SpursEngineを搭載した拡張カード

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地上デジタル放送の開始に向け、テレビ放送のハイビジョン化をはじめとするハイビジョンの波が押し寄せている。次世代レコーダーのブルーレイレコーダーはいうに及ばず、愛児を記録するデジタルビデオカメラでもハイビジョン化が進み、綺麗な映像を誰でも撮れる時代になった。

ハイビジョンの映像は高画質であるため、今利用している携帯電話やiPhone 3G、プレイステーションポータブル(PSP)などで見るためには、機器にあわせて映像を編集する必要がある。しかし、ハイビジョン映像を編集するためには、高性能なCPUとグラフィックスカード(GPU)、ハイビジョン対応のソフトウェアが必要となる。これらの環境を整えるだけで、なにかと出費がかかるのが悩みの種だ。

こうした悩みを一気に解決してくるのが、東芝の「SpursEngine(スパーズエンジン)」だ。「SpursEngine」は、動画を処理する専用チップで、普通のパソコンに「SpursEngine」を載せるだけで、たちまちハイエンドマシンにも負けないスーパーマシンに変身させることができる。

この「SpursEngine」、実はソニーの家庭向ゲーム機「PLAYSTATION 3」の頭脳が使われているというのだ。
そこで今回は、ハイビジョン時代の次世代チップ「SpursEngine」にフォーカスしてみた。


■「SpursEngine」とPS3の関係は?
「SpursEngine」は、ソニーの家庭向けゲーム機「PLAYSTATION 3(PS3)」の頭脳ともいえる「Cellプロセッサー」と共通のコアSPE(Synergistic Processor Element)を持つ次世代チップだ。


■10倍速以上の映像処理 - 「SpursEngine」の特徴
「SpursEngine」の一番の特徴は、圧倒的な画像の処理能力だ。

デジタルビデオカメラで撮った映像をパソコンで編集する場合、高性能なCPUやグラフィックスカードを備えたハイエンドマシンでなければ、画像処理に莫大な時間が掛かってしまう。極端な話、1,920×1,080ピクセルのフルハイレゾリューションの映像ともなれば、パソコンの性能によっては丸一日の作業となることだってあり得るのだ。

「SpursEngine」は、そんな映像の処理をCPUの代わりに行ってくれる頼もしいチップなのである。しかも映像専用チップなので、同クロックのCPUに比べて圧倒的に高速な処理ができるのだ。

東芝の資料によると。ハイレゾリューションの映像(25メガバイトで約10分のMPEG-2の動画)をH.264の映像(8.6メガバイト)に変換する場合、Intel Core 2 Duo 2.26GHzのパソコンで処理した場合に約64分35秒の時間が掛かるのに対し、同じパソコン環境でも「SpursEngine」を使用した場合は、約5分46秒の時間で処理が完了できるという。なんと、約10倍以上の高速な処理が可能となるわけだ。

これほど「SpursEngine」が高速に処理できる秘密はどこにあるのだろうか?


■映像処理をチップ内に閉じ込める - 「SpursEngine」を支える技術
「SpursEngine」が高速な秘密は、映像処理に特化した設計と、映像処理の流れをチップ内に閉じ込めていることの2点があげられる。

「SpursEngine」は、フルハイビジョン対応のMPEG-2およびH.264のハードウェアエンコーダおよびデコーダと、SPEを4個搭載している。
つまり、映像処理に必要なハードウェアがあらかじめ搭載されているうえに、4個の専用CPUコアが処理を行うこととほぼ同じなわけだ。

さらに「SpursEngine」では、MPEG-2やH.264で符号化された映像をデコードし、SPE上のソフトウェアで各種処理を行い、圧縮した形式にエンコードするという一連の処理をチップ内だけで完結できる。

心太(ところてん)のごとく、「SpursEngine」に映像を流し込んでやれば、好みの映像に変換されて出力されるわけだ。


■「SpursEngine」で未来はどう変わる?
「SpursEngine」は、既存の映像だけでなく、録画中にリアルライムでフォーマット変換を行うこともできる。昔撮影したビデオのようなSD映像(720×480ピクセル)をクリアなHD映像(1,920×1,080ピクセル)に拡大する超映像技術も搭載している。同機能を使用すれば、YouTubeの映像を大画面で再生した場合でも、滑らかでクッキリした映像で見ることができるのだ。

現在、デスクトップパソコンであれば、「SpursEngine」を搭載した画像処理カードを追加することで、たちまちハイエンドマシンにも負けないスーパーマシンに変身させることができる。残念ながら、ノートパソコン向けの後付の製品は登場していないが、東芝では「SpursEngine」内蔵のノートパソコンはすでに発売を開始している。


以上のように「SpursEngine」は、高性能なCPUやグラフィックスカードに比べて安価にハイレゾリューション環境を構築できる点で、今もっとも注目すべき技術といえるだろう。


参考:
「SpursEngine」
東芝

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