カードの内容を書き換えることによって有料放送が視聴可能になってしまったB-CASカード。もはやカード再発行しか対策が無いように思えるが、そのコストは莫大に

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いまだ解決の糸口が見つからないB-CASカードの不正書き換え問題。カードの開発元であるB-CAS社は「早急に技術的な対応を行ない」「法的措置を講じて厳正に対処したい」という声明を発表したものの、不正カードの利用者を特定することは困難と見られている。

これまでも、デジタル放送のコピーガード機能を外して、パソコンのハードディスクに記録する装置「フーリオ」や、B-CAS互換で、有料放送が見放題になる「BLACKCASカード」など、さまざまな“セキュリティ破り”の方法が出回ってきた。このような状況の中で、本当にB-CAS社の言うような「技術的な対応」は可能なのだろうか。

広くデジタル放送まわりの話題を扱うウェブサイト『まるも製作所』を管理する茂木和洋氏がこう語る。

「BLACKCASの登場以降のカードは、バックドアがふさがれているようですが、それでも現在出荷済みのカードのうち、8割超がクラック(特殊な方法で内部情報にアクセスするなどして、通常の使い方の範囲を超えた動作を可能とすること)される可能性があると思われます。また今回公開されたクラックツールによって、B-CASが採用する暗号アルゴリズム(暗号の計算方法)が丸裸になっています」

つまり、出荷済みのB-CASカードのセキュリティは、かなりの危機的状態にあるということだ。茂木氏が続ける。

「有効な対策は、やはり有料放送契約者向けに新たな暗号アルゴリズムを採用した新カードを配布する方法でしょうが、それには途方もないお金がかかります。有料放送を契約している人は現在約400万人。再発行のコストをひとり当たり500円だとしても、約20億円です。もちろん、これとは別に新たなシステムの開発費もかかりますし、ユーザーサポートのためのコストも必要になるでしょう」

対策に費やす金額はとんでもないことになりそうだが、有料放送事業者にとっては死活問題。こうしている間にも、不正カードは日々、増え続けている。