「安楽死」が当たり前になった日本で、恋人の申請が通った時…漫画『終末パートナー』が描く「死を選べる社会」のリアル
もし、日本で安楽死が認められたら
「死ぬこと」を自分で決める――。
日本ではまだ認められていない安楽死だが、その是非をめぐる議論は、決して遠い世界の話ではない。
2024年に放送されたフジテレビ『ザ・ノンフィクション「私のママが決めたこと〜命と向き合った家族の記録〜」』では、日本では認められていない安楽死をスイスで選んだ女性と、その家族に密着。大きな反響を呼び、TVerでは報道・ドキュメンタリー部門の歴代最高再生を記録した。
安楽死制度・法律・社会的議論について発信する「RiP:D」によれば、海外では制度をめぐる動きも続いている。2026年にはイギリスで安楽死法案の審議が再開され、フランスでも7月15日に法案が国民議会で可決。現在、ヨーロッパでは13カ国で合法化されているという。
では、もし日本でも安楽死が法律で認められたら、私たちの暮らしや、「死」に対する考え方はどう変わるのだろうか。
そんな未来を、具体的な「日常」として描いたのが、北村みなみ著『終末パートナー』(KADOKAWA)だ。
舞台は、安楽死が制度として認められた近未来の日本。
そこでは、安楽死を選ぶ人の「最後の時間」をプロデュースする、「安楽死プランナー」という仕事まで生まれている。
主人公の要も、そのひとりだ。
「最後に何を食べたいか」「どんな服を着て最期を迎えたいか」。要は、お客様一人ひとりの願いに耳を傾け、少しでも心残りのない最期になるよう、土日も返上して奔走している。
そんな要の姿勢に、上司は「入れ込みすぎるな」とくぎを刺す。
さらに、「自分で死を選ぶに至った人間の心を他人にどうこうできると思うか」と問いかける。第1話「『結婚式場を探している』と思ったら…日本でも『安楽死』が制度化された未来を描く漫画『終末パートナー』が問いかけること」は、上司の言葉にモヤモヤする要の日常を通して、「安楽死が当たり前になった社会」をお伝えしている。
第1話「『結婚式場を探している』と思ったら…日本でも『安楽死』が制度化された未来を描く漫画『終末パートナー』が問いかけること」を読む。
短期連載第2話の本編では、安楽死申請中だった要の夫・纏くんと、自身の問題へと近づいていく。
嬉しそうな夫の言葉に愕然
上司の言葉が腑に落ちない要は、夫の纏くんと話したいと思いながら帰路につく。そこへ現れた纏くん。嬉しそうな彼の姿を見て、要の心も一瞬浮き立つ。
ところが、纏くんの口から出てきた言葉に、要は愕然とする。
ずっと通らなかった、纏くんの「安楽死申請」が、ついに認められたというのだ。
嬉しそうに報告する纏くんの姿に、これまで、安楽死を望む人たちの「最期」に誰よりも真摯に向き合ってきた要の表情は読めない。
実は安楽死には、厳正な審査がある。
1 治る見込みのない疾患
2 耐えがたい肉体的、精神的苦痛
3 明確な意思表示
1、2は医師の診断書で、3は面談で証明するのだが、診断を拒否する医師も多く、申請は主治医探しから始まると言われている。
さらに本人や近親者の嘆願書も必要で、承認は狭き門なのだ。
要はこれまで纏くんの申請を先導し、自ら申請してきたという。それでもなかなか通らなかった申請が、要のアドバイスで「アプローチを変え」たら通ったのだ。なのに、なぜ要は素直に喜べないのか。
そして物語は、安楽死を「仕事」として支える側だった要が、愛する人の「死を選ぶ権利」と向き合う局面へと進んでいく。
「待ちきれないから、今月末……」
嬉しそうに安楽死の「日取り」を纏君を、要は「私に安楽死プランナーやらせて」とさえぎった。
そして、1年間かけて、じっくり考え、やりたいことを全部やって、行きたいところにも行って、それから葬式も自分たちで企画しようと提案する。
だが、要の本心は? これまで申請が通るよう、手を尽くしてきたはずの要の表情が読めない。要の「なんで?」は、本当は何を訊きたかったのか。
◇要は纏くんが望む「最期」をプランニングできるのか。ふたりの望む「最期」は同じものなのか。残された1年をどう過ごすかを考える中で、要はやがてあることに気づかされる。
【第1話を読む】「安楽死」が当たり前になった日本で、恋人の申請が通った時…漫画『終末パートナー』が描く「死を選べる社会」のリアル
