”消費者の生活に溶け込む広告”。「アンビエント広告×動画」の好事例4選

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アンビエント広告とは?

「アンビエント」(ambient)とは日本語で「周辺の」や「環境の」を意味する言葉です。アンビエント広告とは、この言葉の通りに「環境になじんでいる広告」を指し、広告媒体として認識されていないモノの機能をそのままに、メディアとして活用している広告になります。また、従来の媒体でも、その使い方が斬新な場合もアンビエント広告として扱われることもあります。

まずは、アンビエント広告の事例を2つ、画像でご紹介します。1つ目は公園のベンチをキットカットに見立てたアンビエント広告です。茶色のベンチにキットカットが馴染んでおり、ベンチ本来の機能性を失わずに商品のPRをしています。


画像元:http://adsoftheworld.com/media/ambient/kit_kat_bench

2つ目は、歯科用インプラント治療の保険広告。ボーリングのピンを歯に見立てたインパクトの強いアンビエント広告になっています。


画像元:http://www.boredpanda.com/creative-ambient-ads-part-2/

このように普段生活の中で利用しているベンチやエスカレーター、遊具などをメディアとして活用していることが特徴です。今回はその中でも動画を使用し、さらにリッチな体験を実現している事例をご紹介いたします。

ウォーカーズ:自販機の男性にツイートしてお菓子をゲット!

キャンペーン概要

イギリスの菓子メーカーWalkers(ウォーカーズ)が行った、新フレーバー菓子の試食キャンペーン『TWEET TO EAT』。バス停に設置してある自動販売機を使用し、バスを待っているお客さんにツイートを促します。

バス停のデジタルサイネージに写された男性。その男性は元サッカー選手のゲーリー・リネカー氏です。驚きの表情でリネカー氏の様子を見つめる人々をよそに、挨拶をしたり、本を読んだり、サンドイッチを食べたりと自由にふるまうリネカー氏はまるで本当にそこにいるかのようにリアルです。

そんな男性が「ツイートしてくれたら無料のスナック菓子をあげるよ」とメッセージカードを出し、バス停の人々にツイートを促します。

街でのサンプリング配布はよく見られますが、このようなインタラクティブ性をもったサンプリング配布は大変珍しく、インパクトを与えており、ツイートをしなくとも人々を楽しませる仕掛けとなっています。バス停という普段は何もない空間だからこそ、ジョークの効いた仕掛けがより、人々に楽しさと驚きを与えています。

LG:恐怖のエレベーターで最高峰の画質をアピール

キャンペーン概要

舞台はエレベーター。人々がいつも利用するエレベーターに乗り込むと、なんと床が次々と抜けていきます。その様子に人々は恐怖に震え・・・。しかしこの床、実はLG社が予め設置したディスプレイだったのです。

「滑らかな動画再生」と「鮮明な画質を実証する美しい画質」ということをアピールするために制作されたこの動画。乗客たちのリアクションから「床が抜けたことを本当に信じてしまうほどの画質の良さ」を証明できたのではないでしょうか。この動画は現在2千万回も再生されています。

普段、何気なく利用しているエレベーターだからこそ、”ドッキリ”が成功し、被験者の素直な反応が見れたのではないでしょうか。

フォルクスワーゲン: 運転中の注意を促す類似体験を使ったキャンペーン

キャンペーン概要

映画館の来館者に向けて、自動車メーカーのフォルクスワーゲンが行った啓蒙キャンペーン。携帯電話の使用による交通事故を防ぐために、類似体験を通して注意喚起を行いました。

舞台は香港の映画館。定刻になると館内の照明が落とされ、スクリーンには車内の映像が映し出されています。「あー、車のコマーシャルね」という感じで前方を見つめる観客たち。

すると突然、観客たちの携帯電話が一斉に鳴り始め、誰もが自分の携帯電話に目を落とします。・・・その瞬間、急ブレーキの音が!

呆然とする人々への前に流れるメッセージ。「交通死亡事故原因で一番多いのは、運転中の携帯電話使用です。運転中はよそ見をしないように注意してください」

アンビエント広告でも”従来の媒体を斬新な形で使用した”事例です。映画館という巨大スクリーンと自分の携帯電話との連動によって深い疑似体験を観客に提供しています。

小学館:日本初!駅のホームに仕掛けられたアンビエント広告

キャンペーン概要

女性ファッション雑誌「CanCam(キャンキャン)」が7月号の発売に合わせて行ったキャンペーン。駅のホームに設置されたデジタルサイネージスペースにはモデルさんの同じ映像が映し出されていますが、全部静止しています。実はこの映像、あるものと連動して動くのです。

都営大江戸線六本木駅のホーム構内。モデルさんがデジタルサイネージに映しだされています。電車がホームに到着すると同時に吹く風に連動して、モデルさんの髪や衣服がなびくという仕掛けになっています。

”電車と連動する広告は日本初”ということで、非常に話題になった企画です。駅でのデジタルサイネージ利用も増えてきた中「数ある広告」に埋もれないための斬新な広告だったと言えるでしょう。

アンビエント広告を採用するメリット

アンビエント広告のメリットは「消費者の生活に溶け込み、普段目にしているモノ」が広告メディアとなるため、消費者に受け入れられやすい点です。逆に「普段目にしているモノ」が斬新な形で広告となっていることで、消費者に驚きも提供することができます。

広告を制作する側にとっても、「どうすれば生活に溶け込む広告となるか」「従来にない発想でPRできるか」と、従来のフォーマットにとらわれることなく企画を考えるため、クリエティビティに富んだ広告が生まれやすいのではないでしょうか。
さらに、斬新で面白い広告であれば、口コミやソーシャルメディアでの拡散や、各種メディアにも取り上げられやすくなり、結果的に広告の費用対効果の大幅な向上も期待できます。

また、今回の事例でご紹介したように、アンビエント広告に動画を取り入れることで、インタラクティブ性を付与したり、他のメディアと連動させることが可能となり、よりインパクトのある体験を消費者に提供することができます。「アンビエント広告×動画」の組み合わせには、無限大の可能性がありそうです。