子どもの未来を潰す「毒親」とは?

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 いつでも子どものことを考えて、愛情を注ぐのが親というもの。しかし、中には暴力や虐待、過剰な干渉などによって、子どもを自分の支配下に置こうとする、ひどい親もいます。
 『毒親からの完全解放―本当の自分を取り戻して幸せになる7つのステップ』(アチーブメント出版/刊)の著者、影宮竜也(かげみや・たつや)さんも、こんな「子どもを支配しようとする親(毒親)」に育てられた一人。
 現在は毒親カウンセラーとして、毒親のもとで育った人(毒親育ち)たちの自立のサポートをしている影宮さんですが、一体どのように「毒親」の問題を解決したのでしょうか。「毒親」の特徴や行動の傾向とあわせてお話をうかがいました。

―『毒親からの完全解放 (本当の自分を取り戻して幸せになる7つのステップ)』についてお話をうかがえればと思います。これまでにも、子どもを自分の支配下に置こうとする「毒親」を取り上げる本はありましたが、女性目線で女性を対象に書かれたものが多かったように思います。でも、「毒親」に育てられた人は男女問わずいるわけですよね?

影宮:そうですね。ただ、男性の方が表に出にくいというのはあります。だから、今回の本では毒親に苦しめられている全ての人を対象にしています。

―また、これまでの「毒親」に関する本は、「こんなにひどい親がいる」という事例を挙げるのが主でしたが、この本ではそういった親との間の問題の解決法にまで踏み込んでいますね。

影宮:私自身も「毒親」に苦しめられてきましたのですが、親との関係で参考になる本がありませんでした。本当に親との関係に苦しんでいる人は、問題を解決したいわけですから、事例だけ挙げた本では不十分だと思ったんです。

―本書を読んで気になったのが「毒親」のメンタルについてです。彼らは自分の子育てがまちがっているとは思わないのでしょうか。

影宮:正しいともまちがっているとも思っていないでしょうね。子育てにはマニュアルがないので、自分が育てられたように子どもを育てるんです。
だから、両親のネグレクトによって育った子は、自分の子どもに対してもネグレクトで育てるか、反対に過干渉になってしまうかどちらかです。関わり方が極端になるんですね。

―親であれば、「自分の子育ては正しいのか?」という不安から他の親に相談することもあるかと思いますが、「毒親」はそういったことはしないのでしょうか。

影宮:悩むことがないんですよ。自分の行動に問題があると思っていないので、自分を顧みることがないんです。社会的ステータスがある家だとよりこの傾向は強いですね。

―だとしたら、親は自分が「毒親」だと気付かないまま子育てを続けることになってしまいます。

影宮:「過干渉」などは特に自覚しにくいですね。過干渉の親は、傍から見ると「愛情深い親」に見えますし、子どもの方も「愛情を受けて育った」と思いがちですから。
でも、過干渉で育てられた人は、大人になっても自分で何も決断できないことが多いんです。また、親離れしていませんから、結婚しても常に実家を頼ってしまったり、反対に実家の意見が家庭に入ってきたりして、夫婦間のトラブルになりやすい。

―本書には、さまざまな「毒親」のタイプが明かされていますが、基本的なところで「毒親」に育てられた子どもはどんな大人になってしまうのでしょうか。

影宮:「毒親」に育てられた人の特徴としてコミュニケーション力が低い人が多いというのはありますね。他者との付き合い方というか距離感がわからないという。引っ込み思案になるか、ものすごく押し付けがましい人になるかという両極端に分かれます。
人は親が自分に接したように他者に接しますから、高圧的に押さえつけられて育った人は、職場でも高圧的だったり、反対に押さえつけられるのが怖くて意見を発表できなかったりするわけです。
こればかりは、自分ではなかなか変えることができません。

―子どもの側は、自分の親が「毒親」だということに気づかないのですか?「うちの親、何だかおかしいな」というように。

影宮:子どもからしたら、「自分の親は普通じゃないな」と気付いているんですよ。でも生まれてからずっと育ってきた家庭で、他を知らないわけですからどこがおかしいのかわからない。
それに、親の自分に対する態度や行動について「嫌だな」と思ったとしても、それをどう解決すればいいかも子どもはわからないから、息苦しさはずっとあるわけです。他人だったら縁を切ってしまえばそれで済む問題でも、相手が親ではそうもいきませんから、「嫌だけどほどほどの関係で付き合っていこう」という方が大半ですね。

―「サイコパス型の毒親」の箇所は、一般的な親のイメージとあまりにもかけ離れていて衝撃的でした。こういった親の見極め方としてはどのようなものがありますか?

影宮:まず言えることは、自分が望んでいるのと違う行動を子どもが取った時は、徹底的に、それこそあらゆる方法を使って潰しにきます。
普通なら、子どもの行動がどうしても意に沿わないのであれば、「そこまで言うなら」ということでそれ以上は関わらないでしょう。でも「サイコパス型」の親は、どんな手を使ってでも子どもを自分に従わせようとします。

―それは、暴力などによってですか?

影宮:肉体的な暴力は子どもが大きくなってくると通用しなくなりますから、精神的に陥れる方法を取ることが多いです。
私の母がまさに「サイコパス型」傾向にある親だったのですが、裏で私を悪い人間に仕立て上げて、親族から孤立させようとしました。「自分は酷い息子を持ってかわいそうな人間だ」ということを親族一人ひとりに言っていくわけです。

―子どもからしたらたまったものではありませんね。

影宮:こちらは親がそういうことをするとは思いませんから無防備なんです。自分の目的を邪魔する人間は自分の子どもであろうと許さないというのは、「サイコパス型」の親の特徴としてあります。
(後編につづく)