かつてオールジャパンチームとして日本のF1ファンを沸かせた「スーパーアグリ」が、来年9月、EV(電気自動車)レースの「フォーミュラE選手権」で復活する。

日本のモーターファン待望のビッグニュースだが、鈴木亜久里氏はあくまでエグゼクティブ・チェアマン(会長)としての参加になる。中心になるのはスーパーアグリF1時代のスタッフたち。つまりこのプロジェクトは、彼がスーパーアグリという「ブランド名」を貸し出したと考えたほうがいい。

※参考記事「スーパーアグリが電撃復活した『フォーミュラE選手権』とは」

http://wpb.shueisha.co.jp/2013/11/19/23205/

そんなスーパーアグリ復活劇に、「そうか、その手があったのかと思いましたね……」と語るのは、タキ・イノウエこと元F1ドライバーの井上隆智穂氏。

「実を言うと、自分もここ1年ほど、フォーミュラEに参戦しようとしてイロイロ動いていたんです。ただ、日本でのフォーミュラEに関する権利はすでに電通さんがすべて押さえているらしく、スポンサーと交渉しようとしても、必ず『電通を通してください』と言われてしまいました。

電通といえば、スーパーアグリのF1参戦時に巨額の資金を負担したことでも知られる企業です。これはあくまで自分の想像ですが、おそらくフォーミュラE参戦を考えていたスーパーアグリF1チームの残党が亜久里さんを担ぎ出し、『日本チーム』という形にすることでエントリーを実現したのではないでしょうか? それがホントなら『電気』と『電通』の“電・電パワー”がスーパーアグリ復活のエネルギー源というコトになります(汗)」(井上氏)

……それはさておき、『さらば、ホンダF1』(集英社)の著者で、当時、現場でスーパーアグリF1の最後を目の当たりにした元F1ジャーナリストの川喜田研氏も、今回の電撃復活を「ストーリーとしてはアリ……」と見る。

「今年の鈴鹿、日本GPでもスーパーアグリのチームシャツを着たファンがたくさんいて驚きました。チームの実情はボロボロだったスーパーアグリF1でしたが、佐藤琢磨のカリスマ的人気と、シーズン途中での撤退というドラマチックな最後が結果的に“伝説”となり、消滅から5年を経た今も根強いファンがいるようです。

そんなスーパーアグリのブランド力と地球に優しいというEVレースのエコイメージを組み合わせれば『商売になる』という発想は現実味があるでしょう。いっそのことドライバーは琢磨を乗せて、スポンサーは以前、彼がCMに出ていた東京ガスの家庭用燃料電池『エネファーム』にすれば、より一層エコな感じでイイんじゃないですかね?」

また、川喜田氏は「アグリ」が参戦することで、日本の電気自動車産業への貢献にも期待を寄せる。

「フォーミュラE初年度に全チームが使用するマシンの監修はルノーが担当しています。リーフの販売で苦戦が続くルノー傘下の日産が、フォーミュラEをEVのイメージ向上に利用する可能性だって考えられます」(川喜田氏)

そこで鈴木氏に今回のフォーミュラE参戦に日本の自動車メーカーが関与しているのか聞いてみたが、「関係していません」とのこと。スポンサーやドライバーについても現時点では白紙で、佐藤選手起用の可能性については、「スーパーアグリF1のドライバーだった彼と一緒に参戦できればいろいろなことを再現できるのではないかと思いますが、何も決めていません」という。

フォーミュラEの開幕戦は、来年9月20日の北京市街地レース。F1チームの“墓場”から電気パワーで奇跡の復活を遂げたスーパーアグリ伝説の第2章に注目したい。