鉄道や道路では、東京方面を「上り」とする場合が多いです。では、都心部を四方八方に走る東京の地下鉄の場合、「上り」はどちらになるのでしょう。東京メトロと東京都交通局に聞きました。

東京メトロに「上り」「下り」はない?

 鉄道や道路では、しばしば「上り」「下り」という表現が用いられます。たとえばJR東海道本線の場合、東京方面行きが「上り」です。

 東京方面が「上り」、東京から離れる方面が「下り」と思っている人は少なくないかもしれませんが、では東京都心部を縦横に走る地下鉄はどうなっているのでしょうか。なかでも、池袋〜東京〜新宿をぐるっとUの字でつなぎ、荻窪あるいは方南町へと走る丸ノ内線の「上り」は、分かりづらいように思います。東京メトロに聞きました。

--丸ノ内線の「上り」はどちらですか?

 丸ノ内線に「上り」「下り」はございません。東京メトロの路線ではすべて「A線」「B線」と呼んでいます。各路線には、起点になる駅と終点になる駅があり、起点から終点に向かうのが「A線」で、終点から起点に向かうのが「B線」です(編集部注:丸ノ内線の場合、池袋駅が起点になるため、荻窪/方南町方面行きがA線になる)。


丸ノ内線の場合、起点が池袋駅、終点が荻窪駅になる(2017年12月、恵知仁撮影)。

--起点がどこなのか、判断する方法はありますか?

 東京メトロでは基本的に、A線(起点→終点)のりばに、若いホーム番号を割り当てています。ただし半蔵門線だけは、並走する銀座線との整合をとるため、B線(終点→起点)のりばに、若いホーム番号を割り当てています。

--「上り」「下り」という呼び方をしていない理由はなんでしょうか?
 
 かつて東京の地下鉄が銀座線のみだったころは、渋谷行きを「上り」、浅草行きを「下り」と整理していました。ですが、丸ノ内線開通時に「『上り』は都心に向かう方向で『下り』は都心から離れていく方向と整理すると、丸ノ内線は都心(東京駅付近)を通過したあと、上り下りを逆にしなければおかしいのでは?」との声が内部で起き、呼び名を「A線」「B線」と変更することとなりました。

都営地下鉄の「上り」「下り」は?

 都営地下鉄を運営する東京都交通局にも聞いたところ、「上り」「下り」の表現は使用していないそうです。さらに話を聞きました。

--起点から終点に向かうことをどのように呼んでいるのでしょうか?

 お客さまに案内する時には、「馬喰横山方面」「新宿方面」のように、駅の名前を含めた呼び方をしていますが、内部的には、「東行(とうこう)」「西行(さいこう)」と呼ぶこともあります。たとえば、新宿線(編集部注:新宿〜本八幡間を走る路線)ですと、本八幡方面に向かうのが「東行」で、逆が「西行」です。

--「上り」「下り」という呼び方をしていない理由はなんでしょうか?

 営業が始まった当初から「上り」「下り」という表現は使われていなかったようです。電車が都心部を通過していく性質上、「上り」「下り」を判断しづらいからではないかと思います。

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 ちなみに都内地下鉄駅のナンバリングは、起点・終点には関係がないといいます。東京メトロによると、ナンバリングの数字は、各路線ごと、西もしくは南の方向にある駅から順番に割り当てているのだそうです。

【画像】都心部をU字状に走る丸ノ内線の路線図


赤い線が丸ノ内線。荻窪/方南町方面行きが「A線」、池袋方面行きが「B線」となる(画像:東京メトロ)。