キャンバス代わりにブリキに描いた作品。作品名のプレートはマグネットになっていて、取り外しできる。

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大阪の観光名所・通天閣にほど近い、新世界のジャンジャン横丁。昔ながらの立ち飲み屋や将棋クラブなどがひしめくこの一角に、雑貨屋のようにカラフルな外装がひときわ目を引く建物がある。
「Swing MASA JAZZ HOUSE」というこのスペースは、年間にのべ1か月ほどしかオープンしていない、不思議なギャラリーだ。

ここに展示されているのは、“猫とジャズ”をテーマにした作品のみ。カフェなどのお店と間違えて入ってくるお客さんに、「コーヒー1杯100円だけど、飲んでく?」と笑うのは、作者の山賀清春さんだ。

ニューヨークのような都会の街並みの中で猫たちがウッドベースやトランペットを奏でる風景を山賀さんが描き始めたのは1995年頃。もともとは大好きなジャズマンや、ジャズが似合う街の風景を描いていたが、黒猫の“ナッツ”を飼いだしたことをきっかけに、作品に猫が登場するようになったのだという。どことなく愛嬌のあるぽっちゃりした猫たちと少し寂しげな都会の風景の組み合わせには、独特の味わいがある。

作品の中でも力を入れているのはキャンバス代わりにブリキを使った額絵で、猫たちのそばにマグネットで動かせる看板や小さくてかわいいオバケなどをディスプレイ。好きな背景や猫と、取り外しできるパーツをカスタマイズすることもできる。
「長年絵を描いてきたけど、ブリキを使った作品は世界で誰もやってへんアートやからね。動きも出せるしな。モデルは飼い猫のナッツだったり、最近うちに遊びに来るようになった“マカロニ”“ふー”“とら”っていう3匹の野良猫だったり。かわいくてしょうがないんよ。作品のモチーフはいろんなミュージシャン。これがマイルス・デイヴィスで……こういうのは、言うたもん勝ちやから(笑)」

猫たちをさまざまなジャズマンに見立てて描いた作品のほか、人気があるのはお客さんが持ってきた飼い猫の写真や写メを見ながらプレート型のマグネットペンダントにしてくれるというもの(所要時間は30分前後)。作品の購入者にはサービスでイラストとサインも描いてくれる。
お客さんにもやはり猫好きが多く、一度ギャラリーを訪れたあとリピーターになる人も少なくないという。

この“猫×ジャズ”をテーマにした個展を、地元の大阪を中心に神戸や東京、またジャズの本場ニューヨークなどでも開催してきた山賀さん。近年は個展をこのジャンジャン横丁と、毎年秋に東京・四谷「喫茶茶会記(さかいき)」で行うものだけに絞っている。理由は、「手塩にかけた作品だから、できれば売りたくないんよ(笑)。だから通販とかにはしないで、会いに来てくれた人にだけ譲ることにしてる」からだという。

ここでは個展のほかに山賀さんの企画で連日「チャリティー古本市」や、12/28(金)には落語会、2013年1/5(土曜)にはジャズライブ(要予約)などのイベントも開催。近くの西成区の、通称「三角公園」で週2回の炊き出しの支援もしており、実は古本市や前述のギャラリーでの“百円珈琲”の売り上げはこの支援に使われている。

ギャラリーが開くのは、GWやお盆休み、年末年始など。この冬もまた、あの愛嬌のあるにぎやかな猫たちに会える季節がやってきている。
(古知屋ジュン)

<猫町JAZZ横丁 山賀清春ARTカーニバル>
会場:Swing MASA JAZZ HOUSE(大阪府大阪市浪速区恵美須東3-2-24)
期間:2013年1/20(日)まで開催
営業時間:12:00〜18:30頃
休み:火曜・水曜(1/1(祝)〜3(木)は営業)
※詳しくは「ぱあぐりお本舗」HPまで