(C)2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

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 今年のおすすめ新作映画をムービーエンター編集員が選んでご紹介する「2012年先取り映画」。最後の8本目は、ヒーロー妄想のカンタがご紹介。幾多の困難を乗り越えて満身創痍になりながらも、人類初の偉業を成し遂げた「はやぶさ」を、配給会社三社が競って映画化。一番手の20世紀フォックス映画の作品『はやぶさ/HAYABUSA』は既に昨年に公開されているが、それに続く二番手は東映の作品が、2月11日に続く。今回は、この二番手作品を取り上げたいと思う。

はやぶさ 遥かなる帰還

 小惑星探査機「はやぶさ」を搭載したロケットが打ち上げられた。それは、小惑星の地表から、岩石サンプルを持ち帰るという極めて高難度な計画であった。さらに想定もしていなかったトラブルが続発。技術者たちは「はやぶさ」の帰還を信じて難題に挑んでいく。(公開予定日:2月11日)

ところで「はやぶさ」って何をしたの?

 「はやぶさ」の偉業に関しては、一般常識レベルになっているが、「実は何がすごいのかわからない。でも、いまさら聞けない」という方もいるのでは? そこで、まとめてみた。

【成果】
小惑星イトカワから、物質サンプルを持ち帰った

【なぜこのプロジェクトを?】
太陽系の起源を知るために小惑星の物質を研究する必要がある。小惑星である理由は、誕生当時の物質がそのまま残っている可能性が高いから。大きな星だと中心部が高温なために物質が変質してしまい、生誕時のものが残っていない。

【記録】
・電気推進エンジンを世界で初めて3台同時運転
・宇宙用リチウムイオン二次電池をバッテリとした世界初の宇宙機
・イオンエンジンを搭載した宇宙機として世界で最も太陽から遠方に到達
・イオンエンジンと地球スイングバイとの併用に世界で初めて成功
・史上最も小さい天体へのランデブーに成功
・世界で初めて小惑星(月以外の天体)からの離陸に成功
・小惑星表面を史上最も詳しく観測
・史上最も小さい天体へ軟着陸、離陸
・世界で初めて、月以外の天体からの地球帰還、及びサンプルリターン達成。
・光学的手法により、自力で史上最も遠い天体への接近・到達・着陸・離陸
・最も長い期間・距離を航行し、地球に帰還した宇宙機(2,592日間、60億km)
・最も長い時間、動力飛行をした宇宙機

 スイングバイ、ランデブーなど専門用語があって、よくわからないかも知れないが、サンプルを持ち帰った以外にも、これだけの世界記録を達成している。そのことだけでも、すごさがわかるだろう。しかも、宇宙開発の予算は、NASAの10分の1なのに成し遂げたのだ。

完全なるヒーローはいない

 本作の中で、一番良かったと思った点は人間模様がリアルだったということ。偉業達成のドキュメントとなると、どうしても中心となる人間が“ヒーロー”のように描かれるのだが、渡辺謙が演じた山口プロジェクトマネージャーは、それとは異なっていた。何か重要な決断をする時は「私が責任を取ります」と言い、リーダーシップを発揮するところは良い。しかし、部下が持ってきた資料に不備があると威圧的な言い方でつき返すわ、無事に飛行するように願掛けする部下に「神頼みで飛ぶならじゃんじゃんやってください」と嫌味を言うわで、かなり性格がきつい。周囲からも信頼はされているが“苦手な人間”として見られている。他の登場人物も、自分の所属の利益優先を主張したり、感情的だったり。それぞれの生活の様子も駄目なものは駄目で「はやぶさ」と連動して奇跡が起こるということは決してない。変に良い人にしたり、無理にドラマをつくり出したりしてないので違和感がない。完全なヒーローの様な人間はいない。良いところ悪いところがあるから人間なのである。そこをうまく描いたことで、リアルさが出ている。

あなたならどれを観る?

 もし観るとしたら、どの「はやぶさ」作品を観たいかを投票してみよう。スタッフに注目した『はやぶさ/HAYABUSA』か? ドキュメンタリータッチの『はやぶさ 遥かなる帰還』か? 子供をターゲットにした『おかえり、はやぶさ 』か? 

ヒーロー妄想のカンタの全体まとめ

【見どころ】人物の感情表現
【こんな人に観て欲しい】宇宙関連が大好きな人
【おすすめ度】★★★★

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『2012年先取り映画』
2011下半期アワード
2011上半期アワード
編集部的映画批評

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