吉田麻也がよくないのではなく、長谷部キャプテンがすばらしすぎる「長谷部システム」とも呼べるような「3−4−3」でした。あれは、長谷部がいなかったり、ペルー戦のように疲れて足がつったりすると、危ない。ザックさんからどういう指示が出たのかわかりませんが、ひょっとしたら、バイタルの守り方はペルー戦とチェコ戦で変えてみたのかもしれない(の、ように見えました。選手同士で話し合ったのかも)。

マヤにしてみると、マイボールでのポジションと、相手ボールでのポジションの距離は15m(ゴールエリアとペナルティエリアの距離)〜25m(バイタルエリアからタッチラインの距離)。これをつねに、かなり速いスピードで移動しなければならない。しかも普段の4バックならばスローインはウッチーが投げるのに、チェコ戦ではウッチーはボールをマヤに渡して「じゃ、よろしく」と前に走っていってしまう。

ザックさんは、ウッチーと祐ちゃん(ナガトーモ)に「後ろは気にするな」と激励していたような痕跡もある。

これは結構きついと思いますよ。マヤニスタにしてみれば。

ザックさんの理想型では、これに加えて、マヤがウッチーを追い越して攻撃参加するような場面もほしかったはず。それができたらすばらしいけれど、実際の試合ではコンちゃんのカバー、ウッチーとの関係と両方こなさねばならない。結局、マヤニスタがウッチーを「追い越す」場面は(私の記憶では)一回もありませんでした。

(逆の左サイドも同じ関係。伊野波は長友を、たぶん、一回だけ追い越しかけてやめて戻ったような記憶がある)

つまり、ザック流の3バックでは、DFにたいする要求がとてつもなく高い。

センターバックとサイドバックの両方ができないといけない。両方ができる選手といえば、バルサのプジョルとか、(好き嫌いはあるけど)インテルのキブ、サネッティのようなクラスをめざすことになる。(マルディーニ、ネスタ、イワノビッチ……)

サイドとセンターの両方のDFとして実績がある日本人選手は、阿部勇樹、今野泰幸、伊野波雅彦ぐらいか。潜在的には、ストッパーとしてもプレーしたことのある駒野友一、加地亮も。速さ的には坪井慶介。ウォルフスブルクでサイドバックだった長谷部マコ様もやれといわれればできるだろうが、高さ的に……。やっぱ、槙野くんの出番か?

じゃあ、チェコ戦は阿部ちゃんが呼ばれてなかったから、マヤニスタを真ん中にして、右・コンちゃん、左・伊野波くん、という3バックでやればよかったじゃない、って、いう意見の方がいそうですが、私も、はい、前半だけか後半途中からか、試してみてもよかったのではないかと思っています。

と、ちょっと長くなりましたが、何となく、おわかりいただけたでしょうか。

DFへの要求も高いが、センターハーフ(長谷部・遠藤のポジション)への負担もかなり高いのが、ザックさんの3−4−3システムだと思います。それだけに、有機的にかみ合わせる必要がある。熟成に時間がかかるだけに、今回のキリンカップでテストできて、本当によかったと思います。(攻撃面については、またあらためて)

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で、震災3カ月。まじめな話、現地では、緊急事態はまだ続いています。

避難所生活10万人。震災当日、東京都内で「帰宅難民」が300万人もでて、家に帰れず都立高校の体育館や都庁のロビーで一夜を過ごされた方がいた。被災地では、あれ以来ずーっと、体育館で生活している人が、一時期よりは少なくなったとはいえ、まだ10万人もいる。家に帰れないどころか、家がなくなった。

プライバシーのない集団生活。着替えもできない。3カ月前は酷寒、今は換気ができず、虫に食われながら日中は気温30度近くになる体育館での「生活」。震災直後の援助物資はありがたかったが、いまではニーズも変わり、夏物の下着やシャツ、タオルケットやシーツなどがほしいところだが、我慢強い被災地の人びとは自分からは言えない。

以前のブログで「避難所にいる人」の数だけでなく「援助を必要としている人」の数を問題にするべきだと書きましたが、基本的にはその大切さは変わらない。というよりも、一見復興しかかっているように見える現在ほど、声を大にしていいたい!

避難所から出て「仮設住宅」に入れても、いままで支給されていた食事の援助がなくなり、光熱費も自己負担、仕事も財産もなくし、義援金支給も遅れている状況で、仮設が当たりましたというのを素直に喜べない現状は、やはり何かおかしい。

ここまで長文、おつきあいいただいて、ありがとうございました。(千田)

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