ヴェネツィアに住む高齢の両親が、41歳になってもなお自分たちの元から離れようとしない息子を自立させるため、法に基づいた『立ち退き要請』を作成したことが話題となっている。一見、自立を嫌がる息子を追い出そうとしているように見える両親のこの行動の裏には、どうやら複雑な状況が隠されているようだ。

この息子は既に41歳、しかもニートではなくちゃんとした職に就いており、自立するのに全く差し支えない額の給料を稼いでいるのだが、何もせずとも食事やアイロンがかけられたシャツが出てくる環境がよほど気に入っているのか、今まで両親の元を離れようとする気配を全く見せなかったという。

しかし最近になって、息子の世話をしてきた母親が病気になり、定期的に病院に通わなくてはならない状況となってしまった。さらにこの息子は親元では何もしないばかりか、両親に対し日頃から攻撃的な態度で接しており、暴力を振るうことも幾度となくあったそうだ。息子の面倒をこれ以上見ることが出来ないと判断した両親は、弁護士の監修の元、息子に対するいわゆる『立ち退き要請』を法に基づき作成することとなった。

この担当弁護士は、『立ち退き要請』には6日以内に両親の家を出て行くようにという息子への指示が記されており、息子がもしこれに従わなければ、裁判所への訴えも辞さない構えでいると話している。

欧米諸国では子供達は大学に進学するか、働き出す際には親元から離れることが多いと一般的に言われているが、全ての国がそうであるとは断定できない。例えばイタリアは日本と若干似た状況で、結婚するまで親元に留まる子供は決して少なくない。これには、イタリア人の家族間の結びつきが強いことも影響しているが、最近では今回のこの息子のように、金銭的に自立できる状況であっても親元を離れたがらない子供も年々増加しており、こうした状況が社会問題へと発展することもあるという。

今回の件はその一例であるが、この両親は、息子が出て行った後は念のために家の鍵を全て取り替えるつもりでいるというから、事態は想像以上に深刻なようだ。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)

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