フジテレビ

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フジ惨敗

 フジテレビのドラマが低迷している。夏ドラマ5本(1本の制作は関西テレビ)のうち、平均個人視聴率が3%を超えている作品はない。どこに課題が存在するのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 地上波ドラマで合格点の1つの目安とされるのが個人視聴率3%台。各局が「ヒット作」と呼ぶのは4%台からである。プライム帯(午後7~11時)にはドラマが16本あるが、4%を超えると上位に入る。大ヒットと称されるのは6%以上だ。

 個人視聴率は、個人がリアルタイムでその番組を視聴した割合を表す。その家の誰か1人でも観ればカウントされる世帯視聴率とは異なり、個人単位で視聴実態を捉えることができる。

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 各局の収益の大勢を決定づけるのも個人視聴率だ。スポンサーはなるべく多くの人にCMを見てもらいたいからである。関東地方の1%は約40万人を意味する。TVerの売上高はCMの10分の1前後に過ぎない。

 まず、フジ以外のドラマの個人視聴率を確認してみたい。TBS「VIVANT」(日曜午後9時)は10%前後。別格である。同「Tシャツが乾くまで」(放送終了)の後半は4%を超えていた。

 テレビ朝日「大空港~GATE24~」(木曜午後9時)は5~6%。同「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~ Season2」(放送終了)は4%台である。

 日本テレビ、TBS、テレ朝、テレビ東京に1%台のドラマはない。ところが、フジは夏ドラマ5本のうち、3本が1%台なのだ。逆に、合格点の目安となる3%超えは1本もない。

 フジのドラマについて、第1回から9月9日までの平均値を出した。

 まず、GACKT(53)が主演している月9「ブラックトリック~裁きを操る弁護人~」(月曜午後9時)は2.7%。演技経験の浅いGACKTを主演に配した意義が見いだしにくい。

 28年ぶりに帰ってきた反町隆史(52)主演の「GTO」(同10時)は2.4%。フジの月曜10時台のドラマは関西テレビの制作だが、両局は綿密に連携しており、フジ・メディア・ホールディングスは関テレの筆頭株主でもあるから、この放送枠のドラマはフジがオーソライズしていると考えていい。

「GTO」の平均個人視聴率はフジのドラマの中では善戦している。もっとも、このドラマこそフジに決定的な負の影響を与えている気がしてならない。旧態依然としたドラマがあると、フジのドラマ全体が時代遅れのように映ってしまうからだ。

「GTO」は前作からの進化を期待していたが、変わったのはスマホなどのITツールが登場するようになったぐらい。高校教師の鬼塚英吉が、生徒の悩みを解決に導くという前提条件も同じ。その悩みは親子関係や友人関係などで、前作とほぼ変わっていない。元暴走族という鬼塚の売りも一緒である。

元暴走族は無理

 前作が放送された1998年なら、元暴走族のリーダーが教師になるという設定は新しかった。警察庁の調べによると、当時は暴走族が全国に約2万6000人いたが、教師になるというのは一般的ではなかった。元暴走族リーダーと聞くだけで、型破りな教師だと想像できた。

 しかし、時代は変わった。やはり同庁の調べによると、もう暴走族自体が約4500人しかいない。しかもメンバーの年代が上がっている。若者の中には、本物の暴走族を見たことすらない人も多いのではないか。

 元暴走族は、もはやドラマの主人公のアピールポイントにするのが難しい。視聴者側が元暴走族をイメージしにくいのだから。鬼塚の存在は時代の要請に背いている気がしてならない。

 他局の学園ドラマを見ると、やはり高校が舞台だったTBS「御上先生」(2025年)の場合、高校生と政治、親の立場や収入の格差問題(「親ガチャ」)、不正入試などを描き、さらにミステリー仕立てにしてあった。令和という時代を切り取ろうとしているのが伝わってきた。

 フジは以前からヒットドラマのリメイクに熱心である。田中邦衛さんが主演した1966年の名作「若者たち」を、「若者たち2014」としてリメイクしたのは2014年だった。フジの視聴率が落ち始めた時期と重なる。

若者たち2014」の主演は妻夫木聡(45)。蒼井優(41)らが共演するなど豪華キャストだったものの、視聴率は振るわなかった。テーマは旧作と同じく大家族の家族愛。少子化に伴う小世帯化の中では、支持を得るのが難しかったはずだ。古い設定と現状の乖離である。フジのリメイクはこのパターンが目立つ。

 TBSのドラマ関係者は「フジには申し訳ないが、時代の空気をキャッチアップできなくなっているのではないか」と語る。フジのドラマ部門を統括するのは、「古畑任三郎」(1994年)などを生んだ稀代のヒットメーカー・石原隆専務(65)だが、現場のクリエイターが不足しているのかもしれない。第一線の人材がNetflixなど動画配信各社に流出してしまった。

 2025年には小泉今日子(60)主演の「最後から二番目の恋」の続編「続・続・最後から二番目の恋」が11年ぶりに制作された。個人視聴率の平均値は4%台と上々だったが、コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)は低調だった。還暦前後の男女の哀歓を描いたのだから当然である。

 この類いのドラマは功罪が相半ばする。ノスタルジーを抱く視聴者もいるので、一定の個人視聴率を得るが、一方で「GTO」などと同じく、フジのドラマ全体を古色蒼然としたものに思わせてしまう。

流行をつくれない

 テレビは本来、「流行をつくる、追う、浸透させる」メディアなのだ。フジは一番よく分かっていたはずだ。

 たとえば「東京ラブストーリー」(1991年)では、鈴木保奈美(60)演じる赤名リカの「カ~ンチ~」が流行語になった。同「101回目のプロポーズ」(1991年)で武田鉄矢(77)が叫んだ「僕は死にましぇん!」もそうだ。

 今、フジのドラマからは流行が生まれない。リメイクからは生まれるはずもない。ヒットドラマもない。春ドラマ5本も、すべて平均個人視聴率が3%を超えられなかった。

 フジは10年連続で、在京5局の中で4位という深刻な状態にある。一方で戦略に誤りはないと考えているらしく、10月からは江口洋介(58)と松嶋菜々子(52)がダブル主演する「救命病棟24時」が13年ぶりに復活する。もっとも、明暗両面の過去をリセットし、新たな時代を創出すべきではないか。

 小池栄子(45)主演の「さよならノワール」(放送終了)は、地上波としては稀なハードボイルドタッチで、快作だったが、平均個人視聴率は1.5%だった。

 火曜午後9時の前作「夫婦別姓刑事」の衝突劇が尾を引いたか。少なくとも放送枠のイメージダウンになったのは間違いない。

 テレビは典型的なイメージ産業でもあるから、イメージダウンは視聴者離れに直結する。事実、「楽しくなければテレビじゃない」などをスローガンとした1980年代のフジのイメージ作戦は大当たりし、視聴率も伸びた。他局も追従した。

 現在のフジはイメージを大切にしているとは思えない。突かれたら言い逃れが難しいであろう危うい点がいくつもある。昨年1月に深刻化した元タレントの絡む人権侵害問題によるイメージダウンも長い影を落としている。それなのに局内には「自分たちは悪くなかった」という声がある。

 TBSも1995年にオウムビデオ問題が発覚すると、視聴率が落ち、ドラマのロケ現場では観衆から罵声を浴びた。ただし、同局はかなり大がかりな組織改革を断行し、社員研修や人材育成も強化。厳格な自己検証番組「TBSレビュー」(第2、第4日曜午前5時40分)も始めた。

 TBSはビデオ問題を「個人のモラル」だけでなく「組織・機能の欠陥」と捉えたからである。これにより、再生への足掛かりをつくった。フジはどうだろう。

「Tokyo middle 30」(水曜午後10時)は大いに期待した。原作が30歳の女性3人を描いた中国の大ヒットドラマ「Nothing But Thirty(30女の思うこと~上海女子物語~)」だったからだ。原作は中国で大きな反響を呼んだ作品である。もっとも、「Tokyo middle 30」は1.5%である。

 仲里依紗(36)、のん(33)、深川麻衣(35)が演じる35歳の女性たちの上京物語。原作との大きな違いは、中国版が結婚、仕事、階層など30歳の女性が直面する問題を現実的に描いたのに対し、「Tokyo middle 30」は3人の友情を強く打ち出したこと。それにより、既視感のあるドラマになってしまったように思う。

「ラストノート」(木曜午後10時)は、内田有紀(50)が演じる女性と寺西拓人(31)扮する男性の間に恋愛感情が芽生える。平均個人視聴率は1.8%。この類いのドラマは当たる空気が漂う時期と、そうでない時期がある。「VIVANT」のような刺激的なドラマや、現実味のある職業ドラマがヒットする中、男女の胸の内を描くストレートなドラマは厳しかったのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部