ニートが集まりゃ何かできる
![「オールニートニッポン」の公開放送の準備をするニートのスタッフ。ニットキャップを被っているのが山本さん。19日、東京都渋谷区内のビルで。(撮影:佐藤学)](https://image.news.livedoor.com/newsimage/0/7/02d5d79d96d65e1f57689150d080a0cc-m.jpg)
2002年3月に創立された「コトバノアトリエ」は現在スタッフ6人で、クリエイティブな仕事に就きたいニートを育成する「神保町小説アカデミー」や漫画家志望の若者を支援する「トキワ荘プロジェクト」、生きづらさを抱える若者向けのインターネットラジオ番組「オールニートニッポン」などのプロジェクトを実施している。
山本さんによると、現在、リスナーは約2000人。そのリスナーの一人に、毎週金曜日にインターネット上で放送される同番組を初めて聞いてから2カ月後、5年ぶりに引きこもっていた家を出た若者がいる。行き先は、同番組が募集しているスタッフの面接会場。「5年ぶりに人前に出た時は、物凄く緊張しました」と彼はその日を振り返って、昨日のように語った。
この若者は、自分自身と同じように引きこもりやニートになった人たちが、どんな話をするのかに興味を持って番組を聞き始めたという。若者は現在、ニート仲間とその番組作りに参加しており、少しずつだが、仲間との会話にも加われるようになり、冗談にも反応できるようになったと話す。
「ニートの若者たちは『自分のことを話したい、誰かに聞いてもらいたい』という人が多い」と話す山本さんは、そうしたニートを集めて、2人1組で30分番組を受け持たせ、1日6時間週36時間の番組に144人のニートをパーソナリティーとして出演させる事業を計画している。出演するニートは、何をどのようにリスナーに伝えるかなどの企画を自分たちで行う。この事業について、山本さんは「広告募集をはじめ、音響のエンジニアなど裏方の仕事もニートのスタッフを募り、就業の場を創出するほかに、メディアに関する分野にニートを送り出したいのです」と夢を語る。
ニートの情報収集能力や専門知識を、山本さんは高く評価する。「福祉、農業、飲食関係、工場などの作業員といった職より、彼らの個性を活かし、望む仕事に就く支援をしたいのです」と話す。何をしたら良いのかわからない彼らに対して、山本さんは「小学生の頃、何が好きで、何になりたかったかを思い出すことです」とアドバイスする。例えば、動物の飼育が楽しかった人は、人をケアする仕事に向いていたり、ピアノやバレーなどを習っていた人は、人前に出る仕事に向いていたりするという。幼い頃には、人間本来の「無垢」な気持ちが表われるという。
「市場や受け手が何を欲しているかに敏感で、一方、作家など発信者の個性を上手に引き出し、コーディネイトすることに長けている」と山本さんは自分自身を分析する。その事業の特徴を表すキーワードは、「創造力」と「協働」。上から手を差し伸べるというのではなく、いつも同じ目線に立って、“一緒”に“考える”ことで、何かに取り組んでいくのが山本さんのニート支援のやり方だ。【了】