■ 私が出会った 上司列伝 第2回■ /戸井 雄一朗
〜 無名のおっさん達から学んだ人生〜
第2回:天性のポジティブ思考リーダー 広原邦光
さて第2回は、ひとことでいうと「おもろいオッサン」広原邦光氏の紹介。
私が新入社員で入社した時点では、オーストラリア支社で部長をされていたので、オーストラリアから東京に電話がかかってきた際に、私が電話に出て取り次ぐだけの接点しかなかった。
広原 「○○○ いる??」
戸井 「少々お待ちください・・・」
これだけのやり取り。
しかし、その大きな声と東北なまりのイントネーションはインパクト抜群。
「なんか、豪快ですごそうな人だ・・・」
と、会ったこともないのに、なんとなくマサカリを持った金太郎のような人と、
勝手にイメージを膨らませていた。
実際にお会いしたのは、私がオーストラリアに出張に行った時だ。
「やっぱり・・・」
想像通りの豪傑だ。体こそ大きくないが、そのエネルギーは
それこそ熊と相撲でもとれそうだ。
よく食べ、よく飲み、よく歌い、よく笑う。
もちろんよく働いてもいるのだろうが、あまりに毎日が楽しそうで、
働いているように見えない(ごめんなさい)。
一緒に居ると本当に楽しい人だ。居るだけでその場が明るくなる。
オーストラリアではよくカラオケスナックに連れて行ってもらった。
そんな彼の周りには国内外を問わず多くの人が集まり、その人脈は相当なものだった。
ある役員クラスの方も「あいつは図々しいけど、明るいから好きやねん」と言っていた。
偉い人にずけずけ物を言うわりに好かれるところは
ちょっと、男はつらいよの寅さんみたいだ。
そんな広原さんが帰国し、第1回目で紹介した大石さんの後に私の所属部署の部長となった。
私からすると、厳しい厳格な父親が変わり、突然遊び人の父親が現れたようなもので面食らった。
しかし、このギャップが私の社会人としての礎をさらに広げてくれた。
なぜこの人がそれほど重要かと言うと、自分とは正反対の人間性、思考回路を持っているからだ。
とりわけそのポジティブな思考は、生来ネガティブになりがちな私に大きな影響を与えた。
そもそもポジティブシンキングとは何か?
Thinking というからには考えるのだ。
何も考えずに「どうにかなるや」と言う、楽天家とは違う。
状況や事象に対してネガティブな側面ではなく、ポジティブな側面から考える習慣だ。
当時は商社再編の時代。私が勤めていた株式会社トーメンはとりわけ経営が厳しい状況だった。
株価は下がり続け、倒産だという噂が流れ、会社全体がどんよりとした雰囲気だった。
しかし、広原さんは言い続けていた、トーメンはすばらしいビジネス資産を持っている。局面は打開出来ると。
皆が、「コップに水が半分しか残っていない・・・」と嘆く中で、
彼は「コップに水がまだ半分も入ってるじゃないか!」と、意欲とエネルギーを持続させ、部を牽引した。
そんな彼に引っ張られるように、もともと優秀な課長クラスがその能力を大きく発揮させていた。
トーメン自体は豊田通商に吸収される形となったが、私が所属していた部の事業資産は今は同社の収益源となり、移籍した方たちは大変な活躍をしている。
当時の状況を考えれば、我が部門は最高のディールをしたのではないかと思う。
前述のように私は心配性でネガティブなことを考えがちな性格だ。
リスクアプローチでクリティカルシンキングをすることの多い
コンサルタントとしてはそれはそれで悪くない資質だと思っている。
しかし、理論だけで人は動かない。
人を動かすには、ちょっとわくわくするくらいの未来と、そこに至るまでの意欲、エネルギーが必要だ。
特に管理職やリーダーの方にとっては、それこそがリーダーシップだと言い切ってしまってもよいくらいだ。
それを先天的に持っていたのが広原さんという人であったと思う。
皆さんはいかがでしょうか。
まあ、会社が経営難とまではいかないまでも、
「仕事に行きたくないなぁ」「早く土日にならないかなぁ」と
毎日ぼやいていないだろうか。
「なぜ行きたくないの?」「それはどうして?」と問題分析するのが論理思考。
しかし天性のポジティブシンカーである広原さんはたぶんそんなことは考えないし、そんな分析もしない。
仕事に行くという行為の中に、常にプラスの側面をまず考える。
たとえそれがどんな小さなことであっても。考えるスタートが違うのだ。
そんな彼が上司に居てくれたおかげで、理論だけの頭でっかちにならずに済み、
ちょっとは おもろい と言われるような人間になったような気がする。
論理思考とポジティブ思考を行ったり来たり出来るようになっていることで、
いい仕事もできている自負がある。
本当によかった。
ちなみに、新入社員当時あまり評判のよろしくなかった私だったが、
広原さんだけは「あいつは生意気だが優秀だ」と、ふれ回ってくれていた。
皆が批判的である中、彼だけには私のポジティブな面が見えていたのかもしれない。
それが何であったかは分からないし、今となっては知る必要もない。
自分も『見える』人間になりたい。そう思うだけだ。
先日ひょんなことからお会いしたが、
いまだ現役。相変わらず底抜けに元気で、大きな声で笑っていた。
Insight Now! Visionary 戸井雄一朗
第一回はこちら
第2回:天性のポジティブ思考リーダー 広原邦光
さて第2回は、ひとことでいうと「おもろいオッサン」広原邦光氏の紹介。
私が新入社員で入社した時点では、オーストラリア支社で部長をされていたので、オーストラリアから東京に電話がかかってきた際に、私が電話に出て取り次ぐだけの接点しかなかった。
広原 「○○○ いる??」
戸井 「少々お待ちください・・・」
これだけのやり取り。
しかし、その大きな声と東北なまりのイントネーションはインパクト抜群。
「なんか、豪快ですごそうな人だ・・・」
と、会ったこともないのに、なんとなくマサカリを持った金太郎のような人と、
勝手にイメージを膨らませていた。
実際にお会いしたのは、私がオーストラリアに出張に行った時だ。
「やっぱり・・・」
想像通りの豪傑だ。体こそ大きくないが、そのエネルギーは
それこそ熊と相撲でもとれそうだ。
よく食べ、よく飲み、よく歌い、よく笑う。
もちろんよく働いてもいるのだろうが、あまりに毎日が楽しそうで、
働いているように見えない(ごめんなさい)。
一緒に居ると本当に楽しい人だ。居るだけでその場が明るくなる。
オーストラリアではよくカラオケスナックに連れて行ってもらった。
そんな彼の周りには国内外を問わず多くの人が集まり、その人脈は相当なものだった。
ある役員クラスの方も「あいつは図々しいけど、明るいから好きやねん」と言っていた。
偉い人にずけずけ物を言うわりに好かれるところは
ちょっと、男はつらいよの寅さんみたいだ。
そんな広原さんが帰国し、第1回目で紹介した大石さんの後に私の所属部署の部長となった。
私からすると、厳しい厳格な父親が変わり、突然遊び人の父親が現れたようなもので面食らった。
しかし、このギャップが私の社会人としての礎をさらに広げてくれた。
なぜこの人がそれほど重要かと言うと、自分とは正反対の人間性、思考回路を持っているからだ。
とりわけそのポジティブな思考は、生来ネガティブになりがちな私に大きな影響を与えた。
そもそもポジティブシンキングとは何か?
Thinking というからには考えるのだ。
何も考えずに「どうにかなるや」と言う、楽天家とは違う。
状況や事象に対してネガティブな側面ではなく、ポジティブな側面から考える習慣だ。
当時は商社再編の時代。私が勤めていた株式会社トーメンはとりわけ経営が厳しい状況だった。
株価は下がり続け、倒産だという噂が流れ、会社全体がどんよりとした雰囲気だった。
しかし、広原さんは言い続けていた、トーメンはすばらしいビジネス資産を持っている。局面は打開出来ると。
皆が、「コップに水が半分しか残っていない・・・」と嘆く中で、
彼は「コップに水がまだ半分も入ってるじゃないか!」と、意欲とエネルギーを持続させ、部を牽引した。
そんな彼に引っ張られるように、もともと優秀な課長クラスがその能力を大きく発揮させていた。
トーメン自体は豊田通商に吸収される形となったが、私が所属していた部の事業資産は今は同社の収益源となり、移籍した方たちは大変な活躍をしている。
当時の状況を考えれば、我が部門は最高のディールをしたのではないかと思う。
前述のように私は心配性でネガティブなことを考えがちな性格だ。
リスクアプローチでクリティカルシンキングをすることの多い
コンサルタントとしてはそれはそれで悪くない資質だと思っている。
しかし、理論だけで人は動かない。
人を動かすには、ちょっとわくわくするくらいの未来と、そこに至るまでの意欲、エネルギーが必要だ。
特に管理職やリーダーの方にとっては、それこそがリーダーシップだと言い切ってしまってもよいくらいだ。
それを先天的に持っていたのが広原さんという人であったと思う。
皆さんはいかがでしょうか。
まあ、会社が経営難とまではいかないまでも、
「仕事に行きたくないなぁ」「早く土日にならないかなぁ」と
毎日ぼやいていないだろうか。
「なぜ行きたくないの?」「それはどうして?」と問題分析するのが論理思考。
しかし天性のポジティブシンカーである広原さんはたぶんそんなことは考えないし、そんな分析もしない。
仕事に行くという行為の中に、常にプラスの側面をまず考える。
たとえそれがどんな小さなことであっても。考えるスタートが違うのだ。
そんな彼が上司に居てくれたおかげで、理論だけの頭でっかちにならずに済み、
ちょっとは おもろい と言われるような人間になったような気がする。
論理思考とポジティブ思考を行ったり来たり出来るようになっていることで、
いい仕事もできている自負がある。
本当によかった。
ちなみに、新入社員当時あまり評判のよろしくなかった私だったが、
広原さんだけは「あいつは生意気だが優秀だ」と、ふれ回ってくれていた。
皆が批判的である中、彼だけには私のポジティブな面が見えていたのかもしれない。
それが何であったかは分からないし、今となっては知る必要もない。
自分も『見える』人間になりたい。そう思うだけだ。
先日ひょんなことからお会いしたが、
いまだ現役。相変わらず底抜けに元気で、大きな声で笑っていた。
Insight Now! Visionary 戸井雄一朗
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