運命のドラフト、12球団の補強ポイントを独自分析 果たして1位指名は?
清宮、安田、田嶋、中村…注目の1位候補
プロ野球界は10月26日に運命のドラフト会議が行われる。今年の注目は何と言っても、早実高の清宮幸太郎内野手だろう。高校通算111本塁打のスラッガーに何球団が競合し、一体どこが交渉権を獲得することになるのか。清宮のほかにも、広陵高・中村奨成捕手、履正社高・安田尚憲内野手、JR東日本・田嶋大樹投手といった競合の可能性のあるドラフト1位候補がいる。
ヤマハの鈴木博志投手や立命館大の東克樹投手といった評価の高い即戦力投手も1位候補に上がる。競合覚悟で清宮をはじめとする人気株に入札するのか、はたまた競合必至の清宮らを避けて、単独指名を狙うのか。各球団による駆け引き、腹の探り合いはドラフト当日まで続くことになるだろう。
そこで、ここでは各球団の補強ポイントがどこにあるのか、見ていきたい。
【セ・リーグ】
◯広島
1979年、80年以来、球団史上2度目の連覇を果たしたチームだけに穴は少ない。野手の主力はほとんどが20代で、しかも、空いているポジションは少ない。球団はすでに広陵・中村の1位指名を公表した。長らくチームを支えてきた石原が38歳となり、106試合に出場し、打率.275をマークした會澤に続く存在が求められている。昨年のドラフト4位の坂倉が1年目の今季ファームで結果を残しており、1軍でもデビュー。中村、坂倉を育てることができれば、向こう10年、15年、捕手への不安はなくなる。今季は薮田、岡田、大瀬良の3人が2桁勝利を挙げ、野村、九里、ジョンソンたちもいるが、投手はもう一段強化したいところ。中村を1位で取り、2位以下で即戦力の投手を獲得出来れば、理想的だろう。
◯阪神
ここまで清宮の1位指名を公言している。最大の補強ポイントは、チーム総得点で広島に約150点の差をつけられた打線の強化だろう。清宮指名もうなずける。今季のチーム状況としても、キャンベル、ロジャースという助っ人外国人が期待外れに終わり、一塁手が固まらなかった。昨年のドラ1の大山を外野や二塁などに回せば、1年目から清宮を起用することも可能だ。投手陣はセ・リーグトップの防御率3.29をマークしたが、これはリリーフ陣によるところが大きい。先発は12勝の秋山、11勝のメッセンジャーと2桁勝利が2人となっており、清宮を外した際には、先発型の即戦力投手へとシフトするのではないか。
◯DeNA
投打ともに若い選手がチームの中心に多く、年齢バランスとしては悪くない。主砲・筒香、首位打者の宮崎らを擁する野手陣に比べて手薄な感があるのは、投手陣だろう。今永、ルーキー濱口、助っ人のウィーランドと3人の2桁勝利投手がおり、守護神・山崎らリリーフ陣もそれなりの層はあるものの、優勝を狙うのであれば、もう1、2枚は即戦力投手を加えたいところ。一塁にはロペスがおり、清宮よりも、田嶋や鈴木といったところがチームの現状に照らし合わせれば、必要なところではないか。筒香のメジャー流出に備えて、清宮を推す声も聞こえるが、清宮から撤退し、即戦力投手の一本釣りを狙っても面白い。
松田、内川の後継者が求められるホークス
◯巨人
チーム防御率はリーグ2位の3.31。先発、リリーフともに投手陣はそれなりの戦力がある。マイコラス、マシソン、カミネロと外国人に頼ったところがあり、彼らが抜けた場合の不安は残るが、やはり弱いのは打線だろう。チームの中心は軒並み30歳を超え、明らかに高齢化が進んでいる。坂本に続く若い野手が全く育っていない現状にあり、スター性もある清宮を是が非でも獲得したいのではないか。一塁には阿部がいるが、来季で39歳になる。清宮はポスト阿部にうってつけだ。オフにベテランの村田を放出して若手への転換を模索。三塁が空き、安田という選択肢も出るが、期待されながら、伸び悩んでいる岡本をここで使いたいところ。
◯中日
投打ともに、層は薄いと言わざるを得ない。補強ポイントが山積しており、正直、1度のオフで全てを補うことは難しいのではないか。ただ、投手には大野、又吉といった主力がおり、小笠原、鈴木、笠原といった若手投手が徐々に成長してきている。となれば、やはり欲しいのは打者。ナゴヤドーム観客動員の落ち込みが激しく、営業面を考えても、観客の呼べる清宮が欲しいところだろう。現有戦力を考えると、来季の優勝を狙うというよりも、3年、5年後を見据えたドラフト戦略をとってもいいのではないだろうか。
◯ヤクルト
中日とともに投打ともに戦力の底上げは必要だ。ただ、野手は今季、山田が不振に陥り、また、畠山、川端、雄平といった主力どころに怪我人が相次いだところにも低迷の要因がある。それ以上に足りないのは投手。今季ローテを担った小川、星が右肘を疲労骨折し、オフに手術を受けた。先発候補はブキャナン、石川、原、山中、由規あたりだが手薄な感は否めない。本拠地・神宮のスターとして清宮が候補に挙がっているようだが、現実的に必要なのは野手よりも投手だろう。ウエーバー順はロッテに次ぐ2番目だけに、即戦力の2枚獲りも可能。その戦略も問われる。
【パ・リーグ】
◯ソフトバンク
今季94勝を挙げて独走Vを飾ったチームに大きな穴は見当たらない。チーム編成全体において補うべきところは、3年後、5年後にチームを背負って立つことが出来る野手となるだろう。遊撃に今宮がおり、二塁のレギュラー候補は豊富。捕手は甲斐が台頭し、栗原、九鬼という若手2人もいる。外野のレギュラーもみな20代である。となると、34歳の松田の三塁、35歳の内川の一塁の後継者が、いま最もチームに必要な人材である。王貞治球団会長の後輩にあたる早実・清宮のドラフト1位入札が濃厚だが、三塁手の履正社・安田も面白い存在。ここ数年の傾向同様に、将来性重視の高校生中心の指名となるだろう。
◯西武
ペナントレースで2位に入ったものの、CSファーストステージで楽天に敗れ、日本一の可能性が消滅した。パ・リーグナンバー1の攻撃力がある一方で、投手力が弱いと言わざるを得ない。ドラフトでは即戦力の投手を取りたいところ。エースの菊池が16勝を挙げているが、2桁勝利が11勝の野上と2人だけ。高橋光、多和田といった若い力はいるものの、どれだけ勝てるか未知数で、絶対的に先発投手の枚数が足りない。パ・リーグを制したソフトバンクとはそこに明らかな差があった。即戦力の先発投手を補っていきたいところで、田嶋や鈴木といった社会人投手が1位候補になるのではないか。
楽天、オリックス、日本ハム、ロッテは…
◯楽天
西武とは対照的に、補強するならば野手だろう。今季は夏場まで首位に立つなど躍進したが、長距離砲はウィーラー、ペゲーロ、アマダーの外国人頼みのところだった。茂木というチームの中心になれる若手はいるものの、日本人スラッガーをチームに加えたいところ。となれば、候補になるのは清宮、安田といったあたりではないか。投手は則本、岸、美馬がおり、昨季のドラフト1位・藤平や安楽といった若い力の成長に期待しつつ、2位以下で層を厚くしたい。
◯オリックス
打線は吉田正、T-岡田と日本人スラッガーもおり、ロメロ、マレーロの外国人も来季の残留が決まっている。打線の破壊力はそれなりにある一方で、2桁勝利の投手が金子千尋のみ。ルーキーの山岡が8勝と奮闘し、ディクソン、松葉、西とローテ投手はいるが、先発、リリーフともに投手の枚数が足りない印象は拭えない。守護神の平野のメジャー移籍の噂もあり、やはり、即戦力投手が1位候補になるだろう。チームに右投手が多く、左投手の田嶋が最もチームに加えたい素材か。ただ、楽天と同様に打線が外国人頼りなところがあり、小谷野、中島もベテランとなっているだけに、2位以下で野手も補っておきたいところ。
◯日本ハム
来季の編成が全く読めないのが日本ハムだ。メジャー移籍が噂される大谷をはじめ、FA権を持つ中田、増井、宮西、大野の去就が不透明なのだ。投手は2桁勝利、規定投球回到達が有原1人と寂しい状況。ただ加藤、高梨、上沢、上原、石川、掘と若手の人材は豊富。どちらかといえば、移籍が有力視されている大谷、中田が抜けた場合に、その穴をどう埋めるか。野手にも、急成長した松本や横尾といった有望株もいるが、チームの顔となる長距離砲を加えたい。となると、清宮、安田が候補か。清宮との面談で不参加となったことが報じられていたが、ドラフトは「その年1番いい選手を取る」が基本方針だけに、単純に撤退したとは受け取れない。
◯ロッテ
とにかく今季は貧打に喘ぎ、苦しんだシーズンだった。開幕からチーム打率が1割台に沈み、外国人補強も不発。シーズン途中に獲得したペーニャが来季も残留する方向だが、明らかに破壊力に乏しい。若い野手はいるものの、大砲がいない。そこが最大の補強ポイントで、1位指名の候補は清宮、安田になるだろう。投手は涌井はFAによるメジャー移籍の可能性があるが、石川、二木、唐川、ルーキーの佐々木と酒居と人材はいるだけに、まずは野手を補いたい。ウエーバー順で真っ先に指名出来る2位以下で大学生、社会人の即戦力投手を揃えたい。 (福谷佑介 / Yusuke Fukutani)