ニートが集まりゃ何かできる
「履歴書の書き方や名刺の渡し方教室などが、本当の意味で、ニートらの就業支援になっているのでしょうか」──。首を傾げるのは、ニートの就業問題解決に挑む社会起業家で、非営利団体「NPOコトバノアトリエ」(東京都文京区)の代表理事・山本繁さんだ。同じ悩みを抱えるニートのために“交流の場”を作るという手法で、支援効果を上げている。
2002年3月に創立された「コトバノアトリエ」は現在スタッフ6人で、クリエイティブな仕事に就きたいニートを育成する「神保町小説アカデミー」や漫画家志望の若者を支援する「トキワ荘プロジェクト」、生きづらさを抱える若者向けのインターネットラジオ番組「オールニートニッポン」などのプロジェクトを実施している。
支援事業の中核と位置付けるネットラジオ番組「オールニートニッポン」は、06年10月から放送開始された。大学をドロップアウトした後、ニート生活に入った小穴哲至(こあなてつし)さん、イジメ、リストカットなどの経験を持つ作家の雨宮処凛(かりん)さんなど4人がパーソナリティーを務める。06年度の売上として、約900万円を見込んでおり、07年度は同ラジオ番組の広告収入などを増やして、売上2000万円を目指すという。
山本さんによると、現在、リスナーは約2000人。そのリスナーの一人に、毎週金曜日にインターネット上で放送される同番組を初めて聞いてから2カ月後、5年ぶりに引きこもっていた家を出た若者がいる。行き先は、同番組が募集しているスタッフの面接会場。「5年ぶりに人前に出た時は、物凄く緊張しました」と彼はその日を振り返って、昨日のように語った。
この若者は、自分自身と同じように引きこもりやニートになった人たちが、どんな話をするのかに興味を持って番組を聞き始めたという。若者は現在、ニート仲間とその番組作りに参加しており、少しずつだが、仲間との会話にも加われるようになり、冗談にも反応できるようになったと話す。
「ニートの若者たちは『自分のことを話したい、誰かに聞いてもらいたい』という人が多い」と話す山本さんは、そうしたニートを集めて、2人1組で30分番組を受け持たせ、1日6時間週36時間の番組に144人のニートをパーソナリティーとして出演させる事業を計画している。出演するニートは、何をどのようにリスナーに伝えるかなどの企画を自分たちで行う。この事業について、山本さんは「広告募集をはじめ、音響のエンジニアなど裏方の仕事もニートのスタッフを募り、就業の場を創出するほかに、メディアに関する分野にニートを送り出したいのです」と夢を語る。
ニートの情報収集能力や専門知識を、山本さんは高く評価する。「福祉、農業、飲食関係、工場などの作業員といった職より、彼らの個性を活かし、望む仕事に就く支援をしたいのです」と話す。何をしたら良いのかわからない彼らに対して、山本さんは「小学生の頃、何が好きで、何になりたかったかを思い出すことです」とアドバイスする。例えば、動物の飼育が楽しかった人は、人をケアする仕事に向いていたり、ピアノやバレーなどを習っていた人は、人前に出る仕事に向いていたりするという。幼い頃には、人間本来の「無垢」な気持ちが表われるという。
「市場や受け手が何を欲しているかに敏感で、一方、作家など発信者の個性を上手に引き出し、コーディネイトすることに長けている」と山本さんは自分自身を分析する。その事業の特徴を表すキーワードは、「創造力」と「協働」。上から手を差し伸べるというのではなく、いつも同じ目線に立って、“一緒”に“考える”ことで、何かに取り組んでいくのが山本さんのニート支援のやり方だ。【了】
2002年3月に創立された「コトバノアトリエ」は現在スタッフ6人で、クリエイティブな仕事に就きたいニートを育成する「神保町小説アカデミー」や漫画家志望の若者を支援する「トキワ荘プロジェクト」、生きづらさを抱える若者向けのインターネットラジオ番組「オールニートニッポン」などのプロジェクトを実施している。
山本さんによると、現在、リスナーは約2000人。そのリスナーの一人に、毎週金曜日にインターネット上で放送される同番組を初めて聞いてから2カ月後、5年ぶりに引きこもっていた家を出た若者がいる。行き先は、同番組が募集しているスタッフの面接会場。「5年ぶりに人前に出た時は、物凄く緊張しました」と彼はその日を振り返って、昨日のように語った。
この若者は、自分自身と同じように引きこもりやニートになった人たちが、どんな話をするのかに興味を持って番組を聞き始めたという。若者は現在、ニート仲間とその番組作りに参加しており、少しずつだが、仲間との会話にも加われるようになり、冗談にも反応できるようになったと話す。
「ニートの若者たちは『自分のことを話したい、誰かに聞いてもらいたい』という人が多い」と話す山本さんは、そうしたニートを集めて、2人1組で30分番組を受け持たせ、1日6時間週36時間の番組に144人のニートをパーソナリティーとして出演させる事業を計画している。出演するニートは、何をどのようにリスナーに伝えるかなどの企画を自分たちで行う。この事業について、山本さんは「広告募集をはじめ、音響のエンジニアなど裏方の仕事もニートのスタッフを募り、就業の場を創出するほかに、メディアに関する分野にニートを送り出したいのです」と夢を語る。
ニートの情報収集能力や専門知識を、山本さんは高く評価する。「福祉、農業、飲食関係、工場などの作業員といった職より、彼らの個性を活かし、望む仕事に就く支援をしたいのです」と話す。何をしたら良いのかわからない彼らに対して、山本さんは「小学生の頃、何が好きで、何になりたかったかを思い出すことです」とアドバイスする。例えば、動物の飼育が楽しかった人は、人をケアする仕事に向いていたり、ピアノやバレーなどを習っていた人は、人前に出る仕事に向いていたりするという。幼い頃には、人間本来の「無垢」な気持ちが表われるという。
「市場や受け手が何を欲しているかに敏感で、一方、作家など発信者の個性を上手に引き出し、コーディネイトすることに長けている」と山本さんは自分自身を分析する。その事業の特徴を表すキーワードは、「創造力」と「協働」。上から手を差し伸べるというのではなく、いつも同じ目線に立って、“一緒”に“考える”ことで、何かに取り組んでいくのが山本さんのニート支援のやり方だ。【了】