました。丁寧に描かれた絵はどこか『MMR(※2)』的で雰囲気もあります。この本の中では一番の力作ではないかと。
(※2)『MMR』:『MMR マガジンミステリー調査班』のこと。「週刊少年マガジン」に不定期で連載されていたミステリー漫画の金字塔。主人公キバヤシの大胆な仮説を聞いたメンバーが「な なんだってー!!」と驚くお約束のシーンはあまりにも有名。
裏表紙をめくると載っている「ムー」携帯サイトの広告。ムーネタの待受、着メロ、心霊動画って、なんだか怖すぎるんですけど……(汗)。


●第3章 地獄絵図に終末を見た!!(東洋の終末予言)
中国のチャン老師が仏教における終末思想を語ります。まず最初に地獄絵図の解説で、欲にまみれた現代人は地獄行き! といった話の流れを作ります。そこから救われるためのヒントとして登場するのが日本の大予言者・出口王仁三郎(明治4年〜昭和23年)。この手の本には高確率で登場する有名人ですね。

彼は第二次世界大戦における日本本土空襲、広島原爆投下を予言し、さらにはメールやワンセグ携帯も予言していたと書かれています。ここでまさかワンセグ携帯なんて言葉が出てくるとは……。残念ながら詳細は書かれてなかったのですが、これは最新の研究成果なんでしょうか? 久しぶりに本誌「ムー」の動向が気になってしまいました。

●第4章 恐ろしきヴィジョン(超能力者たちの終末予言)
世界の超能力者の予言が描かれていきます。エドガー・ケイシー(米国)、ジーン・ディクソン(米国)、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース(ブラジル)などが登場します。圧巻なのがジュセリーノの終末予言で、2007年〜2043年に起こるという未来のヴィジョンは、かなり鬱になる内容です(詳細は読んで確認してみてください)。唯一の良いヴィジョンは2008年に「エイズワクチン」が誕生するというものですが、それって来年じゃないですか! 的中率90%で、以前テレビでも紹介されていたホットな予言者の言うことだけに気になります。予言のインパクトはこの章が一番でした。

●第5章 語り継がれた言葉(ホピ族の予言)
ネイティブ・アメリカンであるホピ族の予言では、日本の近くにある某国がヤバイらしいです。予言のイメージはかなり抽象的なので、前述の予言に比べると切迫感はさほどない気がしますが、当たった内容は結構凄いものがあります。この章には未来に救われる選択肢があったので、読んでて少しホッとしました。

●第6章 最悪の未来を回避せよ!(最終結論)
ここで日本の「コミックWU編集部」に戻ります。編集長は「おい! 人類滅亡を回避する方法がわかったぞ!」といきなり言い出し、編集部員に向かって持論を展開します。その内容はここでは詳しく書きませんが、なんとなく希望がある気がしないでもないと言いますか……。まあ、これは各自読んで判断してみてください。

■まとめ
こういう終末予言で思い出すのは、1999年7の月に恐怖の大王が来て人類が滅亡するというノストラダムスの予言ですが、今でも人類はバリバリ健在です。人類は結構しぶといみたいですね。こういうダウナー系のネタは、あまり深刻に考えると精神衛生上良くないので思いこみの激しい人にはオススメできないかも。都市伝説的な話が好きな人は、それなりに楽しめると思います。まあ要するにこの本は「ちゃんと生きないと罰が当たるぞ」ということを書いていると思えばいいんじゃないかと。……耳が痛い俺、自重。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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