「ニワトリ肉」不正でわかった国産鶏が高値の意外な理由
日本にも大量に輸入されているブラジル産の食肉で不正問題が起きた。ブラジルの大手食肉加工業者が検査官らに賄賂をおくり、本来なら廃棄処分となるはずの肉を国内外に販売していたのだ。
日本は大量の鶏肉をブラジルから安価に輸入している。その理由は「ブラジルには鳥インフルエンザがなく、安全性が高い」からだ。また、抗生物質を含んだ飼料に対する規制が日本より厳しいEUにも輸出されていたことから「ブラジルの鶏肉はきちんと管理されている」と思われてきた。
農林水産省の品目別貿易実績によると、2015年に輸入された鶏肉(調理品を除く)は約53万トン。そのうち41万トンがブラジル産だ。事件を受け、日本政府は3月21日に当該施設から出荷された鶏肉の輸入を禁止、現在も再開のめどはたっていない。
安くて安全性が高いとされたブラジル産の鶏肉は、外食産業には欠かせない食材だった。しかし、なぜ日本の鶏肉より地球の反対側からやってくるブラジル産のほうが安価になるのだろうか?
日本で鶏肉がポピュラーな食材となったのは、実は戦後以降になる。アメリカで始まったブロイラーの大量飼育の技術が定着したのがきっかけだ。それまで鶏肉は高級食材として扱われ、牛肉より高い値段がついていた。
庶民に手が届く食材になった鶏肉だが「エサ代が高い」「養鶏場の建設コストが高い」などの理由で、世界的な規模で考えると価格は高止まりしている。
日本では、現在、養鶏の約9割が輸入飼料に頼らざるをえない状況が続いている。その飼料用穀物もバイオ燃料が注目を集めると同時に価格が高騰し、エサ代は養鶏業者の大きな負担となっているのだ。
国産鶏肉の値段が下がらない理由のひとつに、日本人の「もも肉好き」もあげられる。日本では「柔らかくてジューシー」という理由で、もも肉だけがもてはやされている。一方でむね肉は「パサパサ」「味が淡白」という理由から敬遠されがちだ。
実際は、むね肉のほうが旨み成分と呼ばれる「イノシン酸」が多く、疲労回復に効くとされる「イミダペプチド」も豊富で、カロリーも少ない。
ヨーロッパなど、世界的に見ればむね肉のほうが人気だが、日本だけはなぜか例外的にもも肉ばかり食べている。消費の割合はもも肉8割、むね肉2割ともいわれている。
むね肉の消費が進めば、鶏肉の生産コストも下げられるといわれる。安全安心でリーズナブルな国産鶏肉を手に入れるためには、積極的にむね肉を食べるのがいいのかも。