(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

会社で高級車を購入して経費化する手法は広く知られていますが、新車では十分な節税効果を得られません。実は、一定の年数を経過した中古車を選ぶことで、初年度に購入費用の全額を経費化し、実質的な負担を抑えることが可能になります。本記事では、税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が、経営者が「4年落ち」の高級車を狙う理由を解説します。

新車購入における減価償却費の計算ルール

会社の車を購入する際、新車を選ぶことは税務上の経費化スピードという観点からは有利ではありません。法人が事業用に取得した車は固定資産に該当するため、購入した年度に全額を一括で経費処理することはできず、法定耐用年数に応じて数年かけて分割して経費化する減価償却を行う必要があるからです。

新車の場合、普通自動車の法定耐用年数は6年と定められています。毎年残っている価値に一定の率をかけて経費を計算する「定率法」を適用した場合、初年度の償却率は0.333となります。

仮に1,000万円の新車を期首に一括購入した場合、1年目に経費にできるのは約333万円に留まり、残りの約667万円は翌年以降に持ち越されます。これでは、手元から1,000万円という多額の現金が流出しているにもかかわらず、その期に出ている大きな利益を十分に圧縮して法人税を減らす効果としては不十分です。

“4年落ち”中古車を活用…「初年度100%経費化」の仕組み

今期の利益を大きく圧縮するために効果的なのが、「4年落ちの中古車」を購入する手法です。厳密には、3年10ヵ月以上が経過している中古車を指します。

中古の資産を取得した場合、新車とは異なる耐用年数の短縮計算ルールが適用されます。3年10ヵ月以上を経過した中古の普通自動車であれば、税務上の耐用年数はたったの2年に縮まります。

耐用年数が2年となる場合の定率法の償却率は「1(100%)」と定められています。これにより、事業年度の最初の月に購入して使い始めれば、購入費用の全額を初年度に経費として計上することが認められます。

たとえば、期首に1,000万円で4年落ちの中古車を購入した場合、その期に1,000万円を丸ごと全額減価償却費として経費に計上できます。法人の実効税率を約30%と仮定すると、1,000万円の経費を作ったことで本来支払うはずだった法人税が約300万円安くなります。

実質的な購入コストを約700万円に抑えつつ、大きな利益を一度に消し去ることができるのです。

リセールバリューの重要性…値崩れしにくい車種

初年度に約300万円の税負担を減らせたとしても、手元から残りの約700万円が流出したままでは損失が生じています。ここで鍵となるのが、売却時の値段である「リセールバリュー」です。

車はナンバープレートを取り付けて登録を済ませた瞬間に価値が約2割下がると言われていますが、中古市場には例外的に値崩れしにくい人気の車種が存在します。以下のような車種が、高い価値を維持しやすい傾向にあります。

・ランドクルーザー70
・ランドローバーディフェンダー
・アルファード
・レクサスLM500h
・メルセデス・ベンツGクラス(一般的なセダンは値下がりしやすいですが、Gクラスの高性能モデルは例外的に値段が落ちにくい特性を持ちます)

ランドクルーザー70は入手困難なため、5年経過時の残価率が100%を超えるモデルもあります。また、一般的なセダンは値下がりしやすいですが、Gクラスの高性能モデルは例外的に値段が落ちにくい特性を持ちます。

これらの中古市場で需要が非常に高い車を4年落ちで購入し、価格が高い状態のまま売却することが、実質的な手出し額を最小限に抑えるための絶対条件です。

また、値崩れしにくい車を会社で所有しておくことは、万が一資金繰りが厳しくなった際に速やかに売却して現金を確保できる「簿外資産」としての保険機能も果たします。

4年落ち・1,000万円の「ランドローバー・ディフェンダー」でシミュレーション

具体的な金額の動きをイメージするため、1,000万円で4年落ちの「ディフェンダー」を購入したと仮定して、売買の流れをシミュレーションします。

期首に1,000万円で4年落ちのディフェンダーを購入し、その期の決算で1,000万円を減価償却費として全額経費にします。法人の実効税率を約30%とすると、本来支払うべきだった法人税が約300万円安くなるため、実質の手出し額は約700万円です。

ディフェンダーを1年間事業で使用したあと、900万円で売却できたとします。帳簿上の価値(簿価)は、買った年に全額を経費処理しているので「1円」となっています。そのため、売却額の900万円のほぼ全額が「売却益(利益)」として会社の決算書に計上されるのです。

この売却益900万円に対して約30%の法人税が課されるため、売却時に約270万円の税金を支払わなければなりません。最初に300万円の税金を浮かせましたが、売却時に約270万円を支払うことになるため、単発の取引だけで終えてしまうと、実質的には「課税の繰り延べ(税金の支払時期の先送り)」を行った状態にすぎません。

売却して利益が出るタイミングに合わせて、オフィスの大規模修繕や役員退職金の支払いといった別の大きな経費を発生させて相殺しない限り、完全に税金を消し去ることはできない仕組みになっています。

高級車を“実質1割”で毎年乗り換えるスキーム

この課税の繰り延べという性質を利用し、毎年新しい中古車への買い替えをループさせることで、実質1割程度の少ない負担で高級車を維持し続けるサイクルを作ることができます。具体的な手順は以下の通りです。

1. 事業年度の最初の月である期首に、3年10ヵ月以上が経過した値下がりしにくい中古車を購入し、納車を完了させる。
2. 1年間事業で使用しながら減価償却を進め、その年の決算で購入費用の全額を経費化する。
3. 翌期の期首になったタイミングで、その車両を売却し、同時に別の3年10ヵ月経過した中古車に買い替える。

この運用を行うと、前の車両を売却したことで発生する「売却益」と、新しく購入した車両の「減価償却費(経費)」が相殺されます。前の車両を900万円で売却し、次の車両を1,000万円で購入した場合、差額である100万円の実質的な追加負担だけで、次の高級車に乗り換えることができます。

1,000万円の価値を持つ高級車を、毎年100万円の手出しだけで乗り換え続けられるため、実質1割のコストで維持するループが可能となります。

税務調査で否認されないための「3つの注意点」

このスキームを実践するにあたり、税務調査において指摘や否認を受けないための注意点が3つあります。

1. 減価償却費の「月割り計算」のルール

1年で全額を経費にできるのは、あくまで事業年度の最初の月に購入して事業で使い始め、丸々1年間使用していた場合に限られます。日本の税法では、減価償却費は所有して使用した月数に応じて月割りで計算することが義務づけられています。

仮に決算の1ヵ月前に慌てて1,200万円の中古車を購入して使い始めたとしても、その期に経費にできるのは12分の1である100万円のみです。残りの1,100万円は翌期以降の経費となり、今期の利益を今すぐ圧縮したいという目的としては意味をなしません。ただし、購入時に支払う消費税については年単位で一括して計算されるため、購入時に一括して仕入れ税額控除を受けることができ、消費税を抑える効果は期待できます。

2. 経費化が認められる「供用の開始日(納車日)」の定義

減価償却を開始できるのは、お金を支払った日や契約を結んだ日ではなく、車両が実際に手元に届いて事業のために使い始めた日(納車日)からとなります。昨今は人気車種の納車に時間がかかることも多いので、決算日までに納車が間に合わなければ、その期の経費として計上することはできません。そのため、スケジュール管理を徹底する必要があります。

3. 事故リスクと車両管理

売却時の高い価値を前提としているため、事故を起こして修理歴(修復歴)がついてしまうと、リセールバリューは著しく低下し、全体の計画が崩れてしまいます。安全運転を徹底し、車両を綺麗に維持管理することが大前提です。

「リスク管理」と「計画的な実行」が節税のカギ

リセールバリューが高い4年落ちの中古車を期首に購入し、減価償却の特例を活用しながら毎年乗り換える手法は、強力な税務対策となり得ます。

ただし、単に節税目的だけで安易に手を出すのではなく、月割り計算の原則、確実な納車スケジュールの確保、中古市場の値下がりリスクを正確に把握したうえで、計画的に実行することが求められます。

税務調査において事業としての使用実績をしっかりと説明できるよう、日頃から運行記録の作成や公私を明確に区別しておくことが、会社と個人の財産を守る最善の道と言えます。

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士