おしっこがスッキリ出なかったような…。尿が出にくい原因

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執筆:井上 愛子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


健康な時には、あまり意識することのない尿。

しかし、身体にとって不要になったものを外に出したり、身体の水分量を調節するなど、とても大切な働きをしています。

そんな尿が出にくい、というトラブルがある時には、どのような原因が考えられるのでしょうか。

尿はどのように作られる?

普段、私たちの身体では、どれくらいの尿が作られているかご存知ですか?

個人差があり、1日に摂った水分の量や汗の量にも左右されますが、健康な成人の1日の尿量はおよそ1500〜2000ml程度です。

作っているのは腰のあたりに左右1つずつある腎臓で、流れてきた血液から身体にとって必要なものを回収し、その残りが尿となります。

尿は膀胱に貯められ、尿道を通って排泄される仕組みになっています。

膀胱の容量は300〜500ml程度ありますが、200〜300ml尿が溜まると、「トイレに行きたい」という尿意を感じるようになります。

尿は健康のバロメーター

こうして作られている尿は、身体の健康状態を確認するための大切なバロメーターです。

たとえば、色が普段と違っていたり、血が混じっていたりする場合は、腎臓や膀胱に何か異変が起きているかもしれません。

また、残尿感が続いたり、夜のトイレが近く頻繁に起きてしまう、ということが続くと、安心して普段の生活を送れなくなってしまいます。

さらに、これらと同じくらい注意したいのは、1日の尿量や尿のでにくさです。

排尿に何らかのトラブルがある状態はひとまとめにすると「排尿障害(はいにょうしょうがい)」と呼ばれ、これにはさまざまな原因が考えられますが、今回は特に「尿がでにくい」場合の考えられる原因をご説明しましょう。

尿が出にくい原因の3タイプ

腎臓で作られた尿は膀胱に溜まり、尿道を通って排泄される、と説明しました。

この一連の流れのどこに異常が起こるかによって、尿がでにくい原因は3つのタイプに分類することができます。

腎前性の原因(尿が腎臓で作られる前の段階に問題がある場合)

腎臓は正常に働いていても、そこに流れてくる血液の量が極端に少ないなど、手前の段階で問題が生じると、作られる尿の量が減り、尿がでにくい、またはでない、といった状態になってしまいます。

たとえば水分をほとんど摂ることができていなかったり、下痢・嘔吐などで脱水に陥っている場合が挙げられます。

また全身に血液を送る心臓の異常や、ケガによる多量出血など、血液の流れ自体に問題が起こっている場合も腎前性の原因に含まれます。

腎性の原因(腎臓そのものに問題がある場合)

腎炎や腎臓に水が溜まり腫れる「水腎症」、「ネフローゼ症候群」など、腎臓の病気が原因で、尿が正常に作られない場合があります。

とくに腎臓は一度ダメージを受けると、元の状態に戻ることが容易ではありません。

腎臓の機能が低下してしまう腎不全の中にも急性のものと慢性のものがあります。中でもとくに慢性腎不全は、進行がゆっくりでありながら、最終的には腎臓の働きが低下し透析が必要な状態になり得る恐ろしい病気です。

このような腎不全の症状の1つに、尿の量が減り、尿が出にくくなってしまうことがあります。

腎後性の原因(腎臓で尿が作られた後、排泄されるまでのどこかに問題がある場合)

尿路結石や腫瘍などによって、尿の通り道になんらかの異常が生じると、尿がでにくくなります。

また、男性の場合は、年齢とともに前立腺肥大症によって尿道が圧迫され、尿が出づらくなる悩みも多くの人が抱えています。

尿が出にくい時には、専門家に相談を

お伝えしてきたように、尿が出にくい、という症状の背景には、さまざまな原因が考えられます。

尿の出にくさは、日々生活する中で不快感を伴うだけでなく、何か身体に異常が現れているサインかもしれません。

なんだかいつもと違う、ということに気がついた時は我慢せず、泌尿器科などを受診し、専門の医師に相談してみましょう。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供