SNS時代のメールサービス「Inbox by Gmail」でメールが復活する?—メールとのつきあい方が変わる—
Googleから10月にリリースされた新しいメールサービス「Inbox by Gmail」、もうお使いだろうか。Gmailやほかのサービスと同様に招待制で始まっており、まだInvateメール(招待)待ちという人もいるかも? 筆者はリリース時にすぐGmailに申請したこともあり、幸い1週間でInvateメールを受け取ることができた。すぐにiPhoneでアプリをダウンロードし、Gmailと併用で使い始めた。
このサービス、アカウント自体はGmailアカウントをそのまま使う。では従来のGmailと同じかというと、全然異なるコンセプトのもと、異なる機能が提供される。
想定されているのは、従来の「受信トレイですべてのメールを受けて、メールをラベルで仕分けしたり、アーカイブする」という使い方ではない。
受信トレイはどうでもよくて、Inboxは一口でいうと、「とにかくメールを受信」し「そのメール1件1件に自分がどう向き合うか」がつきつけられるサービスだ。具体的にどういうことかを説明しよう。
◎このメールは後回し、だけど忘れない!
これがInboxの紹介記事でよく言われる「TO DO」的な要素だ。たとえば、移動中に重要なメールを確認し、会社に戻り次第、きちんと返信のメールを書こうと思っても、会社に着くと雑事に紛れて失念してしまったりすることがあるだろう。
過去、受信プロトコルとして一般的だったPOPは、基本的にメールを受信するとメールはサーバから削除された。受信したメールはローカルのPCで管理するものだったからだ。
そのため、移動中にモバイルデバイスで受信してしまうと、会社のPC上では、重要だったそのメールが受信できないといった事態になることがあった。もちろん多くの人がメーラーの「サーバにコピーを残す」機能を使って、いずれのデバイスでも受信できるようにはしていたが、手動による、そうした設定が必要だったのだ。
次に登場したIMAPプロトコルは、メールをサーバで管理することが前提となったので、POPのときのような「コピーを残す」機能が不要となった。さまざまなデバイスから自由にアクセスしても、常にメールが同じ状態でチェックできるようになった。特別な設定をしなくても、どのデバイスで同じようにメールを確認することができるようになったのだ。もちろん読んだメールは既読になるが、メーラーによっては未読にすることもできる。うっかり既読にしてしまって「済んだ気になること」は、そうして防いでいた。
さて、ここまで便利になったメールシステムだが、「読んだメールの処理を後にする」ことは、相変わらずできなかった。そのため、返事が必要なメールに対しては、とりあえず空の返信メールの下書きを保存しておき、順に、空の返信用の下書きを処理していく、という涙ぐましい努力をする羽目になることも多々あった。
ところがInboxでは、重要なメールには重要とわかるように「Pin」を付けたり、「snooze」機能で指定した日時に再度表示することができるのだ。これこそ、大事なメールの処理を忘れないために欲しかった機能だ。ただ、このsnooze機能で指定できる日時は現状ちょっと大雑把だ。もう少し柔軟に日時が指定できるともっと便利になるのに……とは思う。
そこは、今後の改善に期待したい。
◎必要なメールだけ通知してくれる
筆者が一番ぐっと来ているのがここ。
Inboxでは、デフォルトでメールがいくつかのラベルに仕分けされる。そしてiOSのノーティフィケーション(通知)を使って、特に個人的な設定をせずとも、その状態できっちり「読む必要のあるメール」のみ、通知してくれるのだ。すべてのメールの受信をそのつど通知されると、それはうっとうしくてたまらないけど、「必要なメールだけ」という、この仕様はサービスを使い続けたくさせる部分だ。
複数メールアドレスを使い分けていなければ、オンラインショップのお知らせや友人からのメール、仕事のメールというように、メールボックスはいつのまにか雑多なメールであふれてしまう。あるいは、複数メールアドレスに分けても、長く使い続けると同じようになっていしまうこともある。メールの管理を完璧にこなすなんて、そうそうできないもの……。
そんな人にはうれしい、このInboxの仕分け機能なのだ。iPhoneでノーティフィケーションすることで、すぐにメールを確認することができる。この気の効いた便利さ、ずぼらな自分でも、これならメールを使い続けることができると思える。
もちろんInboxにも弱点ある。メールボックス全体を見渡すことはちょっと難しい。読むべきメールがもれてしまっているのかもしれないという危惧もある。そのため、Gmailアプリも併用しているのだが、いまのところ、そうした事故はない(ただ、どうしても不安な場合はGmailアプリでメールボックスをフォローしておくとよいだろう)。
◎Inboxはメール離れを止められるか?
これまでメールは「自ら確認にいくもの」だった。それがSNSが流行する昨今には合わなくなっており、メール離れが進んでいたように思う。Inboxは、そのあたりの使用感をSNSの通知(「いいね!」やリツイート、返信、メッセージの受信であったり)に合わせてきたのではないか。
ここ最近、仕事の連絡をTwitterのDMやFacebookグループのコメントやチャットで進めることが多くなった。理由は「ダイレクトに相手に届く」ことであったり、やりとりが残るアーカイブ性だったりする。もちろんダイレクトといえば、メールも相手にダイレクトに届くわけだが、届いたとしても相手がメールをチェックするまで待つ必要があった。一方iPhoneなどのノーティフィケーションを利用するSNSアプリでは、もっとリアルタイムに近い感覚で、ダイレクトに自分のメッセージを相手に伝えてくれる。そこが、仕事用途においても急速に受け入れられた要因だったといえる。
そこに、今回のSNS的なInboxの登場だ。これにより、メールが仕事用ツールとして見直されていくのではないかと考える。ダイレクトに、迅速に通知することさえできれば、メールのほうが長い文章を使って意志を伝えることができる。
ただ、他の重要度の低い(とされる)メールなどはこれまで以上にユーザーの目に触れる機会が激変してくると思われる。たとえば、メルマガを情報発信のツールのメインとしている企業にとっては死活問題になる可能性もあり、何らかの対処が必要になってくるかもしれない。
Googleでは、11/6にInbox招待プログラムを拡大した「ハッピーアワー」を提供するなど、段階的に使用枠を拡大している。
大内孝子
このサービス、アカウント自体はGmailアカウントをそのまま使う。では従来のGmailと同じかというと、全然異なるコンセプトのもと、異なる機能が提供される。
想定されているのは、従来の「受信トレイですべてのメールを受けて、メールをラベルで仕分けしたり、アーカイブする」という使い方ではない。
受信トレイはどうでもよくて、Inboxは一口でいうと、「とにかくメールを受信」し「そのメール1件1件に自分がどう向き合うか」がつきつけられるサービスだ。具体的にどういうことかを説明しよう。
◎このメールは後回し、だけど忘れない!
これがInboxの紹介記事でよく言われる「TO DO」的な要素だ。たとえば、移動中に重要なメールを確認し、会社に戻り次第、きちんと返信のメールを書こうと思っても、会社に着くと雑事に紛れて失念してしまったりすることがあるだろう。
過去、受信プロトコルとして一般的だったPOPは、基本的にメールを受信するとメールはサーバから削除された。受信したメールはローカルのPCで管理するものだったからだ。
そのため、移動中にモバイルデバイスで受信してしまうと、会社のPC上では、重要だったそのメールが受信できないといった事態になることがあった。もちろん多くの人がメーラーの「サーバにコピーを残す」機能を使って、いずれのデバイスでも受信できるようにはしていたが、手動による、そうした設定が必要だったのだ。
次に登場したIMAPプロトコルは、メールをサーバで管理することが前提となったので、POPのときのような「コピーを残す」機能が不要となった。さまざまなデバイスから自由にアクセスしても、常にメールが同じ状態でチェックできるようになった。特別な設定をしなくても、どのデバイスで同じようにメールを確認することができるようになったのだ。もちろん読んだメールは既読になるが、メーラーによっては未読にすることもできる。うっかり既読にしてしまって「済んだ気になること」は、そうして防いでいた。
さて、ここまで便利になったメールシステムだが、「読んだメールの処理を後にする」ことは、相変わらずできなかった。そのため、返事が必要なメールに対しては、とりあえず空の返信メールの下書きを保存しておき、順に、空の返信用の下書きを処理していく、という涙ぐましい努力をする羽目になることも多々あった。
ところがInboxでは、重要なメールには重要とわかるように「Pin」を付けたり、「snooze」機能で指定した日時に再度表示することができるのだ。これこそ、大事なメールの処理を忘れないために欲しかった機能だ。ただ、このsnooze機能で指定できる日時は現状ちょっと大雑把だ。もう少し柔軟に日時が指定できるともっと便利になるのに……とは思う。
そこは、今後の改善に期待したい。
◎必要なメールだけ通知してくれる
筆者が一番ぐっと来ているのがここ。
Inboxでは、デフォルトでメールがいくつかのラベルに仕分けされる。そしてiOSのノーティフィケーション(通知)を使って、特に個人的な設定をせずとも、その状態できっちり「読む必要のあるメール」のみ、通知してくれるのだ。すべてのメールの受信をそのつど通知されると、それはうっとうしくてたまらないけど、「必要なメールだけ」という、この仕様はサービスを使い続けたくさせる部分だ。
複数メールアドレスを使い分けていなければ、オンラインショップのお知らせや友人からのメール、仕事のメールというように、メールボックスはいつのまにか雑多なメールであふれてしまう。あるいは、複数メールアドレスに分けても、長く使い続けると同じようになっていしまうこともある。メールの管理を完璧にこなすなんて、そうそうできないもの……。
そんな人にはうれしい、このInboxの仕分け機能なのだ。iPhoneでノーティフィケーションすることで、すぐにメールを確認することができる。この気の効いた便利さ、ずぼらな自分でも、これならメールを使い続けることができると思える。
もちろんInboxにも弱点ある。メールボックス全体を見渡すことはちょっと難しい。読むべきメールがもれてしまっているのかもしれないという危惧もある。そのため、Gmailアプリも併用しているのだが、いまのところ、そうした事故はない(ただ、どうしても不安な場合はGmailアプリでメールボックスをフォローしておくとよいだろう)。
◎Inboxはメール離れを止められるか?
これまでメールは「自ら確認にいくもの」だった。それがSNSが流行する昨今には合わなくなっており、メール離れが進んでいたように思う。Inboxは、そのあたりの使用感をSNSの通知(「いいね!」やリツイート、返信、メッセージの受信であったり)に合わせてきたのではないか。
ここ最近、仕事の連絡をTwitterのDMやFacebookグループのコメントやチャットで進めることが多くなった。理由は「ダイレクトに相手に届く」ことであったり、やりとりが残るアーカイブ性だったりする。もちろんダイレクトといえば、メールも相手にダイレクトに届くわけだが、届いたとしても相手がメールをチェックするまで待つ必要があった。一方iPhoneなどのノーティフィケーションを利用するSNSアプリでは、もっとリアルタイムに近い感覚で、ダイレクトに自分のメッセージを相手に伝えてくれる。そこが、仕事用途においても急速に受け入れられた要因だったといえる。
そこに、今回のSNS的なInboxの登場だ。これにより、メールが仕事用ツールとして見直されていくのではないかと考える。ダイレクトに、迅速に通知することさえできれば、メールのほうが長い文章を使って意志を伝えることができる。
ただ、他の重要度の低い(とされる)メールなどはこれまで以上にユーザーの目に触れる機会が激変してくると思われる。たとえば、メルマガを情報発信のツールのメインとしている企業にとっては死活問題になる可能性もあり、何らかの対処が必要になってくるかもしれない。
Googleでは、11/6にInbox招待プログラムを拡大した「ハッピーアワー」を提供するなど、段階的に使用枠を拡大している。
大内孝子