文献調査受け入れを表明した鈴木市長(9月30日、茨城県常陸大宮市で)

写真拡大

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定を巡り、文献調査を受け入れる意向を表明した茨城県常陸大宮市の鈴木定幸市長は30日、人口減少が急速に進む市の現状が決断の決め手になったことを明かした。

 地元では街の存続への思いや風評被害への不安など賛否の声が聞かれた。

 「50年後、本当に街が残っているのか心配する人も非常に多い」。鈴木市長は記者会見で危機感をあらわにした。市は合併前の30年前と比べて人口が7割に減少。有識者でつくる「人口戦略会議」で「消滅可能性自治体」とされた。小中学校の閉校も相次いだ。

 鈴木市長は国からの交付金などを念頭に、「文献調査を受け入れ、市民を含めた議論の俎上(そじょう)に載せることで、可能性を未来につなげられる」と強調。文献調査期間に市民への説明を尽くすとし、第2段階の概要調査に進むかどうかは住民投票などで市民の意思を確認するとした。

 表明を受け、大井川和彦知事は「市長として決定したものであり、特段、県として申し上げることはない」とコメントした。

 市内では賛否の声が聞かれた。農業男性(64)は「財政が豊かになることを考えると賛成。どこかが引き受けないといけない」と話した。約50年間タクシー運転手として働く男性(73)は「子や孫の世代まで果たして本当に安全なのか。風評被害で観光客がいなくなるかと思うと心配だ」と述べた。

 隣接する栃木県茂木町の自営業男性(76)は「常陸大宮市からきちんとした説明を聞きたい」と話した。同県の福田富一知事は「国には周辺自治体に対しても、適時適切に十分な情報公開と科学的根拠に基づく丁寧な説明をお願いしたい」とコメントした。

 調査を巡っては、北海道や佐賀県の知事が概要調査に否定的な立場で、選定作業は停滞している。先行自治体からは国主導で候補地を増やし、全国的議論につなげるよう求める声が上がっており、全国で初めて文献調査が行われた北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長は「常陸大宮市が調査地点に選定されたことは国の課題解決に向けた大きな一歩。国には調査申し入れを全国に拡大し、議論の輪を広げていくことに期待している」とコメントした。