これからがビッグになるための本当の勝負。WEC最強だったソネンと、UFCトップ戦線を賭けた戦いに挑む元IFL世界ミドル級王者ダン・ミラー

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ラシャド・エヴァンズ×リョート・マチダのUFC世界ライトヘビー級選手権試合に、日本の吉田善行の参戦が話題のUFC98『Evans vs Machida』だが、23日(土・現地時間)にMGMグランドガーデン・アリーナで行われる同大会には、この他にも注目のカードが多い。

特に米国で注目を集めているのが、マット・ヒューズ×マット・セラの因縁のウェルター級戦だ。07年4月に世界ウェルター級王座を獲得したマット・セラは、TUFシーズン6でコーチ役を務め、07年12月には、マット・ヒューズと対戦するはずだった。しかし、セラの負傷でこの一番がヒューズ×GSPの暫定世界王座戦となり、ここからGSPの覇道構築が始まった。

そのGSPに完敗を喫した両者。ヒューズは昨年6月にロンドンで計量ミスをしたチアゴ・アウベスにヒザ蹴りからのパウンドで完敗を喫して以来11カ月ぶりのファイト。一方のセラはそのGSPに敗れ、1年1カ月を経て、久々のオクタゴンとなる。

レスリング+MMAグラップリングを見につけたヒューズに、レスリング+ブラジリアン柔術を習得しMMAに転向したセラ、グラップリング主体の両者の一戦は非常に噛みあうことが予想され、知名度も抜群なだけにおおいに盛り上ることが予想される。

しかし、両者ともこの一戦で勝利を得たところで、神の階級とされるUFCウェルター級戦のトップに返り咲く期待感は薄く、最近のMMA界で増えつつあるOB戦に近いマッチメイクといえるだろう。

名誉を得て、経済的にもひと財産をなした彼らと違い、さらなるステップを目指し、負けられない一戦に挑むのはダン・ミラーとチェール・ソネンのミドル級戦だ。

ダン・ミラーは11勝1敗で昨年夏に活動停止に追い込まれたIFLの世界ミドル級チャンピオンだった。その後、UFCに転向を果たすと、ロブ・キモンス戦を皮切りに、同じ元IFL世界ミドル級王者のマット・ホーウィッチ、WECミドル級から転向してきたコブラカイの組み技師ジェイク・ロショルトを下している。

一方のソネンは、これがUFC復帰後2試合目となるが、前回の試合では“ミスター柔術”デミアン・マイアの三角絞めで一本負けを喫し、捲土重来、岡見勇信の代役として、この一戦に挑む。MMAキャリア7年で既に32戦の戦績を残るソネンは、プロデビュー戦でジェイソン“メイヘム”ミラーを下している。その後、パンクラスに来日し、郷野聡寛とドロー、IFLやROTR、元祖ロシア資本のユーフォリアMFCなど、ハイクオリティの中規模大会で活躍した後、05年10月に初めてUFCで戦っている。

3試合契約を1勝2敗で終えたのち、ボードッグから再びズッファ配下のWECへと戦場を変え、WECでは無冠だったものの最強のミドル級ファイターに君臨した。

WEC重量級のUFC移管により、先のマイア戦でUFCに2年半ぶりのカムバックを果たしたソネン。その初戦で一本負けしてしまったわけだが、あの敗北は勝ったマイアを褒めるべきだろう。多くのUFCミドル級ファイターがハマった、マイアのリバーサルからのボジション奪取に対して、ほぼ完璧という対処を見せたファイターはソネンが初めてだったからだ。

ソネンからすれば、想定外の崩しでポジションを許し、そのまま三角絞めで敗れたが、勝負が決した瞬間以外で危ないシーンは皆無だった。

WECでパウロ・フィリョに初黒星をつけたように、グラップラーには自信を持つソネンだけに、ヘンゾ・グレイシー系の柔術がベースとなったトータルファイタータイプのミラーは、得意な展開に持ち込める相手といえるが、果てして……。

王者アンデウソンの人気暴落により、階級を超えた戦いに駆り出された今、王座を目指すミドル級ファイターは一様に白星を重ねたいところ。王者独走を止めるために、団子状態のトップ戦線から抜け出してくるファイターの出現に期待したい。