平岡拓晃を見ていると、五輪という大イベントの残酷さが浮かび上がってくる。

この選手は4年前1回戦敗退という大失態をしたのだが、それ以来、針の筵の4年間を過ごしてきた。

メダルを取った直後のインタビューで思わず「罵倒されてきた」と言ったが、まさに本音だろう。

4年前の映像と、今の映像では、この選手の顔の相が変わってしまっている。4年前は茫洋とした人の良さがうかがえたが、今回は、顔から全く表情がなくなってしまっている。苦しかったのだ ろう。

銀メダルで悔しかったと言ったが、肩の荷を下ろしたと言うのが本音だろう。

NHKは、メダルを取った選手を翌日、ロンドンのスタジオに呼んでインタビューする。鈴木奈穂子アナウンサーがインタビューするのだが、銀メダルをとった平岡に

「この4年間を一言で言うとどうなりますか」という難しすぎる質問をした。

そんなもん、答えられるはずがない。
「次の五輪が見えているのではないですか?」との問いに対し、27歳の平岡はきっぱりとそれを否定し、「後進のサポートに回りたい」と言った。もうこりごりだ、という感じ。

おそらくこの4年間、彼にとっては楽しいことなど一つもなかったのだろう。

「何がしたいですか」という質問に平岡は、「子供に会いたい」と言った後、「(妻とは)まだ結婚式も挙げていないので帰ってから挙げたい」とも言った。

ここまで、一人の人間を追い詰める五輪とは何なのだろうと思った。