【蜜ツ冶】まいばすけっと「異例の高時給」の背景にあった、「鮮度の高さ」を追い求めない売り場づくり

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イオングループの小型スーパーマーケット「まいばすけっと」が、都内を中心とする首都圏で店舗数を増やし、勢力拡大を進めている。1つの駅周辺だけでも数店舗出店しているケースもあるほどだ。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのまいばすけっとだが、最近“アルバイトの時給が高すぎること”が話題に。

日中の時間帯はエリアを問わず時給1460円~1520円以上を掲げる店舗が多く、東京都の最低賃金(10月1日から時給1280円)を大幅に上回っている。さらに深夜帯になると1900円程度まで跳ね上がる店舗も散見されるのだ。同業他社の都内のスーパーでは日中は時給1200円台~1300円台がほとんどのため、まいばすけっとの給与設定がいかに異例なのかがわかるだろう。

長年、低賃金が問題視されてきたスーパー業界において、なぜ、まいばすけっとだけがこれほどの高時給を実現できているのか。背景となる運営体制や、スーパー業界の課題である人件費を抑える売り場づくりの特徴とは? 流通アナリストの中井彰人氏に解説していただいた。(以下、「」内は中井氏のコメント)

記事前編は【イオングループでも突出して高い…スーパー業界で「まいばすけっと」だけが「異例の高時給」を設定している理由】から。

特有の売り場づくりが高時給を実現

アルバイトに高時給を支払えるワケは、まいばすけっと特有の売り場づくりの強みにあるという。

「一般的なスーパーでは、入口から入るとまず野菜の売り場があり、次に魚、肉、というふうに壁沿いを生鮮食品のコーナーがぐるりと囲み、真ん中が加工食品や日用品の棚になっています。そして各コーナーの裏に生鮮食品を加工するバックヤードがある構造になっており、バックヤードで従業員が加工・調理した食品を店頭に出すことで、鮮度の高さや出来立ての風味をウリにできるのです。

そうした食品のクオリティの高さを求めて足を運ぶお客も多いと思いますが、経営目線でみると、店舗ごとに作業する従業員数が必要となり、バックヤード分の店舗面積も確保しないといけないため、おのずと生産性が低くなる。また、人手不足では成立しないという労働集約型産業のデメリットも生じています。

それに対してまいばすけっとの多くは、入店してすぐに麺類などの加工品が並び、真ん中に肉や魚の売り場があるという真逆のレイアウトになっています。まいばすけっとはバックヤードを持たない店舗設計となっているため、大幅なコストカットを実現できているのです」

“食品類の鮮度の高さ”というメリットを追い求めないという決断をしたことで、そのメリットの表裏一体となっていたデメリットを回避できるビジネスモデルになっているということか。

「まいばすけっとの生鮮食品や総菜は、すべてイオンが運営するプロセスセンターであらかじめ加工されたものが納品されています。商品に関して従業員が行うのは品出しのみでいいので、最小限の人数で営業できるわけです」

「欧米式」のスーパー運営

中井氏によると、まいばすけっとのような効率的なスーパー運営は「欧米式」といえるとのこと。

「日本では1950年代に欧米からスーパーマーケットの文化が入ってきましたが、本家の欧米があらかじめ加工されたパック食品を主に扱っていたのに対し、日本ではそのスタイルは浸透しませんでした。

なぜなら、日本人は魚をよく食べる食文化があり、それまでも市場で新鮮な食材を買うことに慣れていたため、スーパーが台頭しても変わらず“鮮度が高くて美味しい”というポイントが重要視されていたからです。

日本の一般的なスーパーの在り方は、日本の文化に合わせて独自に発達してきた結果なのですが、まいばすけっとは従来の欧米式のスーパーマーケットの在り方を参考にしたのでしょう」

食品類は「鮮度がよくない」?

とはいえ、“まいばすけっとの食品類は鮮度がよくない”というわけでもないそうだ。

「今は生鮮食品を運ぶ際の管理技術も進化していますから、一定のレベルに鮮度を保って納品することは昔ほど困難ではありません。また、まいばすけっとは店舗が特定のエリアに集中しているので業者の宅配もスムーズに行われます。

プロセスセンターの投資にはもちろん莫大な費用がかかりますが、大手チェーンなので提携している店舗数が多く、それぞれの店舗に食品加工のための人件費を割くことに比べれば、コストは大幅に削減できるわけです。

最低限の従業員数でも運営できる体制が敷けるからこそ、まいばすけっとは店舗数を拡大しながら高時給を維持することができる。このような欧米式のスーパーの業態を実現したのは、まいばすけっとが日本初ではないでしょうか」

今後、スーパー業界にあたえる影響

低賃金のイメージが強かったスーパー業界において、高時給をひとつの武器にますます勢いが加速していきそうなまいばすけっと。今後、スーパー業界にどのような影響を与えるのだろうか。

「ここ数年で大きく変動するであろうスーパー業界のシェアをめぐる競争において、重要な役割を持つと考えています。

現在、日本は欧米に比べてスーパーのシェアは細かく分かれています。大手の上位3社を合計しても全体に占めるシェアは20%ほどで、寡占状態というわけではありません。大手企業の数社で全体の約60%のシェアを占める欧米と比べると、日本は地域ごとに根付いたローカルな中小チェーンがまだまだ多い状況なのです」

大手企業としては、中小チェーンを取り込んでシェアの拡大を進めていきたいところだろう。

「その先陣を切っているのが、まいばすけっとという新業態を成功させている業界トップのイオングループなのです。

店舗内での作業を効率化して必要な従業員数を最小限に抑えつつ、人材を集めるために高時給という有効な切り札を惜しみなく活用する。そうしたまいばすけっとの強みを実現できているのは、イオングループという大手企業によるスケールメリットがあればこそ。

それはつまり、中小チェーンではまいばすけっとの真似をしようとしてもなかなか難しいことを意味しているため、イオングループが中小チェーンを取り込みやすくなってきているのではないでしょうか」

高時給が話題となったまいばすけっとの猛進によって、イオングループがスーパー戦国時代に決着をつける可能性も十分にありそうだ。

(取材・文=蜜ツ冶/A4studio)

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