NHKの受信料契約は、スマホのワンセグ機能にも及ぶ (2-2)
若者のテレビ離れが話題になって久しい。テレビ離れの原因は様々であろうが、「自宅で(家族と一緒に)テレビを見る習慣がなくなっている」という変化に、心当たりのある人は多いのではないだろうか。
【前回は】NHKの受信料契約は、スマホのワンセグ機能にも及ぶ (2-1)
テレビドラマが共通の話題になっていた時代には、情報源としてのテレビの存在は大きかったが、スマホによる様々な楽しみ方を経験した世代には、どうしても早く家に帰ってテレビを見るという動機は起こりにくいし、スマホにワンセグ機能があればテレビ受像機の前に座る必要すらない。総務省の調査によると、10代の平日における平均視聴時間が、12年には102.9分だったのが、17年には73.3分へと30%ほど減少している。特に、若い世代には共通した傾向のようだ。
ところが最高裁判所の第3小法廷は3月13日、自宅にテレビがなくてワンセグ機能付きのスマホだけを持っている人が、NHKと受信契約を結ぶ義務の有無を争う4件の訴訟において、原告側の上告を退ける決定を下し、契約義務を認めた東京高裁の判決が確定した。
16年8月に一審のさいたま地裁が「ワンセグ携帯の所持者が、NHKと契約する義務はない」と判決していたが、二審の東京高裁がワンセグ携帯を所持していることを、「受信設備を携行している」と判断してNHKが逆転勝訴していた。今後NHKは、自宅にテレビがない人でも、ワンセグ機能付きのスマホ所持者であれば、受信契約を求めることが可能になったのだ。
3月5日にはNHKの放送番組全てをインターネットで同時配信できることとする放送法改正案が閣議で決定された。今まで災害報道やスポーツ中継に限られていたインターネットへの同時配信が、全ての番組で可能となる。早期に法が成立して、年内に同時配信をスタートさせ、20年の東京オリンピック・パラリンピックでシステムの認知が進むことを期待しているようだ。
「ワンセグ携帯訴訟」は自宅にテレビがない場合について争われていたが、既に受信契約を締結している世帯が、ワンセグ携帯やワンセグ機能のあるカーナビゲーションを持っていたとしても、当然追加契約の必要はない。
しかし、自宅にテレビがない人を焙り出して、所持するスマホにワンセグ機能があるかないかを見極めて受信契約の締結を求めることが、容易でないことは想像できる。個人情報の保護が拡大する時代に、相当デリケートな情報をどうやって獲得するのかというのも大きな問題だろう。