その昔、“王様”ペレはブラジルの全国選手権でサントスとコスモスのユニフォームを着て、通算512ゴールを記録したとされている。不滅の記録と言いたいが、オーストリアにそのペレを上回る先人がいた。

　ヨゼフ・ビカンという、そのオーストリア人ストライカーは、各国全国リーグ（つまり2部リーグも含まれる）における最多ゴール記録を保持している。ラピド・ウィーンでデビューしたのは今から76年も昔の話だ。それから同じウィーンのアドミラに移籍したり、チェコスロバキア（当時）のスラビア・プラハでプレーしながら24年間にわたって現役を続け、517回もゴールネットを揺らした。

　オーストリア・リーグは昨季、宮本や三都主のレッドブル加入で注目を浴びたが、欧州にあってはマイナーリーグであることに変わりない。それでもビカンが刻んだ数字は素晴らしいの一語。茶色い革のボールを追うその姿は、もはやモノクロ写真でしか見ることはできないが、その豪快なシュートモーションは色あせることはない。