マイクロソフトがSurface Goの価格アップでもOffice付きにこだわった戦略と目論見は成功するのか?

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日本マイクロソフトは7月11日、低価格なタブレットPC「Surface Go」を8月28日に発売することを発表した。




Surface Goは、
画面サイズ 10.1インチと、上位モデルの「Surface Pro 4」よりもコンパクトなモデルだ。
画面サイズと本体の小型化で、重量も軽くなった。
イメージとしてはちょっと厚さのあるアップルの「iPad」といったところである。

価格は、
・4GB RAMと64GBのストレージ(eMMC)搭載モデルが64,800円
・8GB RAM、128GBストレージ(SSD)搭載モデルが82,800円
米・マイクロソフトが発表したSurface Goは399ドルであった。
日本のPC市場はいわゆる「オフィスバンドル文化」で成長してきた特殊なマーケットと言うこともあり、Officeがバンドルされる形でプラス2万円という価格設定なのである。

別売となる
・キーボードにもなるカバー「Surface Go タイプカバー」は11,800円、
・アルカンターラ素材タイプカバー「Surface Go Signature タイプ カバー」は15,400円
・快適な手書き入力ができる「Surface ペン」は11,800円
これらPCとして使用するには、最低でも本体代64,800円とタイプカバー代11,800円のあわせて76,600円が必要となる。
※掲載した価格は全て税抜

オフィスが搭載されるということでSurface Goのターゲットは学生やビジネスマンとなる。
学生に関しては、
2020年より小学校教育においてプログラミングが必修化されるため、より低年齢層も視野に入れている。発表会ではSurface ペンによる手書きだけではなくランドセルにピッタリと収まるコンパクトさをアピールしていた。




また、これまでの自由度の高い使い方に加えて、「Go」という名前通りコンパクトで軽量という特徴を活かして外に持ち出すという使い方を強く押し出している。

搭載するプロセッサはインテル「Pentium Gold Processor 4415Y」。
低価格PCなどに使われている「Atom」や「Celeron」より、パフォーマンスは高いが、動画編集や3Dゲームなどのヘビーユースには向かないと言えるだろう。

ビジネス用途では、
オフィス内での利用だけではなく、医療現場や製造、さらには建築の現場での利用などに持ち込み生産性の向上を狙う。
特に外の現場での利用に関しては、年内発売予定のLTE対応版は、単体でのデータ通信が可能となるため、活躍の場の拡がりに期待できそうだ。

業務用としては、ソフトウェアだけではなく現場にあわせたハードウェアのカスタマイズも必要であるため、オリジナルの防塵や防水などの専用カバー設計などにおいてはSurface Goのコンパクトさが活かされるのではないだろうか。

これまでSurfaceシリーズは学生をターゲットとしたクラムシェル型の「Surface Laptop」があったものの、タブレット型のSurfaceはリテラシーが高い消費者がその利便性を見いだして選択する傾向が強い。

一方で、Surface Goの価格設定は2万円相当のOffice代を差し引けば、アップルの「iPad」に近い金額となり、幅広い消費者にアピールも可能である。

しかし課題もある。
タブレット市場はスマートフォンほど成長していない点だ。
さらにタブレット市場のユーザーニーズは、画面サイズによって細分化されている。
つまり、少ないパイを取り合う消耗戦になりかねない。

マイクロソフトは、日本市場において一般消費者に訴求するためにはOfficeが必要不可欠であるという考えを示している。もちろん、これはマイクロソフトだけではなく販売店も同じ考えである。前述した、タブレット市場としてもフルバージョンのOffice付きは武器となるであろう。

しかしながら、数あるデバイスからSurfaceを選んできた消費者としては、Officeが付属しない安価なモデルが選べることを望んでいる。

その理由は明確だ。
・既にOfficeのアカウントを持っている
・用途としてOfficeを使用しない
といったユーザーがかなりの数いるからだ。

マイクロソフトのSurface Goを投入する目的は、
既存の用途によって選ばれてきたSurface Proシリーズの小型モデルではない。

「Officeが使えるタブレットPC」
これを一般ユーザーにわかりやすい導線を作ることで、これまで獲得していなかった層にアピールすることなのだ。

つまり、
・PCリテラシーが高い消費者向けのSurface入門モデルではない
・Officeが使えるPCで、軽くて持ち運びが楽な10インチタブレット
・スマートフォンのような画面タッチでも操作ができる
・ペンでもWordに書けます
という入り口のSurfaceを確立し、販売していける。

これがSurface GOの最大の強みとなるのだ。

ただ、こうしたマイクロソフトの市場戦略は理解できるが、
Officeが付属しないモデルを販売が無いことには疑問もあり、こうした対応にも期待したいところではある

「Officeが付属しないモデル」が存在すれば、一般消費者が混乱する、
というマイクロソフトや店舗側の考えも理解できるが、
・最小構成のモデルはOffice付き
・通好みとも言える1つ上のSSD搭載のモデルはOfficeなしで、製品名を変更
など、対策があってもよかったのではないだろうか。


企業アカウントで利用する法人向けおよび教育機関向けにはOfficeは付属しない


今回のマイクロソフトの市場戦略で、
・10インチクラスのタブレットPCがどれだけ広がるのか?
・Officeなしモデルの追加販売はあるのか?

まずはマイクロソフトの手腕と、今後の動向について注目したいと思う。


執筆  mi2_303