――関さんのお仕事は、今回のダフト・パンクと同様で、映像と音楽が加わることによって、相乗効果を生み出すことが常に求められると思いますが、映像と音楽を組み合わせる際、そんな所に意識されますか?

:もちろん作った人が「こういう風景を思いながら作った」というのも聞くし、そういうのは音に表れてくるんですけど。とはいえ、そこに全てのイメージを集中させるというよりは、「例えば、こういう見え方もあるんじゃないか?」みたいな。多分、観る人って何万人もいるはずで、その人たち全てに同じものをイメージをさせるよりは、「この人は、こう感じた」とか、映像も音楽も一緒だと思うんですよね。

音楽も「この曲は悲しい曲だけど、その先にある未来が見える曲だったりもする」という時に、「悲しいだけの映像じゃ良くないな」とは、いつも思っているので。100人いたら100通りの感じ方があると思うので、そこにあまり押し付けるようなことはしたくないなと思っていて。観る人が「これは、こんなイメージなのかもしれない」というのを少しでも汲み取ってもらえるような構成だったり、そういう映像を1カット入れてみたり、そういうことは気にしていますね。おかげ様でと言うか、割とテクニックを駆使してというよりは、「努力して、頑張っているな」というのはよく言われますね(笑)。

――「愛情を感じる」ということですね。

:そう言ってもらえるのが1番嬉しいですね。今は結構、コンピュータとか時間を掛けると,何でもとは言わないですけど、色々と出来てしまう部分があるんですけど、やっぱり映像ってそれだけじゃないものもいっぱいあるし、そうやって出来てきたものだと思うので、なるべくそういう部分を残したいですね。「映像って大変なんでしょ?」とか「難しいんでしょ?」とか、小難しく考える人もすごくいるんですけど、そうじゃなくて、単純に楽しんだり、自分が持っているちょっとしたアイディアをやってみたら映像になったりもするし。今は携帯で映像が撮れちゃったり、みんなが映像を撮れる、作れる時代だと思うので、「そんなに難しくないよ」というのもちょっと言いたいなと、いつも思っているんですよね(笑)。

――『トロン:レガシー』を観て、今後の映像制作に向けてヒントになったことや、いずれは長編作品の制作など、刺激を受けましたか?

:そうですね。やっぱり長編を作ってみたいと思いましたね。もちろん大変な作業なんですけど、ここまでストイックに世界を作って、メッセージを言えることのすごさというか。自分ももっと勉強して、機会があればやりたいですね。

――では最後に、これから『トロン:レガシー』を観られる方へ向けて、先程「親子の人間ドラマ」とも仰っていましたが、関さんが感じた見所をお願いします。

:そうですね、それがまず第一にあるのと、僕的には3Dの使い方に対してすごく認識が変わりました。すごくドラマの内容に沿った3Dの使い方をされていると思うので、そこに注目してもらうと結構見方が変わるんじゃないかなとすごく感じました。あとは、『トロン:レガシー』の細部に渡る「ここまでやるか!?」というストイックな世界観の作り方は、もう本当に3回くらい観た方がいいんじゃないですかね。

――細部とは、例えばどんな所ですか?

:もう挙げ切れないですけど、例えばマシン一つとっても、割と「簡単にCGで作っているんじゃないか?」みたいなに見られそうですけど、多分そうではないだろうなと。僕もどうやってるかは全く分からないですけど(笑)。車のディテール一つとっても、もうメチャクチャかっこ良いものになってますし。スーツに関しても、キャラクターによってデザイン性も変わってますし、そういう所にも注目してみると面白いと思います!


関 和亮
1976年長野県小布施町生まれ。1998年ooo(トリプル・オー)所属。2000年より映像ディレクターとして活動を始め、2004年よりアート・ディレクター、フォトグラファーとしても活動。現在に至る。PerfumeのCDジャケットのアートディレクション及びミュージックビデオのディレクションをはじめ。数多くのミュージシャンのアートワークを担当。第14回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門にてディレクションしたサカナクション『アルクアラウンド』が優秀賞を獲得。
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