サマータイムが導入される欧米でも「人間の生活習慣に合わない」という反対意見が根強くある
2020年の東京オリンピックに合わせて期間限定で日本でもサマータイムを導入する可能性が報じられると、多方面から異論が噴出しました。サマータイムをすでに導入しているヨーロッパ諸国でも、「サマータイムのせいで健康被害が生じている」「無用な混乱を招いている」というサマータイム不要論は根強くあるようです。
Daylight saving time may become a thing of the past in Europe
https://www.nbcnews.com/news/world/daylight-saving-time-may-become-thing-past-europe-n893131
しかし同じEUという枠組みにある国とはいえ、ヨーロッパ大陸の広範囲に及ぶEU域内には「日照時間を活用する」というサマータイムの目的がまったく意味をなさない地域があります。例えば緯度の高いフィンランド北部では、6月から7月の間は白夜で太陽が沈まず、逆に冬にはまったく太陽は昇りません。このような地域では、時刻を1時間進めたり遅らせたりする行為は何の意味も持たず、いたずらに混乱を招くのみ。フィンランドのロバニエミで大学に通うヤルモ・ハイテラさんは、「私はサマータイムに従う必要がありません。私の時計は常に冬時間のまま。他人が『10時』というときは、頭を使って1時間マイナスするだけです」と語り、サマータイムに従っていないと話します。
フィンランドのような北欧の国に住む人にとって、サマータイムによって時刻を進めたり遅らせたりする行為は意味がないだけでなく、不便なものです。しかし、ヨーロッパや北米を含む世界70カ国でサマータイムが導入された1981年以来、フィンランド人もサマータイムに付き合わされているとのこと。フィンランドではサマータイムの導入によって睡眠障害が発生し、職場でのパフォーマンスが低下し、健康上の問題につながり得るという研究結果が出されました。例えば、ある研究によると、脳卒中が発生する割合はサマータイムで時刻が変更された後に8%増加するとのこと。フィンランドではEUに対してサマータイムの廃止を求める7万人の署名が集まるなど、サマータイムの廃止に向けて積極的な運動が起こっています。サマータイム制度の廃止を求める動きはフィンランドだけでなく、リトアニア、ポーランド、スウェーデンでも起こっているとのこと。
サマータイムが導入されたきっかけは、労働生産性を高めることだけでなく、エネルギー消費を減らすためでもありました。サマータイムが導入され始めたころ、1970年代に2度のオイルショックがあり、サマータイムの制度的な意義は高いものでした。しかし、エネルギー危機以来、空調設備や電化製品の普及によって、省エネルギー面でのサマータイムの寄与度は下がっています。実際に2016年にアメリカ・インディアナ州でサマータイムが導入されると、電力使用量が1%かえって増大したことが確認されています。
「人が1時間早起きして生産性を高めるのはもちろん認められるべきですが、それをヨーロッパ全体で強制するのは変です。機械はプログラムできますが、人間の体内時計は簡単には変えられません」というあるフィンランド人の言葉の通り、サマータイム導入で得られるメリットをデメリットが上回るという反対意見は根強く存在するようです。