東北楽天を優勝に導いた星野監督。チームの窮地に発した意外な言葉とは?(写真:livedoor スポーツ)

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NHKスペシャル(2日放送分)では、「東北楽天被災地に誓った初優勝」と題し、東北楽天ゴールデンイーグルスが初のリーグ優勝に輝いた道のりを特集、選手達のコメントを中心に東北震災から3年に及ぶ戦いの日々を振り返った。

先月25日、リーグ優勝を目前とした星野仙一監督は番組のカメラに「どうだろうな。優勝なんて想像になかったね。CS出れりゃいいかって。戦力見てもそう。覚悟して大ホラ吹きましたけど。大ホラじゃなくなってきて、選手のお陰、コーチのお陰で」と話し、笑顔を見せた。

しかし、東北楽天の2011年シーズンは5位、翌シーズンも4位と2年連続のBクラスに終わっている。この結果を受け、チームリーダーの嶋基宏は「この2年間はほとんどチームに貢献できるような数字は残せてなかったので。自分自身にプレッシャーをかけていたのかなと思う場面もありました」と反省の弁を述べると、そんな嶋を、星野監督は「あれだけ大観衆の前、ニュース前で、(嶋が被災者に送った激励のスピーチのように)野球の底力、イーグルスの底力を――、見せてないじゃないか。冗談でもない、ほとんど本気で彼に言ったことがあります」と話した。

迎えた2013年シーズン。東北楽天は開幕ダッシュにこそ成功するも、4月末の時点では最下位に。嶋は「勝ち試合と負け試合が春先はハッキリしていて、勝つ時は十何点獲って、負ける時はその逆で。そういうところで春先は投手陣がうまく回っていなかった」といい、星野監督は「(嶋に)ちょっと臆病なところがあるから強気になれと。お前が臆病だと投げる方も臆病になるぞと。打たれてもいいから思い切ってリードしなさいと。まあ、時々こっち見てますけどね。でも、知らん顔してお前で考えろって。本当はこっちでサイン出したいんだけど」と、嶋の成長にチームの命運を託していたことを明かす。

その一方、今シーズンから合流しリリーフの柱として活躍した斎藤隆は、震災に対する自身の葛藤を「出身が仙台というだけで、何も知らないで震災を語っている自分に葛藤というか矛盾を感じるのは今もある。大切な命を失くされた方との差は計ることができないので野球で何かっていうのは絶対無理だと思うんです」と語る。

すると投打の噛み合い始めたチームは勝利を重ね、7月には首位に躍り出た。それでも、8月には5連敗を喫し不安が募ると「順当に来過ぎてた部分もあったので、負け始めた時にチーム自体が暗くなりはじめてた」という嶋だったが、そんな重苦しい空気を変えたのは星野監督の意外な言葉だったという。星野監督が夜のミーティングに参加をすると、選手を前に「野球っていうものはね、俺の人生と同じだ。浮き沈みがある。お前たちは若いんだし、いい経験している」と励ました。この時のことを嶋は「ミーティングに出る時は、怒鳴るわけではないですけど、怒ったりそういう場面がすごい多かったんですけど」と明かし、驚いた様子をうかがわせた。

そして、遂に訪れた運命の日。斎藤はその試合を「いつでも行けるようにしてくれって言われたんですけど、ロッテの試合経過も聞きながらという流れだったので、実は非常に難しかったですね」と語り、一方で嶋は、エース・田中将大がリリーフで登板し、その最後は全てストレートで勝負させたことについて、「投げたストレートを見て、今日は真っ直ぐで押せると思いました」と語った。

結果、リーグ優勝を決め、被災地に歓喜をもたらすことができると、嶋は「今年は東北の方々に強いところを見せるんだ。その強い意識が最後ああいうふうにカタチになった」といい、斎藤もまた「我々もこれで何か一つ勇気を与えただけではなくて、貰ったようなところもあるし、東北が立ち直る勢いのような、きっかけのようなものになれたら嬉しいなという想いでやっと現実になった」と、その想いを口にした。

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