卒アル写真が笑顔じゃない人は離婚しやすい?

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 「人間、外見より中身」なんて言うけれど、それは本当でしょうか?もしかしたら、私たちが考えている以上に、「外見」はものを言っているかもしれません。

 『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』(マシュー・ハーテンステイン/著、森嶋マリ/訳、文藝春秋/刊)は、カリフォルニア大学バークリー校出身の心理学者である著者(現・米デポー大学准教授)が書いた、「未来を知るための心理学」です。
 といっても、この本を読んで予知能力が身につくわけではありません。しかし、本書が、表情や身振り外見の差異がどのように人間関係に影響を及ぼしているのか観察する重要な手助けになるということは、間違いありません。

 本書のタイトルにもなっている「卒アル写真で将来はわかる」の章から、いくつかの実験結果を紹介します。
 写真の中で自然な明るい笑みを浮かべている人は、頬の筋肉が持ち上がるだけでなく、目元にもしわが寄っています。それに対して、作り笑いをしている人は目の周りの筋肉が動いていません。その違いを見ながら、写真の表情を検証していくと面白いことが分かったといいます。

■卒アルから結婚生活が予想できる!?
 ハーテンステイン氏は、若い頃から将来を予測できるかどうかを調べるため、卒業アルバムを使うことにしました。
 まず20代から80代まで650人以上の大学時代の卒アル写真を集め、口角の上がり具合などから、笑顔の度合いを点数化し、そして、彼らの結婚生活がどうなっているのか調査したのです。

 すると、卒アルの写真で満面の笑みを浮かべていた人と比べて、さほど笑っていなかった人の離婚率が5倍にのぼることが分かりました。つまり、卒アルで満面の笑みを浮かべているか、あまり笑っていないかで、離婚の可能性を予測できるという調査結果が出たというのです。

■野球選手の寿命を分けたのは?
 ハーテンステイン氏のより最近の実験では、1950年代初頭に活躍した野球選手の写真を3つに分類する、というものがあります。
 満面の笑みを浮かべている選手と、微笑んでいる選手、全く笑っていない選手の写真に分け、それぞれについて調査したところ、本物の笑みを浮かべている選手は平均して80歳ほどの長生きをしていました。それに対し、かすかに笑っている選手の平均寿命は75歳、全く笑っていない選手は73歳だったそうです。
 例えば、2013年当時、まぶしい笑顔の殿堂入り野球選手ウィリー・メイズが82歳で健在だったのに対し、同じく殿堂入りしたエディ・マシューズは、笑顔をほとんど見せない選手でしたが、2001年2月に69歳でこの世を去っています。
 いずれも1931年生まれの名選手。真の笑みは寿命を5年から10年ほど延ばす力があるのかもしれません。

■卒アル写真で将来が予想できるの?
 写真撮影の一瞬に表れた感情で、どうしてその人の数十年後の人生を予測できるのでしょうか?
 写真で笑っている人はカメラマンの「チーズ!」という言葉に素直に応じているだけかもしれません。もしかしたら、その素直さが家庭円満や寿命の長さに結びついている可能性もあるでしょう。
とはいえ、著者が言う“もっとも信憑性のある解釈”は、写真の中で笑っている人たちは、より前向きに感情をコントロールできて、より幅広い社会や人とつながりを持っている、というものです。
 思いもしない出来事に直面したとき、前向きで、多くの人に助けてもらえる人は、幸せな人生を送れるということでしょう。

 自分の昔の卒アルを引っ張り出して、自分がどんな表情で写っているか確かめたくてしかたなくなっているのではないでしょうか? または、Facebookの写真を見ながら自分がちゃんと笑っているかチェックしたくなっているかもしれませんね。
 本書では、日常の様々な場面において、本質とは関係のないような外見の微妙な差異がどう影響しているのか、豊富な例を用いて紹介しています。もちろん、ハーテンステイン氏の研究結果は、誰にでも当てはまるというわけではないでしょう。それでも、とても興味深いことが書かれている一冊です。
(新刊JP編集部)