吉良大弥、破顔一笑の衝撃KO 敗れた元世界王者が「気づいた時には倒れていた」と証言した“戦慄のワンパン” 日本最速の世界王座獲得の舞台裏「自分の思い通り」

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カニサレスをパンチ力で凌駕し、圧倒して見せた吉良(C)Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA

 決まった--。パンチを打ち終わった流れのまま、クルっと背後を振り向いた吉良大弥(志成)の顔は破顔一笑。まさにしてやったりの一撃が決戦の行方を決めた。

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 9月2日、ボクシングのWBA世界ライトフライ級王座決定12回戦が、神奈川県の横浜BUNTAIで行われ、同級1位・吉良は、元世界王者で同級2位のカルロス・カニサレス(ベネズエラ)に7回TKO勝ち。元世界4階級制覇王者の田中恒成が持つ日本男子最速記録に並ぶ、プロ5戦目での世界王座獲得を成し遂げた。

 中継された『Lemino』で解説を務めた元世界王者の長谷川穂積氏が「気持ちの良いパンチでしたよ」と惚れ込む会心のワンパンチだった。

 経験豊富なカニサレスに対して、試合序盤からガードを固めながら機を見て、強打を繰り出していく慎重な戦いを展開した吉良。相手が前に出てきた中盤になっても我慢強く、主導権は譲らず。流れを保ったまま、7回に勝負を決めた。

 互いにダウンを狙いに行った近接戦で相手が左フックを繰り出した刹那、上体をスッと下げた吉良は、がら空きとなった相手の懐に強烈な左フックを炸裂。こめかみ付近にもろにヒットされたカニサレスは力なくダウン。ふらつきながら気力で立ち上がったが、レフェリーは問答無用で試合を止めた。

 打ち終わった勢いのまま背後の自陣営に目を向けた吉良はニヤリと笑った。その表情は、勝利を確信したかのようだった。

 実際、手応えは十分だった。試合後の会見に傷一つない綺麗な顔つきで臨んだ吉良は「(KOのパンチについて)やっぱりスローに見えるもんなんですね」と告白。「気づいた時には私は倒れていて、記憶がなくなってました」と漏らした名手カニサレスを打ち砕いた瞬間の“感触”も打ち明けている。

「序盤でも行けると思いましたけど、ちょっと怖かったんで、判定狙いでもいいかなとも思っていた。ただ中盤に倒したいっていう気持ちもあった。6ラウンドが終わった時ぐらいに、自分の疲れと相手の疲れを感じて、『ここ勝負やな』と。そこで相手が詰めてきたとこを、自分も詰め返したタイミングで、フックがドンピシャに当たったという感じですね。結構、自分の思い通りというか、調子いい時のスパーリングみたいな感覚でした」

 水抜き4.5キロという過酷な減量を乗り越えて迎えた一戦だった。直前にガムを噛んで唾を吐き出し、なんとかリミットちょうどで終えた公式計量後には「やっぱり自分が一番強いとは思う。自分に勝ったら、もう明日はやってきた過程を出すだけ」と漏らしていた。そこから中1日で6キロのリカバリーをした肉体は仕上がっていた。ゆえに相当な自信があったのは想像に難くない。

 階級は違うが、“モンスター”の異名で恐れられる井上尚弥(大橋)を彷彿とさせる当て勘の良さを披露し、堂々たる戴冠劇で世界にインパクトを与えた。ただ、元世界4階級制覇王者で、ジムの先輩である井岡一翔を「越えていかないといけない」と語る吉良にとっては、まだまだスタートラインに立ったにすぎない。

 先を見据えて「ボクシングが好きな人たちの娯楽の一部になりたい」というホープの飛躍に興味は尽きない。

[取材/文:羽澄凜太郎]