プレミアリーグの元審判でFIFAの国際審判も務めたグラハム・ポール氏は、2006年ドイツワールドカップでイングランド代表のFWピーター・クラウチが審判団からマークされていたことを明かした。

　ポール氏によると、ワールドカップ開催前の段階で、FIFAはクラウチがラフプレーに走る傾向があると指摘しており、実際に審判団でこの長身FWのプレーを視察に訪れたこともあったという。

「昨年のワールドカップで、FIFAからイングランド代表の試合のビデオを見せられた。そして、FIFAの代表者は審判団にこう言ったんだ。『クラウチに注目してほしい。彼は厄介な選手だ。ラフプレーをしながら、警告を逃れる傾向がある。彼には十分に注意を払って欲しい』とね。そして、イングランドがワールドカップ前に戦った調整試合を視察した際には、クラウチの腕の使い方が指摘されていた。イングランドの人間として、私はクラウチをかばおうとしたのだがね」

　実際、ワールドカップ本番では、数多くのファウルを取られ、グループリーグのパラグアイ戦では警告を受けているクラウチ。ワールドカップ以降も審判団の警戒は厳しく、これまで5試合に出場したユーロ2008予選ですでに2度の警告を受け、今週土曜日のイスラエル戦を欠場する。一方、昨シーズンのプレミアリーグで29試合に出場したクラウチが受けた警告はわずか2枚。この差について、ポール氏は審判団が受ける指示とそれによる先入観が、ジャッジに大きな影響を与えることを認めた。

「特定の選手を常に警戒すべきなのか、それともファウルをしたときにだけ然るべき対処をすべきなのか。審判としては常に考え続けなければならない課題だろう。準備をするのは悪いことではないが、先入観を持つのはよくないことだ。クラウチがドイツで警告を受けたことは事実だし、それ以降も数多く警告を受けているようだ。土曜日の試合も出場停止だろう？　審判も戦術を持って試合に臨むということを、選手も理解しておく必要があるだろうね」

　FIFAの国際審判員から徹底マークを受けていることが判明したクラウチ。所属のリバプールでは、大型補強の影響で出場機会が激減し、イングランド代表での試合が貴重なアピールの場となっていただけに、今回判明した事実のショックは大きいはず。この長身のストライカーにとって、今シーズンは苦難のシーズンとなりそうだ。