松尾芭蕉に上司としての在り方を学ぶ。

「古池や蛙飛こむ水のおと」という有名な句は、もともと「山吹や蛙飛ンだる水の音」であったと伝えられています。芭蕉はこの原句を弟子たちに披露し、ディスカッションを重ねた末、「古池や蛙飛ンだる水の音」に、さらに検討を重ねて「古池や蛙飛こむ水のおと」として完成させたようです。

当時既に芭蕉は、全国に多くの弟子を持つ巨匠でありましたが、尊大で孤高の存在になることを嫌い、ことのほか弟子たちとの議論を好みました。弟子の中には、巨匠に対してヨイショをするものも少なくなかったようですが、
「只予が口よりいひ出せば、肝をつぶしたる顔のみにて、善悪の差別もなく、鮒の泥に酔ひたるがごとし」(私が句をただ口にするだけで、びっくりしたような顔をして、その良し悪しを考えることもない。まるで鮒が泥水の中であえいでいるようなものだ。)
と言って、そのヨイショを嫌っています。

会社組織においても、年齢を重ね、キャリアを積んだり、偉くなったりして考えや発言の質が向上し、影響力が大きくなることは良いことなのですが、知らぬ間に、部下がその人の言動に対して盲目的に従っているだけの状態になることは少なくありません。会議などの場で、反対意見や異なる意見が一切出ず、常に肯定的、好意的に反応されるようになってしまうのは、別に独善的なリーダーだけではないでしょう。実力や権限・権力に伴って、そういう傾向になるほうが自然とも言えます。

だからリーダーはこれを敏感に察知し、常にフォロワーとの関係づくりに腐心しなければなりません。萎縮しているフォロワーに対して、「もっと発言せよ」「反対意見を述べてみよ」と言ってもすぐに出来る訳はありませんから、根本的にその関係を自然で良好なものにする必要があります。


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